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上野 紗妃
2021年8月21日 19:03
【プロローグ】 それは月もない薄暗い夜のこと、人気のない病院の廊下をひとつの小さな光がふわりふわりと漂いながらある部屋に向かって進んでいた。 途中、夜間勤務の看護師とすれ違ったもののその光の存在は誰の目に触れる事もなく目的の病室の前までたどり着いた。 光は閉められた病室のドアの前を二度三度くるくると舞い、ちょっとした合図を送るとドアの隙間を難無く通り抜け、室内に入り込んだ。 室内は空調が整え
2021年6月9日 19:13
コンコンドアを叩く音誰だろ?こんな時間にあたしは部屋着のままドアの所まで行って「はい」と返事した。「ナオさん、ですね」ドアの向こうから女性の声がする「あのー、どなたでしょうか?」「真夜中の花屋をやっています紗妃と申します」「え? どう言う事? 真夜中の花屋?」「はい、ナオ様にお花を届けに参りました」「どういう事ですか?」「はい、ヒロ様よりお誕生日のお祝いの花束です」
小原なな
2021年6月2日 21:28
見つけられるのは火曜日だけ。捕まえやすいのは青葉台三丁目のバス停付近。乗り場の目印は「婦人服いとうや」。時間は午前五時からしばらくの間。かえで通りを北上する水色のタクシー。運転手の名前は「中村」。みゆきが思い出タクシーの見つけ方について持ち合わせている情報はそれだけだった。あとわかっているのは、「思い出タクシーに乗れば、自分の好きな思い出に会いに行ける」ということ…。行き先を聞かれたら、