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不定期で気ままに詩を書いています。

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最近の記事

【物語】退界シンフォ

ここは死後の世界です。 私の名前は永遠子(とわこ)。この死後の世界に存在する唯一の会社である『退界シンフォ』の代表取締役を務めています。この会社の仕事内容は、死者の死因や生前の様子を分析すること。ポイントカードの統計も取っています。 そして最も重要な仕事は、死者の魂の仕分けです。 魂を分析して、その死者の魂をどこかへ送るか、処分するかを決めます。 今日も新鮮な魂が次々と工場に運ばれてきて、ベルトコンベアを流れていきます。死者が出ない日などありませんので、この工場は365日

    • 【物語】若衰申請書②

      —— ……サラサラサラ。 ……タッタッタッ。 不思議な音がする。 「ねぇ、知ってる?この世界には、別のポイント制度もあるみたいだよ」 ここはどこだろう?誰かが話しかけてきた。 「それは何?」 「慈愛ポイントだよ。これも若衰ポイントと同じようなシステムで、1枚につき80ポイントまで貯められるんだ。このポイントが貯まるとね、抱えてる悲しみや苦しみをひとつだけ消せるんだ」 「悲しみや苦しみ……」 「君は何を消してもらいたい?」 僕は何に悲しんでいるのだろう。何に苦しんでい

      • 【物語】若衰申請書①

        この世界では『死』を申請することができる。 出生届を出した際に役所から貰える1枚のカード、その名も『若衰(じゃくすい)ポイントカード』。80ポイントが上限のポイントカードである。 普通のポイントカードと違う点は、ポイントを貯めるだけでなく取り消すこともできるということ。そして、上限に達した人はその日のうちに必ず亡くなるということ。噂によると、苦痛を感じることなくコロっと逝けるらしい。 この世界では『若衰』と呼ばれているが、他の世界では『安楽死』と呼ばれることが多い。 毎年誕生

        • 【詩】13.空を割る

          うさぎは月を食べてしまったし 退屈は時計を飲み込んだ どこまでもついてくる細い影 強い瞬きで憂う思考を追い払う 行くあても帰る場所もない僕は 空中ブランコを伝いながら 愛を孤独を移ろって 僕が僕として立てる場所を探してる 「闇が似合う」と月を壊しても 「夜が好きだから」と笑っても 星明かり頼るなら同じだよ 白む空を見て気づく 希望が欲しかった 行くあても帰る場所もない僕は 空中ブランコで踠きながら 愛を孤独を噛み砕く 僕が僕じゃなくなってしまう気がしてる 愛が孤独に膜

        【物語】退界シンフォ

          【詩】12.靴

          僕と君が踏みしめているこの大地は 本当に同じ固さなのだろうか? 歩いてきた道も 履いている靴も違うから なんだか僕だけ足が沈んでいるようで 行くあても違うのに 僕はどうして君の後をついて歩くのだろう 訳もわからないまま 君を真似して僕は靴の紐を結び直した 傘を持たない僕は 僕自身の重さとともに泥濘んで 静かにゆっくり沈んでいく この靴はもう終わりだ

          【詩】12.靴

          【詩】11.天秤

          僕が愛を疑うそのたびに 罪のない記憶が滲んでしまうんだ 並んだ影の濃さだけが ひどく曖昧になっていく 許せないのは名も無き罪 遣る瀬無いから互い違い もつれながら解いてきた糸は 気付けばもう千切れそうだ 僕の海を泳いだ魚 魚を食べて溺れた君は 波の中で恨むのだろう 僕の海が存在した事実を 傷付いた分、執着心 居場所ないから互い辛い 騙し騙し過ごしてきた日々は 気付けばもう終わりそうだ うさぎの影は隠せない ここで浮き彫りになっていく 散り散りの光が闇に溶け出して

          【詩】11.天秤

          【詩】10.無垢

          「僕はいつか後悔するかもね」 乾いた声であなたは言った そうねいつか後悔してほしい 失くしたものの重さに気付き 私以上に苦しんでほしいな 無垢は報われず無下にされ 無邪気な想い潰れて泣いた 針の音だけが響く部屋 何度も膝を抱えて泣いた 誰もきっと自分を愛してる だから自分を守り抜きたい 私以外に揺らぐなら行きなよ 無垢は報われず無下にされ 無様な想い晒して泣いた 少し温もりが残る部屋 何度も愛を探して泣いた 二人過ごしてた狭い部屋 何度も嘘を吐かれて泣いた 別れは涙

          【詩】10.無垢

          【詩】9.あふれた水

          突き落とされて地獄を見るくらいなら 最初からこの地獄にいればいいじゃないか 自分の意志なら理由は後でつけられる 強がる言い訳ができるから これからも終わりに怯えながら 騙し騙し 愛を確かめ合う? 泣き落としって呆れられるくらいなら どんな気持ちも蓋をかければいいじゃないか 仮面と素顔の区別もつかないくらいに あなたは私のこと知らない 翳りゆく希望に凭れながら 探り探り 嘘を重ねていく? 今までわがままに生きてきたから せめて今日くらいはあなたの願い事を聞かせて これ以

