【詩】9.あふれた水

突き落とされて地獄を見るくらいなら
最初からこの地獄にいればいいじゃないか
自分の意志なら理由は後でつけられる
強がる言い訳ができるから

これからも終わりに怯えながら
騙し騙し 愛を確かめ合う?

泣き落としって呆れられるくらいなら
どんな気持ちも蓋をかければいいじゃないか
仮面と素顔の区別もつかないくらいに
あなたは私のこと知らない

翳りゆく希望に凭れながら
探り探り 嘘を重ねていく?

今までわがままに生きてきたから
せめて今日くらいはあなたの願い事を聞かせて
これ以上悲しい思いをさせる前に
風に揺れるキャンドル 今のうちに吹き消す

自分のスペアに思えた近しい存在が
一瞬で一番遠い他人になるなんて
昨日の私は知らなかった

もとの場所に戻れない あふれた水
ただ乾いて消えるだけ
大事な記憶も褪せるだけ

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