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【twitter小説】この部屋からは東京タワー以外全部見えない

【twitter小説】この部屋からは東京タワー以外全部見えない

今日も目が覚めると眼前には一面の東京タワーだ。起き上がり、東京タワーを手に取ると、もう朝の8時を示していた。また一日がはじまる。 仕事はやりたくない。でも私がやらなければならないからこの仕事がある。

この世界で最も必要とされているものは東京タワーだ。私もかつては東京タワーが欲しかった。とてもとても欲しかった。 私はどこで道を踏み誤ってしまったのだろうか。昔、東京タワーに母親と行ったとき東京タワー

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【新○誠パロディ小説】彼氏と彼氏の猫

【新○誠パロディ小説】彼氏と彼氏の猫

パロディ元

彼氏と彼氏の猫
季節は春のはじめで、その日は雨だった。

その日、僕は彼女に拾われた。だから僕は彼女の猫だ。

彼女は僕に「くろまる」という名前をくれた。

彼女にはボーイフレンドがいて、二人で暮らしている。たべものをくれるのは彼の方だ。だから彼は僕にほおずりしてもいい。

彼は父親のように優しく、下僕のようにたべものをくれた。

だからすぐに彼のことが好きになった。

毎朝彼女は仕

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【小説・草稿】谷中で遭難する

【小説・草稿】谷中で遭難する

 9月の夜はさすがに少し冷えてきた。いつもなら少しガラの悪い学生のいる上野公園の噴水には僕ら二人しかいない。

 僕は東京大学の4年生でつい先日、大手コンサルへの内定が決まったところだった。今日は朝起きて、研究室に行くのがめんどうになってしまったのでずっと御徒町を散歩していた。もしかすると悪い虫の予感があったのかもしれない。夕方ごろ、不純喫茶ドープでたばこをくゆらせているところにこいつから呼び出し

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【小説】純喫茶「心理学」

【小説】純喫茶「心理学」

 ある日の大学帰り、授業に疲弊した私が今出川通を歩いているとやけにピカピカとした電飾のついた喫茶店を見つけた。その名も「純喫茶・心理学」。かくいう私は京都大学文学部心理学専攻の学部4回生であったため、こんな名前の喫茶店があったら入ってみるしかなかった。

 そういえばこのお店、少し前にSNSで名前だけ聞いたことがある気がする。

 入った瞬間、香ばしい珈琲の香りが漂い、ここはいい喫茶店であることを

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