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目目、耳耳

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2020年8月の記事一覧

夜を守りたかったボクのプレイリスト(ヴァリアス・アーティスト)

「眠れる」夜があって。

「眠れない」夜があって。

「眠りたい」夜があって。

「眠りたくない」夜があって。

どれにも当てはまらない夜もあって。

そんなときはいつも、ひどくからまったイヤホンのケーブルをほどいている。

「今夜は、何を聴こう?」

どんな夜でも、音楽だけは、そばにいてくれるから。

1.3 Gymnopédies: I. Lent et douloureux/
エリック・サテ

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なんにも、いわないで?(quiet room/有機酸)

「もう、死んでしまおうかな」

ぼくは、深淵を覗いている。

そこは、重心をあと少し前へずらせば、楽になれる場所。

その場所は、暗くて、底が見えなくて、だから怖くて。でも、一瞬で楽になれることはたしかで。

怖いなあ。

消えてしまいたいなあ。

怖いなあ。

誘惑と恐怖のはざまで、ゆらゆら振れている。

どうすればいい?

泣き出した女の子が言った
「どうしてこんなにかなしいの?」
下を向いた

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花に嵐のたとえ、は、いらない(flos/R Sound Design)

花を踏み荒らすような人生だ。

それらは、花の見た目をした何かかもしれないし、見た目通り花なのかもしれない。

けれど、僕にとっては、どちらでもいい。

どれだけ足元で咲き乱れていても、気付かずに踏んでしまうこともあるし、気付いてもそのまま踏みつぶすこともある。

僕は、どういう立場の誰なんだろう?

両手を擦り合わせると、花粉がこぼれ落ちた。



「花は好き?」

「好きか嫌いか」でいえば、

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花布、あるいは知っている全てについて(彼女のいる背表紙/堀江敏幸)

花布のあたりにそっと指をかけて書棚からその本を引き抜き、

――『固さと脆さの成熟』より引用

「花布」

そのことばを知ったのは、『彼女のいる背表紙』の1頁目だった。

花布(はなぎれ)
本製本の中身の背の上下両端に貼り付けた布。

――e book cafeより引用

「はなぎれ」と読むらしい。

(茶色い布の部分のことですね。)

名前こそ聞き覚えはないけれど、たぶん、本好きなら触れたことの

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