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【小説】純喫茶「心理学」

 ある日の大学帰り、授業に疲弊した私が今出川通を歩いているとやけにピカピカとした電飾のついた喫茶店を見つけた。その名も「純喫茶・心理学」。かくいう私は京都大学文学部心理学専攻の学部4回生であったため、こんな名前の喫茶店があったら入ってみるしかなかった。

 そういえばこのお店、少し前にSNSで名前だけ聞いたことがある気がする。

 入った瞬間、香ばしい珈琲の香りが漂い、ここはいい喫茶店であることを悟った。店内にはカウンター席とテーブル席があり、カウンター席に私は座ることにした。

 店主は、いうなれば「ダンディ」な顔立ちをしており、不思議と信頼がおけた。「この人が作るコーヒーに間違いはないだろう」。

 メニューはどうも3点しかないようだ。

  • 松ブレンドコーヒー:400円

  • 竹ブレンドコーヒー:1200円→半額600円

  • 梅ブレンドコーヒー:800円

 私は数秒迷ったのち、竹ブレンドコーヒーを選んだ。松は安すぎるし、梅は少し高すぎる。

 しばらくして珈琲が出てきた。いい香りだ。コーヒーなのだが、お香のような香りがする。なんだろう。なにか昔懐かしい気がする。

 私の家族は3世代家族であった。そういえば祖父の家の香りそのものだ。祖父と行った遊園地の思い出を思い出した。

 いやー、良い喫茶店であった。お会計お会計。

 店主に面白いゲームを持ちかけられた。600円払うと店主とじゃんけんができる。じゃんけんに勝つと今日のお会計は600円引き、負けると600円増しになるというものだ。

 一回で勝てば0円。これはやるかどうか。

 いや、損をしたくないな。やらない。

 いや、でも負けたら負けたで話のネタになるからいいか。やってみよう。

 負けた。

 お会計1200円か。ちょっと高いな。何か悔しさもある。もう一回やろう。

 負けた。

 お会計1800円か。もう一回やろう。

 負けた。

 2400円か。2人でじゃんけんをする場合、勝つ確率は50%のはずである。ここまできて引き返すことはできない。続けよう。

 負けた。

 3000円か。コーヒー1杯に3000円は払いたくないな。ラスト一回だ。

 勝った。

 2400円だ。だいぶ痛い出費にはなったが、最後勝ったからよしとしよう。うーん。

 帰り際、ポイントカードなるものをもらった。5つスタンプが貯まるとケーキひとつ無料らしい。最初から3つスタンプが押されていたが、なにかの間違いだろうか。

 まあ、今度は友達を連れてこよう。コーヒー自体は美味しかったし、最後のギャンブル性のあるゲームはみんなでやれば楽しいことだろう。

 いい店だった。

 

 完




この小説はtwitterで適当にnoteのお題を募ったところ「純喫茶」と「心理学」の二つのお題を同時に投げたボケナスのせいで生じた小説です。


 

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