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#小説
19YEARS #6 予言スクリーン
←5より
2013年7月
ささ、という店へ行くことが日課のようになっていた。カフェのような飲み屋のような店で、お酒が苦手でも、1人でも、気兼ねなく溶け込める。コーヒーもお茶も美味しくて、体に馴染むような食事もあるのだった。
何より、マスターの佇まいが素晴らしくて、心の傷が異常なわたしのことや、他にも道に迷っている人や、体が病んでいる人など、深く癒しを必要としている人々を、大きな愛で包んでくれる存
19YEARS #3 東京を知らない
←2より
2013年2月
駅で友達と別れたあと、ひとりになった。
「ここはどこ」
代々木上原駅だと頭ではわかっている。けれど、知らない遠いところにいるような気がした。体が浮いている。不安な気持ちがどんどんふくれあがる。小刻みに震えがくる。どっち方面の電車に乗ったらいいんだろう。
「家はこっちにあるはず。でも、誰も待ってない。わたしの家族はどこにもいない」
東京に、20年住んでいる。よく知って
19YEARS #2 心の流血
←1より
2012年夏。
目が覚めて、部屋を見わたす。やっぱりひとりだ。あの人のいない世界。なぜ目が覚めてしまったのだろう。
ライが、しきりに顔を舐めてくる。否応無く、散歩に連れ出される。リードにぐいぐい引っ張られながら、外の空気を吸いながら歩くと、夏休みのにおいがした。
この子は、私の心に一番近いところにいつもいた。そして、一緒に深く傷ついていた。ライにとってはもう私しかいない。私にとって