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19YEARS #5 悲しみの終わり

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2013年5月
初めての命日が過ぎた。
車の運転をしている時、突然、はっきりとすすむの声がした。

「あっこ。結婚しろ」
「なに言ってんのよ、わたしあなたの奥さんだよ」
「だって俺、もういないじゃん!」

・・・いない?
・・・本当だ。

わたし、独身だ。
それは夜明けのような感覚だった。真っ暗な夜空に、一筋の朝日がさしたかと思ったら、信じられないくらいのスピードで目の前の景色が照らされていく。

この瞬間を境に、自分の目が、完全に入れ替わったことを知る。

これまで夫以外の男性に対して、人として信頼できたり、人格を尊敬することはあっても、男性として心惹かれたことは、一瞬たりともなかった。夫が大好きだったし、夫がすべてだったし、他になにも要らなかった。

・・・だって俺、もう、いないじゃん!

目が覚めてしまった。「未亡人のわたし」という夢から。一年間、いまだ夫だけを愛し、会えなくてつらい、という夢を見ていたのだ。哀しくて、甘くて、美しい夢。

目覚めたわたしは、結婚する前のことを思い出し始めた。
好きだった音楽。気に入って着ていた服。なりたかった職業。忘れていた自分。結婚してから封印していた、もともとの自分。

それらが蘇ってきたとき、視界にキラキラひかるものがたくさん降ってきた。それは目の錯覚かと思ったけれど、本当なのだった。

うれしくて、うれしくて、運転しながら涙していた。

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