          【詩】9.あふれた水

          【詩】8.仮面の向こうに君がいる

          僕の仮面で君が濁るのか 君の仮面で君が遠いのか 覆う雲の奥に光はあるのか 僕の涙で君が霞むのか 僕の涙で君は揺らぐのか? 引き延ばした明日に希望はあるのか 君に与えた愛が惜しいのか? 僕は対価の愛が欲しいのか? 逃げ遅れた花に期待をするのか ひたすらに思案する 意味だ意義だと頼りない問答を繰り返す 僕の機嫌が君に取れるのか? 僕は負担を君にかけるのか 檻の中で君は笑ってくれるか? 重い目を抉じ開ける 仮面の向こうに君がいる

          【詩】8.仮面の向こうに君がいる

          【詩】7.解かれた糸

          引き攣った笑顔にキスをしては 隙間だらけの言葉で ありもしない未来を紡いでた 赤い目で答えを待つ君だけが 焼き付いて苦しい 歩いてた道が急に行き止まりになって 引き返すにも来た道はもう通行止めで 「ありがとう」君の影だけ滲んで消えてく 軸のない流れるままの憂い 甘えは所詮依存で 君の肩を重たく潰してた 沈黙の切れ間をただ探り合う 臆病なふたりだ 私の薬指のリングをなぞる この手に落ちた雫 誰の涙か 信じてた愛が急に水たまりになって 嘘願うにはあまりにも救いのない顔

          【詩】7.解かれた糸

          【詩】6.真っ赤

          愛なんて人任せな幸福に縋って 私は私を愛すことさえ出来ないの ここにいていいんだって承認が欲しくて 私は私をあなたの肌に委ねるの 真っ赤な世界で疲れ果てた 眠るにも怖い夜 一瞬でもいい この痛みが少しでも消えるなら 釘を打ちつけるごとに 想いの奥深く 隠してた後悔が滲み出てくるの だけど今を問うほどに 憂いはまた深く ニセモノの信頼を編み上げてしまうの 感情に理由なんて要らないでしょ 無邪気に信じてた 今の幸せを愛して生きてた 愛情は取って付けたフェイクだった 無下にさ

          【詩】6.真っ赤

          【詩】5.Capsule

          私の知らないあなたなんかいらない 散らばったあなたのヒントを掻き集めた 心の隙間 あなたに埋めてもらうため わざと空けてた それでも埋まらないままで からからに乾いて割れていく音がした 雨が降る今夜は悲しみに蓋をして 信じるのも疑うのも辛いから 躊躇う気持ちさえ 気付かないふりをした 雨が降る今夜は悲しみに蓋をして そしてまた 麻酔の切れた頃 孤独を知って泣くのだろう 行き場ない想いをカプセルに閉じ込める 伝えたい言葉を飲み込んで手を振った

          【詩】5.Capsule

          【詩】4.Loss Cutting

          あなたとの幸せを願っていたけど いつからか擦り切れてく感情が増えていった あなたとの未来を望んでいたけど どんどん靄がかかって分からなくなっていった さよならを決めるまでどれだけ悩んだだろう 色んな思いを天秤にかけてやっと出した答え 笑顔で別れよう 笑顔のまま離れよう 嫌いになる前に 他人になろう あなたからもらった最後のぬくもり 静かに静かに 溶けて消えていく 大丈夫 あなたも私も強く生きていける 前を見て歩いていけるから 後悔はしないよ 出会えたことも 離れたことも

          【詩】4.Loss Cutting

          【詩】3.天気予報

          君の涙は 僕のためだけじゃない そう知ったから 僕はそれを理由に泣いている この悲しみが虹になるなら 想いの輪郭もぼやけたままで 七色纏う淡いアーチは ふたりのすれ違い映す境目 心の糸が切れそうで 怖くって 手繰り寄せて 未来を繋いでいたんだ 湿った思惑が今さら薫る 今は沈黙に戸惑う影が 曖昧な距離でふたつ並ぶだけ 純愛は水の泡 もう無いな 拠り所 雨が降るから憂鬱なのか 憂鬱だから雨が降るのか そんな問いを 灰色の空に投げかけた

          【詩】3.天気予報

          【詩】2.壊れた傘

          求めれば傷付く それが愛だってね もたれかかるには脆い 心許ない愛 同じ時を刻んで ふたり肌を絡めて 夜に溶けても 置き去りの記憶隠せない 月が今を照らして ふたりキスをしたって 傷を癒せるわけじゃない 二度と戻れない さよならを告げたあとも 過去は消せなくて 温もりが残るだけ 振り出しに戻っても あなたはいない 笑顔しかなかったあの日々が恋しくて 涙のわけを問うこともなく 手を振るあなた 遠くなる背を追うこともなく 震える私 月も逃げていく さよならを告げたあとも

          【詩】2.壊れた傘

          【詩】1.magnet

          あなたは今日も 私の愛にあぐらをかいて 私のいない街で 笑っているんでしょう あなたがもしも そこで涙を流していても 私には分からないから 真似して泣くこともできない 距離に離された恋じゃなく あなたに離された愛だった だけどそれでもよかったの 明日を疑わなければ きっと虹が架かると思うから 冷たくて優しいあなたを想って 夢の中 季節ばかりが過ぎていくけど 思い出は大して増えないね つくる数より 反芻する数のほうがずっと多い 寂しい夜は幾度あるけど 不思議だね 悲しい気持

          【詩】1.magnet