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ウエイトリフティング競技🏋️‍♀️の基礎知識

アスレティックトレーナーのあおしまです。コーチとは少し異なる視点から競技種目について考えていきたいと思います。

ウエイトリフティングは、球技やタイムレース系の種目とは異なる種目特性がいくつもあります。また、競技の見た目から誤解されている側面もあるように思いますが、本当は魅力の沢山詰まった競技として全ての年代の人におすすめです。

ここでは一部ですが、私の意見を基に競技の特徴についてご紹介したいと思います。


競技種目の構成

ウエイトリフティングは、競技を観たことはあるかもしれませんが、経験したことのある人は少ないと思います。 この競技には「スナッチ」「クリーン」「ジャーク」という3つの種目があります。特にクリーンとジャークは連続して行われるため、「クリーン&ジャーク」と呼ばれています。

いずれも、重量のついたシャフト(バーベル)を頭上まで持ち上げ、その挙上重量の合計が大きいことを競う競技です。

競技会では、男女別に選手が分かれており、それぞれの階級で順位を競います。本来は、10階級に分かれているのですが、年代によって実施される階級が異なる場合もあります。(2024年パリオリンピックでは、5階級しか実施されません)

競技開始の年齢は若く、近年は小学生から始める選手も増えてきました。毎年7月には、全国小学生大会、全国中学生大会も開催されており、子供達も安全に取り組める競技スポーツとして少しづつ認知の広がりを見せています。

スナッチ
クリーン&ジャーク(写真はジャーク)

競技会は、最初がスナッチから行われ、選手は申告した重量の軽い順に挑戦します。スナッチでは3回の挑戦ができます。スナッチが終了すると、10分の休憩を挟んで、クリーン&ジャークの競技に移ります。こちらも3回の挑戦ができ、軽い重量の選手から挑戦します。スナッチとクリーン&ジャークの成功重量を足して、トータルの重量にて順位を決定します。

道具の特徴

シャフトとプレート

選手が使用する男子選手は20kg、グリップが28mmの太さのシャフトを使用し、女子選手は15kg、25mmのシャフトを使用します。このシャフトに「バンパープレート」と呼ばれる落下の衝撃にも対応できるプレートを装着して使用します。シャフトとプレートを組み合わせて「バーベル」と呼んでいます。

バンパープレートは、本体の基本的な構造がラバーで作られていて、落下の衝撃にも対応できる、高い耐久性や静音性を持つプレートです。競技用の練習や大会での使用を前提として作られているため、製造工程や重量に高い精度が求められ、取り扱えるメーカーが限られていますが、ウエイトリフティング技術の向上においては欠かすことのできないアイテムです。

シャフトは男子用20kg、女子用15kgの2種類が試合で使用される
バンパープレートは、配色別に重さが区別されている(緑10kg、黄15kg、青20kg、赤25kg)

一方、高重量だけが注目されがちですが、この競技の特徴的な点として、小学生や中学生などが練習で使用するための教育用シャフト(エデュケーショナルバー)が存在します。重量が3kgほどの軽量シャフトにも関わらず、競技会と同型のプラスチックプレートを装着できるのが利点です。

軽量シャフト(3kg)とプラスチックプレートを使う事で子供でも安全に練習ができる

床面の強度

ウエイトリフティングの競技を見たことのある人はわかるかと思いますが、実際の競技会では、試技を終える際、頭上で支えたバーベルを床に落下させて終了するのが一般的です。身長以上の高さからバーベルを落下させるため、大きな音と共に床への衝撃も大きくなります。

普段、私たちの周りにあるフィットネスクラブや公共のトレーニング施設では、ウエイトトレーニングのオモリを床に落下させることはできません。これは、施設の側が錘の落下を想定していないことが一般的であり、オモリの落下による床の耐久性を保証することができないためです。

また、設置されているプレートの多くは鉄製です。外側にコーティングが施されているため、手触りは滑らかなものがほとんどですが、落下による衝撃を吸収することはできず、プレート自体が割れる可能性があります。

一般的に、ウエイトリフティング部のある高校や専用の施設では、床面の補強にコンクリートを下地として使用していることがあります。さらに、前述した「バンパープレート」が使用されることで安全に練習を行えます。

練習できる環境の多くは床面を補強している
公式大会で用いられる試技場(プラットフォーム)

公式に行われる競技大会では、組立式ですが専用の試技場(プラットフォーム)が用意され、200kg以上の重量が頭上から落とされてもビクともしない床面が設置されて行われます。

