【木曜日にはココアを】読書感想文。

今回の読書感想文の作品は、こちら。

【木曜日にはココアを / 青山美智子】

木曜日にはココアを (宝島社文庫)

˚*.꒰  あらすじ  ꒱.*˚
川沿いの桜並木のそばに佇む"マーブルカフェ"
そのカフェで出された一杯のココアから始まる、東京とシドニーをつなぐ12の"色"をテーマにした連作短編集。

初めて読む青山美智子さんの作品。

発売当初に読了していたが
続編【月曜日の抹茶カフェ】を読むために
予習と復習を兼ねて再読した。

この作品は読み進めていくうちに、
【前のお話の人物が次のお話のキーパーソン】
ということに気づき、
『この人のお話はどういうものになるのかな』
と、期待に胸を膨らませるドキドキ感がある。

どのお話も実際にありそうな内容で
ほのぼのとした優しい雰囲気。
一つ一つのセリフが温かくて心地良い。
心の中の蟠りがすっと溶けていくのが分かった。

特に印象に残った回は
〖のびゆくわれら〗Pink / Tokyo
〖半世紀ロマンス〗Grey / Sydney
〖ラルフさんの一番良き日 〗Orange / Sydney 

のびゆくわれら

幼稚園教諭のえな先生の物語。
ネイルを落とし忘れてしまったことにより
先輩教諭にいびられ、気持ちが沈んでしまい、
仕事を辞めたいという気持ちに駆られる。

わたしも子どもに携わる仕事をしている上に
ネイルが禁止になってしまった苦い思い出があり、
まさしく『これってわたしのこと？！』
と、思わずにはいられないほど感情移入の連続。

でも、とあることがきっかけで 
最終的に幼稚園教諭を辞めずに済んだのだが、
その出来事に思わず涙が溢れた。

ネタバレになってしまうのを防ぐため
出来事についてはご自身の目で確認して頂きたい。

ひとつひとつがライブなんだ。
試行錯誤で、体当たりで、合っているかどうか分からない正解を探し続ける。
毎日毎日、音を立てるように大きくなっていく子どもたち。
ひとりひとりと向き合いながら、きっと私も、伸びていく。

61ページ

半世紀ロマンス

金婚式で娘からシドニー旅行をプレゼントされた
進一郎さんと美佐子さんご夫婦の物語。

美佐子さんと進一郎さんは、
いわゆる職場恋愛の末に結婚した。

でも、結婚前の美佐子さんは
進一郎さんではなく別の男性と付き合っており、
美佐子さんは進一郎さんがタイプではなかった。

様々な事情で交際相手に振られた美佐子さんに
進一郎さんの思いがけない一言を放つ。

こちらもネタバレになってしまうので
気になる方は是非とも読んでみていただきたい。

体が小さく自己主張をしない進一郎さんに
良い意味でギャップを感じたが、
むしろ真面目な方ほど決める時は決めるんだな
と、誠実さや男気を感じた。

まさにロマンスグレーが似合う男性。

Twitterのだいすきなフォロワーさんに
『半世紀ロマンスは、ちあきちゃん夫婦を思い浮かべながら読みました』
と、言ってくださったことを今でも覚えています。

ああ、この人はきっと、本当にロマンスグレーの素敵なおじいさんにる。
私はこの人といたら絶対に不幸にならない。
それは想像を軽く超えて、確信になりました。

113ページ

ラルフさんの一番良き日

シドニーで小さなサンドイッチ屋さんを営む
ラルフさんの物語。

お店の看板やエプロンはオレンジ。
何故オレンジを選んだのかと言うと
ラルフさんが好きな女性とのエピソードに 
大きく関係する。

社交的なラルフさん。
実は恋愛にはとてもシャイというギャップ。
これもまた可愛らしいなと思った。

切なくなるシーンもあり、ヒヤッとしたが
最後はニヤニヤするほどのハッピーエンド。

これもまた是非ご自身の目で確認して頂きたい。

オーストラリアなまりの「GOOD DAY」は、
「こんにちは」の挨拶だったり「良い一日を」という願い。
その言葉をかけられた人は決まって、風邪が治ったような良い気分になるのです。
自分と関わったわずかなひとときを、ラルフさんが心から大切にしてくれたと伝わるからかもしれません。
だって、ラルフさんの陽だまりのような笑顔には、そのつど余すところなく想いがこもっていましたからね。

139ページ

世知辛いこの世の中にストレスを感じている方は 
大勢存在するに違いない。
ほっこりしたい･癒されたいという方には
是非ともおすすめしたい作品です。

わたしもマーブルカフェの常連客になって
おいしいココアを飲みながら
読書をしたり、文通のお返事を書いてみたいな。

あなたの気持ちが少しでも軽くなりますように･･！

ここまで読んで下さり、ありがとうございました♥