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『みずとあぶら』

君のことでなら
いくらでも涙を流したい
「危ういからやめて」と
きっと言われてしまうけど

茄子と胡麻油くらい
相性が良いと思っていたよ
ほんとのところは
零度の水と千度の油
だったのかもしれないね

使い終わったフライパンを
洗おうとしたってキレイにならない
しっかり拭き取ったはずなのに
弾かれて
ぬめっとして
受け入れてはもらえない

珈琲とゆで卵くらい
相性が悪いのかもしれないね
ほんとのところは
どうだっていいんだ
泣いて笑って抱き合って

「忙しいのにごめんね」と言うと
「僕たちのことだから」と言って
話を聞いてくれた君の温度を思い出す
凍ってしまいそうなくらいの冷たさと
汗が溢れ出すほどの熱気が
同居しているようだった
ほんとのところは
どうだったの?

君のことでなら
いくらでも苦しくなって叫びたい
「危ういからやめて」と
きっと言われてしまうけど

出会った時からずっと
安定したことは一度もなかった
温度計を使っても意味がなくて
零度の水と千度の油は
使い果たされていくんだね