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#詩

『再会の時』

『再会の時』

好きだった香水の匂いだけ残して
去っていった君のこと
気になって仕方ないのは
匂いの記憶に誤魔化されてるだけ
不安定だった日々すら美化されている
許されるべきではないことも
勢い増して歌い出す
曖昧な「またね」を繰り返して
いつの日かいつの日かいつの日か
「おかえり」って言いたいだけの
取り残された頃の声

『空を見る』

『空を見る』

精神的な繋がりだけでも
僕たち一緒にいられるよ
君とはその、身体的な繋がりを
考えることはできないから

空を見た、星がいた
何億年も前のヒカリなくせに
今頃照らして笑って欺いて
こちらの視力を奪い去る

精神的な繋がりと
その、身体的な繋がりと
両方があった日々を
思い出しては空を見る

ハッキリ言われたその日から
君はどこか晴れやかで
私はどこか、どこかへ消えた

今でも居残る、その、恐怖

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『何色の世界で生きている』

『何色の世界で生きている』

染められてゆく染められてゆく
水で薄めて泡立てて
水色の気泡と黒色の希望
油で薄めて火をつけて

いつから優劣つけ始めたんだ
いつも違って何が悪いの
君と違って何が悪い
黄色に見えるそれだって
きっと幻のショートムービー

赤色じゃなくて灰色なんだと
血まみれになってやっとわかったよ
この世界のほんの断片
くだらないことで埋め尽くされてる

染められてゆく染められてゆく
生を薄めて掻き乱して
無色

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『さようならとさようなら』

『さようならとさようなら』

一度くらい許してよ
二度くらい許してよ
三度、四度、繰り返すけどさ
同じになんてならないから

気付いたらいなくなってた
何度繰り返しても
なくならないと信じすぎて
気付いた頃には手遅れだった

返事のない日々を
生き抜くには足りなくて
毎日欲しがってしまうけど
これが本当の始まりなんだ

大好きだった「さようなら」
封印して「また明日」
使いすぎた「さようなら」
使い捨ての「さようなら」

「は

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『始まりの一二月』

『始まりの一二月』

無意味な比較だとわかっていながら
わざと過去に隠れたり
先走り未来を浮遊していた
いっそのこと君の部屋
僕のモノで埋め尽くしてしまえればよかったのに
食べたらなくなってしまうものばかりで
冷蔵庫だけが音を立てるよ

実はどうだっていいんだ
その名前も喋り方も色も時間も

撮り溜まったネガフィルム
食べ続けたカレーライス
試着が止まらなかった古着屋
どこまでも走り続けたドライブ
どこまでも歩き続けた

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『お元気ですか』

『お元気ですか』

電話帳の中にはいるのに
どうしたって届かない呼びかけが
低気圧の中浮遊する
どこにも辿り着けない虚しさと共に

みんないなくなっちゃう
いつのまにかいなくなっちゃう
挨拶もせずにいなくなっちゃう
いなくなっちゃう
いなくなっちゃう

あの日の中にはいたのに
どうしたって思い出せない表情が
記憶の中を悪戯にまわる
どうせ聞こえてないふりするんでしょ

みんないなくなっちゃう
いつのまにかいなくなっち

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『それとも』

『それとも』

人と人の間にあるのは空白か
それとも空気か空間か
それとも

熱があがって
といっても37度3分だけど
好き、だなんて言ってしまって
熱に浮かされたわけでもないのに

すぐに伝えなければ
鮮度が低くなってしまうから
と思って言ったけど
「僕は好きじゃない」

人と人の間にあるのは空白か
それとも空気か空間か
それとも空っぽ

君以上に
好きになれる人ができるまでは
横にいて、だなんて言えないな

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『共に、』

『共に、』

途端に薄れる
記憶と感情
命に関わるくらいの
深い付き合いしてんだね

どうしようもなく愛をくれる君に
一度も教えたことがない
愛してるとか
好きという言葉さえ

もう大丈夫、手放して
もうそれ以上、言わないで
言葉にするのはやめてくれ
追われ続けてしまうから

途端に消え去る
気持ちと愛情
命に関わりたくはないから
逃げ続けているんだね

こんな僕でごめん
と言うと
そんな君だから好き
だってさ

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『白い日』

『白い日』

満月が特別になったのは
あの日に告げた言葉があるから
満月に背中を押されて
あの夜告げてしまったから

満月の日はいつにも増して会いたい
こんなにも大切で
こんなにも好きなのに
サヨナラに夢見てしまったんだ

嘘のサヨナラ
期待したサヨナラ
サヨナラからうまれる何かを
またあの月に求めてしまった

見たくない夢をみたよ
ふたりして泣いていたね
なんだって現実にできると思った
なんだって奇跡だと思い

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『ゆめは現実』

『ゆめは現実』

ゆめをみる きみのゆめ
ぼくの恋人 きみが主人公
いつもきみは ゆめの中で
だれか知らないひとの恋人だ
ぼくには振り向きもしない
咎めたくたって届かない
だれか知らないひとの恋人として
とてもたのしそうに笑ってる

ぼくはそのゆめを
日替わりのそのゆめを
毎晩みさせられている
いつも違うシーンだから
新鮮さがあって落ち込むよ
物語はもう始まっている
はねのけることなんてできない
ぼくの恋人 だれか

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『みずとあぶら』

『みずとあぶら』

君のことでなら
いくらでも涙を流したい
「危ういからやめて」と
きっと言われてしまうけど

茄子と胡麻油くらい
相性が良いと思っていたよ
ほんとのところは
零度の水と千度の油
だったのかもしれないね

使い終わったフライパンを
洗おうとしたってキレイにならない
しっかり拭き取ったはずなのに
弾かれて
ぬめっとして
受け入れてはもらえない

珈琲とゆで卵くらい
相性が悪いのかもしれないね
ほんとのと

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『回送列車』

『回送列車』

思い出したよ
まだハッキリとはいかないけれど
過去に持ってた思考回路が
戻ってきた気がするの

戻ってきたところで
帰る場所はどこにもないけど
今に透かして見せて
アップデートするつもり

だからね、だから
僕がいなくてももう大丈夫
ひとりで生きていけるでしょ
なんて決めつけると怒られるけど

だからね、だから
君がいなくてももう大丈夫
ひとりで生きていけるんだ
なんて弱っちく叫ぶことにするよ

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『魔法使いにはなれない』

『魔法使いにはなれない』

魔法が解けたのかもしれないね
あの日は月の魔力に負けて
君に触れてしまったから
まんまと騙されてしまったよ

ダブルベッドがやけに広くて
君に届かなかった心臓の鼓動
一晩中持て余してたら
朝一番に抱き寄せられた

器用に利用して了解された
理にかなうなんて到底無理で
あの夜手を繋いで歩いた時から
すでに始まってしまっていたんだ

魔法は解けてしまったけれど
自力で繋がれる日々を紡ぐ
共有の毎日が今

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『供養』

『供養』

何度も同じメニューを食べたね
何度も同じ時間まで寝て寝坊したね
何度も何度も、
もう会うのはやめようと宣言したね

何度もしたことたちは停止させられ
過去の出来事として埋められてゆく
例え同じ空間にいる誰かが
君と同じ香水をつけていたとしても
かおりだけが漂うだけで
君はここにいない
ここにはいない

何度も同じ道をドライブしたね
何度も同じタイミングで笑ったね
何度も何度も
これが最後と言ってサ

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