松下幸之助と『経営の技法』#49

4/4の金言
 鳥が散って逃げるのを見て、そこにある危険を察知できるかどうか。

4/4の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 一流の大将や軍師は、大空の鳥の大群がぱーっと散って逃げていくのを見て、そこに伏兵がいることを察知できる。そういうことが教えられなくてもわかるくらいに頭が敏感に働かないといけない。ここからは見えなくても、鳥のように上から飛んで見たらわかる。
 そういうことが、戦争以外でも、日常の生活、活動の上にもあり、それを察知できなければ失敗する。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 ここでは、リーダーの在り方として論じていますが、会社組織が経営者の思い通りに動くことが重要ですので、組織の問題として考えてみます。
 するとここでは、会社経営に関する問題の中でも、特にリスク管理に関し、リスクセンサー機能の重要性を強調していることがわかります。これは、会社組織を人体に例えた場合、リスク管理部門や法務部門などのような一部の部門だけが担うのではなく、全身に張り巡らされた神経が痛みや熱さなどの情報を感知して情報共有されるように、すべての従業員が担うべき機能です。
 したがって、松下幸之助氏はこれを「大将や軍師」の役割として話していますが、全従業員が、それぞれの業務や立場に関して担うべき役割です。
 しかも、ただ漠然と見るのではなく、ときには自分の役割を超えたところにまで想像力を働かせることが要求されているのです。
 そして、ここでは失敗を避ける、というリスク管理面が強調されていますが、同様に全従業員がビジネスチャンスについても想像力と感性を働かせれば、会社全体のビジネス力も高まるはずです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家である株主と経営者との関係で見た場合、大将や軍師として想像力を駆使し、リスクに気づくことのできる才能が必要であること(これは、松下幸之助氏の言葉そのものです)だけでなく、経営者として会社組織にそのような機能を持たせることができる能力も必要です。
 経営者を選び、さらに、経営者に対して働きかけるポイントの一つとして、考慮すべきポイントの1つなのです。

3.おわりに
 特に能力の問題として見た場合には、好奇心と想像力が重要である、という見方も可能です。松下幸之助氏は特に、見えないことについての想像力の重要性について言及していますが、鳥の大群の動きに興味を持って観察できなければ、発見はあり得ません。様々なことに興味を持つことも重要なことなのです。
 どう思いますか?

※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。


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