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小説

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こちら時空管理局。何らかの影響によりこのアカウント内に小説が発生してしまった。パルス誘導システムを使用して、マガジンに閉じ込めておいた。もし興味があったら見ておいてくれ。以上
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2022年8月の記事一覧

小説|ピンク・ポッド・ペアレント

小説|ピンク・ポッド・ペアレント

[オートログ 5532年15月4日 12:05 ククリリ ラボ棟第27号ラボ]

 ああ、やばい。やばいよな。絶対にやばいよな。確かここに置いたんだよ。置いた置いた。間違いなく置いた。それは覚えてる。確実に覚えてる。で、それを眺めてて……。さっき起きたら、無いんだよ。無いんだよここに。なんで? なんでだろ。テーブルの下には……無いんだよな。無いんだよ。さっき探したよここは。何回も探した。で、やっぱ

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小説|て

小説|て

 田舎は北関東の田園地帯が広がっている辺りになります。

 夏といえば、花火虫取り祭りプール海山川遊び。挙げればキリが無いほどあるものです。私もご多忙にもれず、そんな夏を毎年楽しむ子供でした。朝起きてラジオ体操に参加し、一度帰宅して朝食を食べる。いい頃合いになると宿題もそこそこに、友達と遊びに出かける。こんなことを毎年毎日繰り返しておりました。

 小学5年の夏になると、そこにオカルトが入ってきま

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小説|汗汗汗汗汗汗

小説|汗汗汗汗汗汗

うるさいほど聞こえるセミの鳴き声と、吹き出してくる汗に耐えながら冬樹はホットコーヒーを飲んでいた。イヤホンの音量をいじりながら思う、とにかく暑いし熱い。クーラーをつければいいじゃないか。クーラーは昨年の夏から故障中だった。扇風機はどうだ。扇風機は家族がどこかに持っていってしまったらしい。部屋には高温の空気がこれでもかと充満している。

そんな状況でホットコーヒーを飲む。中々体験できることではない。

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小説|独房|みかん

小説|独房|みかん

「こんにちわ」
パソコンのディスプレイに緊張した顔が浮かぶ。男はまだ新しそうなスーツを着て、シルバーグレイのネクタイをしていた。
「はいどうも、こんちにわ」
私は何百回も繰り返した返答をした。
男は、もう一度こんにちわと言いながら、画面に向かって頭を下げた。

「じゃあ、面接ということでちょっと緊張しているかもしれませんが、まあ、リラックスしていきましょう」
「はい! ヨロシクオネガイシマス!」

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