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わたしであるということ

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エッセイ集。創作についてや自身の経験についてなど。
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筆を折って、拾って、また描く。

筆を折って、拾って、また描く。

小学校高学年から中学生の頃、私は絵を描くのに夢中だった。きっかけは小学生の時、当日仲の良かった友人がよく絵を描いていて、「紗夜も描いてみたら?」と言われて、なんとなく描き始めたことだった。初めは絵の上手い友人に気後れしながら、これでいいんだ、と誤魔化しながら描いていたけれど、次第にその楽しさにハマっていって、いつのまにか絵を描くのは立派な趣味になっていた。

中学生に上がると、そのまま美術部に入っ

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それでもやっぱり、この分岐で合ってたよ

それでもやっぱり、この分岐で合ってたよ

一年以上前のnoteで、「分岐」というタイトルで「間違った分岐ばかりを選んだ人生のようだ」、と語ったことがあった。
あれから一年経って、今、あの頃の私に言いたい。ずっと辛かったし、今だって辛いけど、それでもやっぱり、この分岐で合ってたよ、ということ。

正直に言ってしまうと、2017年から患っている精神障害は、一向に寛解する気配はない。通院も服薬も、いまだに続けている。元気な日も増えてはきたが、そ

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二十二歳

二十二歳

今月5日、私は22回目の誕生日を迎えた。曲がりなりにも穏やかで、幸福で、満たされた日になったことに、少し驚いている。
近年、誕生日というのは、もちろん祝ってもらえるのは嬉しかったけれど、同時に心苦しい日でもあった。学校に行けなくなった18歳のときから、自分の中では時が止まってしまっていて、ただ歳を重ねていくことに不安があったのだ。

私ははじめ、高校を卒業する3月には死のう、と思っていた。おかしい

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生きてるだけで

生きてるだけで

生きてるだけで褒められていい、って思う。ただそれだけのことがどれほど大変なのか、私はよく知っている。

鬱の症状がひどい時、私は生命維持を放棄したくなった。寝床から起き上がるのも、母の用意してくれた食事を冷蔵庫から取り出すのも、咀嚼するのも。風呂に入るのも洗顔も歯磨きも、何もかもが面倒で、どうでもよかった。そもそも、それができる体力のない日も多かった。
逆にいえば、人が毎日やって当たり前とされてい

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ほんとうに絶望していたとき、必要だったもの

noteではたびたび書いているが、私は高校生の頃心身の調子を崩して以来、療養を続けている。
特に2018年から2020年にかけて、私は相当な絶望を味わった。身体が思うように動かず、年の2/3以上体調が悪く、ひどい時は寝たきり。自分の人生の柱だった目標を失い、努力することすら叶わず、周りを妬み、孤独感に襲われ、そんな自分に嫌悪感を抱いていた。

そのような日々の中、私は治療を続けていた。そして、その

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つくることが好きな私と、グラフィックデザイン

作る、造る、創る。つくる、ということは、楽しいことだけじゃない。思うように自分のやりたいことが表現できなくて悔しいときもあるし、自分では満足していても周りから評価されないときもある。何それ、と鼻で笑われることすらある。
そんな経験を、何度もしてきた。それでも辞められなかったのは、つくる、ということが私の深層に関わりすぎているからだろう。

つくる、は、何も文章を書くことだけではない。小学生の頃は折

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積み重ね

私には、諦めた夢がある。それは、小学生の頃からずっと大切に持っていて、高校生になって体調を崩すまでは、それだけを目指して頑張っていた、かけがえのない目標だった。

小惑星探査機のはやぶさが帰って来たのは、私が小学生の時のことだった。その手に汗握る奇跡のような実話の虜になった私は、いつしか宇宙研究に憧れるようになった。
両親もその夢を応援してくれて、私はそれからずっと、宇宙についての図鑑を愛読したり

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これから

これから

つくづく、自分は創作をしていないと生きられないタイプの人間なのだな、と思う。自分が天才の類ではないことになんかは最初から気付いているし、かといって足りない才能を補えるほどの努力をするのなんて、気が遠くなるような道のりで、何度辞めようと思ったか分からない。書くことが苦しくても辛くても、それでも書き続けてしまうのなら、いっそ、小説家を目指してしまおう、とある時思った。それは、辞めることを諦めた私の、書

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本の話

本の話

小学生の頃、図書館で何冊か本を借りて、それを家で貪るように読むのが好きだった。ほとんど毎日本を読んでいたし、ランドセルには常に一、二冊の文庫本が入っていた。図書室の本を制覇する野望まであった(結局、それは叶うことがなかったけれど)。一番本を読むのを楽しめていたのは、この頃だった。あのくらいの熱量で本が読めたら、どんなに幸せかなと考える。

中学に上がってから、本を読むことで勉強に集中できなくなって

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小説で伝えるということ

小説で伝えるということ

長い長い手紙のように、小説を書きたい。回りくどくても、小説にしかない伝え方、伝わり方が必ずあって、それが物語の秘めた大きな可能性のひとつだと思う。

明確に伝えたい人がいるときもあれば、過去の自分に伝えたくて書くときもある。けれどいつかは、出来るだけ多く、同じような悩みを抱えた人に届けたいと思う。

ひとりきりの苦しい夜に寄り添うような、ほんのりと淡く光る豆電球のような創作をしたいというのは、ネッ

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空想少女の延長上

空想少女の延長上

幼い頃から私は、生粋の空想少女だった。

物心ついた時から私は日常的に空想をする子供だった。生き物の形をしているものだけでなく、すべてのものには魂が宿っていると思っていたし、私が出かけている間や寝ている間にはこっそり動き出したり、皆でこそこそおしゃべりをしたりするのだ、と半ば本気で信じていた。お菓子を擬人化した女の子たちの空想シリーズがあって、自分がその登場人物になりきって、妹と寸劇をしたりしてい

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