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呵責液
2023年1月23日 12:22
氷の魔物を手懐け、無下に手折られた一角獣の角のような、脆い構造を体現したカイロウドウケツの標本海胆の化石鬼胡桃を模した鉄の文鎮硝子筒に入った仙人穀の実プレパラートに磔にされた蚤の標本焦げ目のあるサテン・バレェ・シューズ細々とした茜の黒紫の実と藁細工の細長い巻き貝そんなものに混じってそれはあった薔薇の青い枝を、久遠の時と共に閉じ込めた氷柱。他人が見れば、乾燥させた枝を、樹脂で包
2019年11月10日 21:56
ある日、繭を拾った。見た目は、なんてことない普通の黄色い繭だ。私は、昔から山歩きが好きで、山に落ちている色々なものを持って帰っては、部屋の中をガラクタで溢れさせ、同時に盛大に泥や土で汚した着物を、母に見せて呆れさせるという、素敵な趣味を持っていた。その繭を見つけたのは、人が誰も入り込んでこない私の秘密の場所。私は、物心ついた頃から、家の裏山を自分の庭同然に歩き回っていたため、そんな場所は
2019年11月8日 21:18
今夜も、少年のひと仕事がはじまります。月長石の河原を、三日月を模した小船を少し頼りない腕で押しながら、天乃河(あまのかわ)へと進みます。少年の仕事は、宙の星を採ることです。少年はいつどこで生まれたのか、親は誰なのか、一体何故この仕事をしているのか誰も知りませんでした。少年自身も、それは知るところではありませんでした。ただ気づいたら此処にいて、子羊が生まれてからすぐに自然に立ち上がるよう