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ジェンドリン哲学

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記事一覧

「ジェンドリン哲学」登山ガイド(2): 道迷いを防ぐ“理論リテラシー“

「ジェンドリン哲学」登山ガイド(2): 道迷いを防ぐ“理論リテラシー“

例年、夏の終わりは学会シーズン。今年も昨年に引き続き、どこもオンライン実施でした。8月28日には、日本人間性心理学会第40回記念大会で「PCAは本当に絶滅危惧種なのか?」(企画: 企画活動研修委員会)という刺激的(?)な名前の自主シンポジウムに、話題提供者として登壇。翌週9月4日には、日本心理臨床学会第40回大会では「PCAの未来を語る」(企画: 飯長喜一郎)に、こちらは一般の聴講者として参加しま

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「ジェンドリン哲学」登山ガイド(1):巨人の肩に登りづらい3つの要因

「ジェンドリン哲学」登山ガイド(1):巨人の肩に登りづらい3つの要因

「山の日」ということで、ジェンドリン哲学についてここのところ考えていることを、登山に見立てて連載形式(不定期)で書き進めていきたいと思います。また長くなってしまいましたが、よろしければお付き合いください。

はじめに:巨人の肩の上に立つ「巨人の肩の上に立つ(Standing on the shoulders of giants)」という言い回しがある。先人の発見や知見を礎として、現在の学的な仕事

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「ジェンドリン哲学」登山ガイド(5): ジェンドリンの環境論と「人新世」、あるいは人間カタツムリ

「ジェンドリン哲学」登山ガイド(5): ジェンドリンの環境論と「人新世」、あるいは人間カタツムリ

ジェンドリン哲学という「過酷な山脈」への安全登山を目指す本企画。年末年始はスキップしてしまいましたが、2022年もゆるやかに続けて参ります。どうぞよろしくお願いいたします。
今回は、ジェンドリンの後期の主著とも言われる、かつとっても難解で知られる『プロセスモデル(A Process Model)』の冒頭のお話です。プロセスモデルは、身体論として読むことができます。ジェンドリンにとって身体とは、環境

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ジェンドリンをより知るための博士論文リンク集

近年、ジェンドリンの理論や哲学を考察した博士論文が機関リポジトリにいくつかアップロードされています。

末武康弘 (2014). ジェンドリンのプロセスモデルとその臨床的意義に関する研究 法政大学博士論文

久羽康 (2018). クライアントが主体であることを引き受ける時 : 対象をそこに認め指し示すことの心理療法における意義 上智大学博士論文

岡村心平 (2018). フォーカシングにおける

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G.H.ミード『プラグマティズムの展開』

「言語は身振りから派生した」という説を、ダーウィンやヴントからジョージ・ハーバート・ミードがいかに批判的に継承したか、そして、ジェンドリンの『プロセスモデル』(Gendlin, 1997/2018)の第VII章におけるシンボル論のいかに大きな土台の一つになっているかを知るのに格好の書。

G.H.ミード『プラグマティズムの展開』ミネルヴァ書房

有り難き良訳。
https://www.minerv

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ランガー『シンボルの哲学』

ジェンドリンの代表的哲学著作である「パターンを超えて思考すること : 身体、言語、状況」(Gendlin, 1991)のB節「パターン」や『プロセスモデル』(Gendlin, 1997/2018)第VII章を紐解く上でも、ランガー の下記主著『シンボルの哲学』(Langer, 1942/1953) は、汲めども尽きせぬ源泉である。

訳が直訳調「ではない」のも有り難き幸せ。

スザンヌ・ランガー『

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ジェンドリン本人が「理論形成」を解説:TAE公式動画紹介その2

下記の記事では、ジェンドリンが提唱した「辺縁で考える (TAE)」を、ジェンドリン本人が話し手として行っている動画を紹介しました。TAE全14ステップのうち、ステップ9までが行われています。

ステップ10以降は理論形成の段階です。デモンストレーション形式からいったん離れて、ジェンドリンが一人でレクチャーをしています。そのレクチャー動画も、ビデオ制作者のナダ・ルーさんがYouTubeの公式チャンネ

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ジェンドリン本人が話し手のデモンストレーション : TAE公式動画紹介その1

ジェンドリン本人が話し手のデモンストレーション : TAE公式動画紹介その1

ジェンドリンが、フォーカシングに続く第二の実践として提唱したのが、理論構築法の「辺縁で考える (Thinking at the Edge = TAE)」。

下記の動画では、ジェンドリン本人が話し手となり、TAEの各ステップをデモンストレーションしています。聴き手であり、ビデオ制作者のナダ・ルーさんがYouTubeの公式チャンネルで公開しました。

以下、各ステップの出だしです。

ステップ 1「

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体験

体験

ある哲学者の言葉が胸を揺さぶった

体験は言葉にするより豊かなんだ

ジェンドリン哲学を学ぶうちにこの意味に気がつくことが多くなった

ソマティックな身体への働きかけは言葉以上に豊かに身体から伝えようとする合図や信号を豊かに確実に己へ伝えている

腑に落ちる

言葉にすれば、また次の体験が起こる

貪欲にからだの信号を知りたいと思った

からだが感じているすべてのことは正解や間違いなどではなく

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