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【twitter小説】この部屋からは東京タワー以外全部見えない

今日も目が覚めると眼前には一面の東京タワーだ。起き上がり、東京タワーを手に取ると、もう朝の8時を示していた。また一日がはじまる。 仕事はやりたくない。でも私がやらなければならないからこの仕事がある。

この世界で最も必要とされているものは東京タワーだ。私もかつては東京タワーが欲しかった。とてもとても欲しかった。 私はどこで道を踏み誤ってしまったのだろうか。昔、東京タワーに母親と行ったとき東京タワーの模型が売っていた。8000円の模型は買ってもらえなかった。200円の東京タワー消しゴムすら買ってもらえなかった。そのカルマを背負って私はこの能力を得た。

私には触れるものすべてを東京タワーにしてしまうという特殊体質がある。 15歳くらいの頃だろうか。その頃からその兆候は出はじめた。家中が赤みがかった金属になった。 18歳の頃に家を追い出され、コンビニもない三重の海沿いに住むことになった。捨てられたのだ。この頃には触るものすべてが完全な東京タワーだった。

それから10余年、私はここで暮らしている。私はいま、東京タワーになってしまった部屋で東京タワーを作る仕事をしている。 名古屋から送られてくる大量のアルミの塊をせっせと東京タワーにしてヤフオクで売っている。 私は孤独だ。この部屋には東京タワーしかない。好きな人を抱きしめることもできない。東京タワーになってしまうからだ。 私は考えるのをやめたい。


あとがき

ハイパーインフレーションって漫画読んだことありますか?ぼくはないです。


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