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その文脈でその言葉が続くとは!

想定していない事態が起こることは、生きていれば多々あると思う。
だが、人生経験が豊富になればなるほど、これまでの経験から無意識に次の事態の予測をつけてしまうものだ。
だからこそ、「えっ!!!」っていう出来事にも巡り合う。

私の勤める会社は、いわゆるオフィスビルの中にある為、同じフロアに別の会社が存在する。
私の会社は、私が入社した当初と比べると、中途入社や役員の入れ替えなどで大分平均年齢が上がったものの、いわゆるベンチャーと言っても良いような会社だ。
その点、同じフロアにある会社は某大手のグループ会社のため、子供のころイメージしていたようなザ・会社!という感じがする。それが関係するのかは分からないが、基本自分よりも年上の方が多いように思える。

挨拶が条件反射のようになっている私は、知っている人であろうが、知らない人であろうが、すれ違えば「お疲れ様です」と言ってしまう。
初めの頃、某会社の方達が挨拶を返してくれることはなかった。皆さま年上ですし、別に「挨拶返せよな」という気分になるわけでもなく、ただ反射のように私は挨拶をし続けていた。

しばらくすると、私の挨拶に驚いている人が数人いることに気がついた。偏見かもしれないが、システム会社というのもあって、どちらかというとコミュニケーションが苦手な方が多かったのかもしれない。

それでも、毎回懲りずに挨拶をする私。
しばらくすると、ビクッと全身震わせつつも、ペコって会釈を返してくれる方も出てきた。エレベーターなどで一緒になると、挨拶をしてくれる人もいた。
ありがたいことに、私という存在に慣れてくれたらしい。

今になって思うのだが、服装などの規定がとても緩い会社に所属している私の姿は、真面目な会社の方からしてみれば、到底社員とは思えない、ただの不審者にうつっていたのかもしれない。

時間をかけて不審者認定を返上した私は、給湯室で隣の会社の方に会った時も世間話を交わせるまでにはなっていた(初めのうち、彼等が給湯室に私がいると分かるとそっといなくなっていたことを私は知っている)。
そんなある日の給湯室、少し前から挨拶くらいは交わせるようになっていた痩型長身で蝋人形のように肌の白いおじ様が私に話しかけてきた。
ちなみに、私はドリップコーヒーを時間をかけて抽出していた。

「あ、あの・・・・・」

おずおずと、遠慮がちな声かけ。
どうやらいつもの世間話とは違って何か言いたいことがあるらしい。

なんだろうか?と思いつつ、言葉が紡がれるのを待つ私。

「あ、あの・・・・・
い、いつもそんなに明るくて、元気で・・・・・

会社で浮いてませんか?」

・・・

・・・・・

・・・・・・・

んっ!!??

今、確かに「会社で浮いてませんか?」と聞かれたよね?私。
うん、ごめんなさい。自意識過剰でした。
「いつもそんなに明るくて、元気で・・・・・」
の後、「凄いですね」「偉いですね」「頑張ってますね」という言葉が続くと勝手に思い込んでました。自意識過剰女でした。

まって、え、どうしよう。想定していなかった問いかけに対する返しは用意していません。もう、自意識過剰な私は、コーヒーにお湯をコポコポ注ぎつつ、笑顔で「ありがとうございます」って言う準備満々でした。
思わず文体もデスマス調になってしまう。

そんな、私の口から出た言葉は、どこぞの丁稚奉公のような「へぇ」という間抜けな返事とも言えるかも分からないような一言。

うっわ、恥ずかしいー。
コーヒーの芳しい香りを嗅ぎながら、私の脳内大パニック。なんかもう、いろいろ恥ずかしい。
称賛されると思い込んでいた自分も恥ずかしいし、笑顔な返しを自信満々に準備していた私も恥ずかしいし、気の抜けた返しかできない自分も恥ずかしい。
とりあえず、横にあるポリバケツの中に身を隠しても良いですか?

もう、その後必死で
「え?そうですか?明るくて元気な人間多いですよ、うちの会社」
とか言ってみたけれど
「いえ、そんなことありません。あなたが一番元気です。いつも一番元気に挨拶してくれます!うちの会社で話題になっています」
と、フォローのようでいて、今は私をポリバケツに封印しようとする呪文を返されてしまった。

ものの見事呪文を唱え終わった勇者は、今までで一番の笑顔を残して給湯室を後にする。私はというと、とりあえず無意識の内にきちんと完成させたコーヒーが入ったマグカップを片手に、家路に帰りたいところ諦めて職場の自身の座席に戻る。

多分、このコーヒーだけでは、私のHPもMPも微々たる回復しか望めないだろうことを察しつつ。とりあえず、私浮いてないよ・・・ね?

あれからさらに人生経験を積んではいるが、今の私でもあの文脈でその言葉が続くとは、予測できる気がしない。
あの給湯室での恥ずかしい出来事は、今では調子に乗っていた自分への教訓として、良い思い出になっている。

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