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令和版「結婚できない男」は金がない

「年収の低い男性は結婚できない」
これを実感している方は、年々増えているのではないでしょうか。

もちろん、昔からこの傾向はありました。
ただ数十年前は、会社に勤めていればどうにか昇給できたし、「日本の経済もいつかは良くなる」という期待感があったから何となく結婚できた。

しかし、今は「中流」が下へ下へと流れている時代。
男性が婚活しようとすると、女性から非常にシビアにジャッジされるのが現実です(それはもちろんお給料だけでなく、家事能力や育児への参加意欲も含めてなのですが)。


未婚男性と既婚男性の、直視できない経済格差

男性の未婚率と年収には密接な関係があります。
就業構造基本調査から、男性の生涯未婚率(50歳時未婚率)と年収の関係を見てみましょう。

令和4年就業構造基本調査

50歳時点で結婚していない男性の年収を見ると、年収300万円未満の男性が約77%を占めます。
特に、年収200万円〜249万円までの男性が高い割合で結婚できていません。
50歳代で年収250万円は、国が定義する「貧困層」ではないものの、老後が不安な金額です。
次に高いのは、年収100〜149万円の男性。非正規労働者が多いと考えられます。

一方で、年収が400万円以上になると、未婚男性よりも既婚男性のほうが多くなるのが特徴的です。

それではもう少し年齢を下げて、別のデータを見てみましょう。

国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」では、25〜34歳の未婚者と既婚者の年収分布を発表しています。

第16回出生動向基本調査より、未婚者の現在の就業有無および調査前年の年収の分布(25〜34歳未婚者)
※棒グラフは左から2010年、2015年、黒色が今回の2021年
第16回出生動向基本調査より、夫の現在の就業有無および調査前年の年収の分布(25〜34歳未婚者)
※棒グラフは左から2010年、2015年、黒色が今回の2021年


未婚者の男性の年収が300万円台に固まっているのに対し、既婚者の男性の年収が400万円以降に多いのがわかります。

公式の分析では「2010年調査、2015年調査に比べ、今回調査(2021年)では、全般的に年収の分布は上方に推移している」とありますが、個人的には未婚男性の上方推移はそれほど大きくないのに比べ、既婚男性の上方推移が非常に多いのが気になります。この伸び率は何なのでしょうか。

そして、結婚して子どもが生まれた世帯はどんどん稼いでいきます。
2022年の国民生活基礎調査によると、児童がいる世帯の年収は、
2021年は785万円(前年は813万円!)
1994年は664円だったことを考えると、大幅に上がっています。

2022年国民生活基礎調査「各種世帯の所得等の状況」

もはや、子どもは「贅沢品」なのかもしれません。

こうしたデータを見ると、令和の「結婚できない男」は、経済的理由が大きいのではないかと言わざるを得ません。
そして、「結婚できた男」との格差はどんどん開いていくのです。

少子化と言うが、結婚した夫婦からの子どもはあまり減っていない

少子化少子化と言われていますが、実のところ、結婚した夫婦から生まれる子どもの数はそれほど減っていません。

夫婦の最終的な出生子ども数を「完結出生子ども数(夫婦一組あたりの平均出生子ども数)」と呼びますが、2002年までは2.2人前後で安定的に推移してきました。2015年の調査は1.9人と減少傾向であるものの、高い水準を維持しているのです。

なぜ子どもが減っているか?

それは未婚者の増加です。
日本の生涯未婚率は、男性28.3%、女性17.8%(2020年時点)。2000年には男性12.6%、女性5.8%だったことを考えると、この20年で男性は2倍以上、女性は3倍以上増えています。

それでは、なぜ結婚しないのでしょうか?
前出の国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によると、「いずれ結婚するつもり」と考えている人(18〜34歳)は、男性が81.4%、女性が84.3%もいるのです。

何が結婚のハードルになっているのか。「一年以内に結婚するとした場合、何らかの障害があるか」という質問には、「結婚資金」を挙げる未婚者がもっと も多く、男性では 47.5%、女性では 43.0%にのぼりました。

第16回出生動向基本調査より、「結婚の障害」を選択した未婚者の割合

結婚資金とは、挙式や新生活の準備のための費用のこと。
「結婚資金が用意できない」という理由が、実際にどこまで影響を及ぼすかはわかりませんが、男性の年収と結婚の相関関係を見ると、やはり経済的な理由は小さくないハードルになっているように思います。

「結婚できない男」からお金を取り上げて、少子化対策をしても無意味

【子どもを生み、育てる余裕がある人だから結婚できた】
こう推測できると言わざるをえないデータが、たくさんあります。

政府は少子化対策として、結婚したカップルにばかり補助をしようとしますが、筆者はこれはそれほど意味がないと考えます。
すでに述べたように、結婚した夫婦から生まれる子どもは、あまり減っていないからです。

少子化の原因は、未婚者の増加。
結婚したいと思う未婚者が結婚できるよう、働きかけるべきなのではないでしょうか。

それに、結婚できた人は「経済的に余裕があるから結婚できた」と言わざるを得ない状況。
経済的に余裕がない未婚者からお金を取り上げて、既婚者に回しても格差が広がるばかりです。

もちろん、結婚しない理由は経済的理由がすべてではないでしょうし、金銭の援助してもシングルが結婚するとは限りません。
しかし、経済的理由が原因で結婚できない人がいるならば、政府は経済的な補助をすべきなのです。

未婚者が「結婚できない」と感じるハードルをいかに下げるか。
例えば、奨学金を免除したり、住宅補助を出したりなども有効です。
もちろん、非正規雇用も撤廃しなければならない。

「異次元の少子化対策」が「異次元の的外れ対策」になっているのは、いろいろと理由があるのですが、非正規雇用撤廃や未婚者優遇は、自民党の政策と逆行してしまうというのが大きく、現実的に難しいのでしょうね。

そうして、いつまで経っても日本の少子化は止まらないのです。







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