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ひとを好きになるということ

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大切な友人からの救いの言葉も、ひとと違う恋の生きづらさも平等に幸せだと言えたならば
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「好きな人が、恋人になりました」

「好きな人が、恋人になりました」

やっと。終わることが、始まったなと思った。

朝食の形に見える。あなたからの言葉を、囁きと言いたい。冬の空気に紛れて、誰の目にも映らないくらいに澄んだ気持ち。透明なままで、ふたり。

壊れる瞬間がある。

卵の黄身が割れる、窓が裂ける、涙が千切れる、欲が遠退く。

混ざり合う時にわたしは胸に手を当てていた、本能のような仕草だ。自分自身が生きていることを確認している。そしてまた、誰かの心に手を伸ばし

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付き合うってなに

付き合うってなに

付き合うってなんだろうって昔からずっと思っていた。端的に言うと意味があんまり感じられないのだ。

周りが、彼氏を作ったり彼女を作ったりして、手を繋いだだのキスをしただのと騒いでいる間もずっと私は、どうしてわざわざくっつく必要があるんだろうと思っていた。

好き、と相手に伝えたいというところまではなんとなくわかる。私もペットのインコに好きだよと伝えているし、昔飼っていたハムスターのこともずっと好きだ

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「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって

「仕事とは愛だった」なんて思わせてくれちゃって

24才のある夜。その日も私は一番最後にオフィスを後にし、帰路についてもまだ仕事のことを悶々と考えていた。すると、急に堰を切ったように脳内から溢れ出してくる言葉があった。そのドーパミンに従うままにパソコンを開き、キーボードを乱暴に叩き、読み返しもせず朝日新聞の「声」に投稿したことがある。

それですっかり満足してさっさと寝たのだが、翌日携帯に着信があり、出ると朝日新聞の人だった。「掲載させていただき

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「あなたからなら何を貰っても嬉しいよ」なんて絶対に言わないと思っていた。

「あなたからなら何を貰っても嬉しいよ」なんて絶対に言わないと思っていた。

束になった広告に、白い封筒が挟まっていた。

80円切手が一枚と、2円の切手が二枚。

それを見て、今は84円だったかと思い出す。

手紙や葉書を出すことが少なくなった今日では、新しく変わった郵送料金に中々慣れないもので。手紙を書く度にいくらだったかと首をかしげている。

届いた封筒は真ん中が少し膨らんでいた。
そこに小さな生き物が入っているかのように、私はそれをそっと抱えてテーブルに置いた。

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