ところが、一般的にトレーニングを行える環境を探してみても、床面の強度不足がネックになって、練習会場に制限が出てしまうのがこの競技の難しい点だと言えます。多くの場合ウエイトリフティング部を持つ高校や大学、下地の加工された床を持つ専用施設でなければ、本格的な練習ができない現状は早く改善してもらいたいと願うばかりです。

とは言え、小中学生や初心者の選手にとっては「落とす」事が必須ではなく、頭上への挙上技術と同時に、安全に「下ろす技術」も習得していく事が必要になるため、ある程度の重量を扱えるようになるまでは、床の問題よりもシャフトの軌道に注目した練習が大切になります。

シューズの特徴

ウエイトリフティング競技では、頭上にバーベルを挙上して静止するため、身体の安定感、とりわけ下半身の安定感が重要になります。使用する専用シューズも、球技やランニング動作のある種目で使われている物とは大きく異なる特徴があります。

注目すべき特徴は、硬くフラットな形状を持つアウトソールであり、かつ踵部分が数センチ底上げされていることです。この靴は「走ることを前提にしていない」ため、鉛直下方にかかる力に対して、クッションとなる沈み込み部分は省かれて、迅速に床からの反力を上方に変換できるように設計されています。

さらに、踵部分が高くなっていることにより、バーベルを持ち上げたままでも、深くしゃがみ込むことが容易になります。これは、足関節が柔軟性に乏しい選手に対しても、動作が行いやすくなる仕組みです。


リフティングシューズは垂直方向への力発揮に適した設計がされている
硬いアウトソールと踵の底上げによって安定感と共に足関節の可動性を補う役割を果たす


動作の特徴

スナッチ動作

スナッチとクリーン&ジャークの両方において、全身の爆発的な筋力を発揮します。
 スナッチ動作は、手幅を広く握り、床からバーベルを浮かすと同時に、速度を落とさず一気に頭上まで跳ね上げる動作をします。頭上でバーベルを受け止める(キャッチと呼ばれます)ことは、重量が増えるにつれて困難になるため、試技の成否が大きく分かれるポイントになります。

スナッチ動作

クリーン動作

クリーン動作は、スナッチと異なり、手幅をやや狭く握り、バーベルを跳ね上げる際に、首元(鎖骨部、三角筋前部あたり)でバーベルを支えて静止させる動作になります。 クリーン動作は、スナッチと比較すると大きな重量を扱いやすく、この後につながるジャーク動作と合わせて、「クリーン&ジャーク」の名称で1つの流れを大切にしながら練習していきます。

クリーン動作

ジャーク動作

ジャーク動作は、クリーンによって持ち上げたバーベルを鎖骨と肩部で支えた状態から、脚の力を利用して、一気に頭上に押し上げる動作となります。

クリーン動作の終了姿勢から、そのまま両脚を左右に開きながら頭上でバーベルを支える「プッシュジャーク」と脚を前後に開いてバーベルを支える「スプリットジャーク」さらに、プッシュジャークのようにバーベルをキャッチするとともに、下に下がりながらバーベルを支えて保つ「スクワットジャーク」の3種類があり、それぞれに難易度が違う技術です。

ジャーク動作① プッシュジャーク
ジャーク動作②スプリットジャーク
ジャーク動作③スクワットジャーク


 ジャークの種類は、選手の個性によって選択され、得意・不得意が大きくでることが特徴です。大多数の選手は、「スプリットジャーク」を選ぶことが多いため、競技を目にした際には、一番よく見る技術になるでしょう。

上記の3つの動作それぞれには、コツや難しさがあります。選手たちは日々、これらの動作をより習熟にするために練習を積んでいます。

3つの動作それぞれのポイントや怪我とコンディショニングについての話題は、今後の記事でご紹介します。



【トピックス】初心者のための 「採点制競技会」

日本ウエイトリフティング協会では、小中、高校生の初心者が一般競技会(全国大会など)に出場する際には、採点制競技会と呼ばれる技術の習得度合いを点数化して競技者に示す機会に参加することを条件としています。

リフティング技術の手順や注意すべきエラーについては、採点制の項目で明確に説明されています。この項目に従って練習を行うことで、安全なリフティング操作を学ぶことができます。また、資格を持つ指導者による採点や修正のアドバイスを受けながら、正しい動作を身につけることができます。

この採点制競技会についての詳細は、各都道府県のウエイトリフティング協会にお問い合わせいただくことで、参加の機会について知る事ができます。



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