僕は脳から記憶を取り出すことにした
大学を卒業してから三年が経った。
考え方が変わり、環境が変わっていった。
僕は去年岐阜県の高山にいた。大学を卒業してから3年目のことだ。
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僕は過去のことをかなり記憶している方で、今でも幼稚園の頃のことを割と鮮明に記憶している。自分のこと以外でもこの記憶力は発揮しているらしくよく家族や友達が忘れていることを指摘し驚かれていた。
しかし中学に上がり、友達に小学校の頃こんなことやったよなーみたいな話を振っても「ん?そんなことしたっけ?」みたいな返しが増えてきて、話がかみ合わないことが多くなっていった。この頃からあまり自分から昔の思い出話をしなくなったし、自分の記憶が蓄積され続けていることがあまり普通ではないことに気付いた。
それから10年が経ち僕が高山にいた時だった。
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新たな環境、初めて会う人、新しい生活。
もう慣れてしまったからそこまでの新鮮味はなかったが、頭は必至に順応しようとしている。
そんなとき僕は初めて過去の記憶が薄れていっている感覚に陥った。正確には忘れてはいないが、ぼやけ始めている感じ。唐突に一週間前のことを聞かれ、えっと確か、、、うまく言い表せないがとにかく初めての感覚で、なにか危機的なものを感じた。
同時に聞きそびれが増えた。突発的に言われたことだったり、一度に何個も要件を言われると脳に情報を留めておけない。流石に焦った。
脳のキャパオーバーだった。
ここにきて記憶の蓄積数に初めて限界を感じた。新しい情報がすんなり入って来ない。
こればかりはどうしようもないので、ひたすらメモをとることにした。
僕はメモをとるのが苦手で、これまであまりとってこなかった。
しかしメモをとらないと覚えていられないので、自分にしか読めない暗号みたいな下手くそな文字で些細なことも必死に書き残していった。
さらに一年が経ち今は京都にいる。
一年が経った今でも同じような感覚が続いている。よくない感じだ。
そこで僕は脳から記憶を取り出すことにした。少しでも脳の空き容量を増やしたかった。
記憶を取り出すといってもSFの世界のような話ではなく、ただ過去の記憶を文字に起こしてネットの情報の海に放流していくだけだ。
だからこうして僕は今キーボードを叩いている。
この行為がどれだけの意味があるのかは分からない。
しかし、文章には価値があり力を備えていることだけは分かる。
この行為が将来的に自分の財産になることを信じて少しでも多くの記憶を書き残したいと思う。
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