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現代イランの絵本に触れる

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東京都板橋区成増駅にある「Cafe & Gallery Patina」で開かれた、「アリババと40人の盗賊」原画展の様子を紹介しています。普段なかなかお目にかかることのないイラン… もっと読む
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絵本でイランの今に触れる~「ノホディとかいぶつ」(イランの昔話)

絵本でイランの今に触れる~「ノホディとかいぶつ」(イランの昔話)

ひよこ豆から生まれた女の子(ノホディ)が、自分たちを食べようとした怪物(ディーヴ)を退治するーー。

それが「ノホディとかいぶつ」だ。
再話・翻訳の家愛甲恵子さんの解説によると、「ノホディ」は小さい者の代表のような存在で、話によって男の子にも女の子にもなるとのこと。一方「ディーヴ」はペルシャ語で言うところの怪物で、物語によって姿かたちを変えつつ悪役を担う者であるらしい。日本の「鬼」のような存在だろ

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絵本でイランの今に触れる~「2ひきのジャッカル」1000年以上前に生まれたおはなし

絵本でイランの今に触れる~「2ひきのジャッカル」1000年以上前に生まれたおはなし

これは、1000年以上むかしに作られた話である。
西暦8世紀なかばに生まれた物語集「カリーラとディムナ」におさめられている「ライオンと牛」という話をベースに書き上げられたそうだ。

8世紀というと、日本は奈良時代。聖武天皇が大仏を作り、国内初の法令文章「大宝律令」が完成した頃。中国は唐と呼ばれ、かの有名な楊貴妃がやりたい放題やっていた。

西アジアではイスラムが勢力を拡大し、ヨーロッパではフランク

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絵本でイランの今に触れる~「アリババと40人の盗賊」アラビアンナイトのおとぎ話

絵本でイランの今に触れる~「アリババと40人の盗賊」アラビアンナイトのおとぎ話

「ひらけ、ゴマ!」
誰しも一度は聞いたことのあるこのフレーズ。
英語では「Open sesame!」。
ズバリそのものだ。

この有名なフレーズが出てくるおとぎ話が「アリババと40人の盗賊」。アラビアンナイト、いわゆる千夜一夜物語の話のひとつである。

現存するアラビアンナイトの最古の写本の断片は800年代のもので、その後徐々に追加・拡充され1400後期に現在のような形式のものが確立したと考えられ

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絵本でイランの今に触れる~4「ボクサー」ブラチスラバ世界絵本原画展グランプリ受賞作品

絵本でイランの今に触れる~4「ボクサー」ブラチスラバ世界絵本原画展グランプリ受賞作品

その絵本のタイトルは「ボクサー」。
絵本の、しかもイラン人が描いた物のタイトルが、「ボクサー」?

正直どういうストーリーなのか想像がつかない。
まずもって「イラン」とはどういう国だ?
イスラムの国。
頭にはスカーフを巻く女性。
そしてペルシャ絨毯。
おそらく一般的にはこんなイメージがあるだろう。

じゃあさ、イラン出身の有名なボクサーっていたっけ?
そもそもイランって、ボクシングやっていいの?

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絵本でイランの今に触れる~3. ペルシャ語翻訳家「愛甲恵子」さん~

絵本でイランの今に触れる~3. ペルシャ語翻訳家「愛甲恵子」さん~

どんなマイナーな言語にも、翻訳家がいらっしゃる。イランで話す言語はペルシャ語。そのペルシャ語を専門に絵本の翻訳をされているのが「愛甲恵子(あいこう けいこ)」さんだ。

愛甲さんとの面識など全くない僕であったが、一緒に行った友人のずば抜けたコミュニケーション能力のおかげで、愛甲さんと直接お話することができた。

待ち合わせ時間にカフェに辿り着くと、友人が知らない人と話し込んでいる。ショートカットに

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絵本でイランの今に触れる~ 2.「アリババと40人の盗賊」原画展~

絵本でイランの今に触れる~ 2.「アリババと40人の盗賊」原画展~

白い壁に「アリババと40人の盗賊」の原画が並ぶ。
ナイゲス・モハンマディ(Narges Mohammadi)さんというイラン人女性が描いた作品だ。

1978年(僕と同じ年!)イランはアラークという中西部出身で現在テヘラン(イランの首都)在住のこのイラストレーターは、世界に名だたる数々の賞を受賞し、児童書イラストレーター協会の会長もなさっている、凄い方なのだ。

絵のタッチを見ると、「やはり外国の

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絵本でイランの今に触れる~1. Cafe & Gallery Patina in 成増~

絵本でイランの今に触れる~1. Cafe & Gallery Patina in 成増~

東京の最高気温39度を記録する8/2の午後、「アリババと40人のとうぞく原画展」に行ってきた。場所は都内某所で開催されているという。

東武東上線と地下鉄有楽町線が乗り入れた東京の西の端、板橋区・成増駅。住宅街を7分ほどテクテクと進んだ先にある古い団地を改装した部屋の一角に、カフェ「Cafe & Gallery Patina」があった。

Cafe & Gallery Patina

日本にあるま

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