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松下幸之助と『経営の技法』#45

3/31の金言
 日に三転ではもう間に合わない。今日は、日に百転しなければならない。

3/31の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 今日は非常にテンポの速い時代で、三年一日のごとく、十年一日のごとく、は許されない。
 二千数百年も前の中国の賢人は、「君子は日に三転す」と教え、それだけ君子は進歩が速いということも教えていた。今日は日に百転する、刻々に変化していくことをつかんでいかねばならない。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 松下幸之助氏の言葉は、別の言葉で言うと、「朝令暮改」は当たり前で、百回は指示を改めても構わない、むしろ改めるべきである、ということになります。
 そうすると組織が大変です。
 すなわち、まず一日百回も指示を見直せるだけの最新の情報を、しかも過剰ではなく適切に、経営者に届けなければなりません。もちろん、社会情勢などは経営者自身も情報収集するでしょうが、それに対応する会社の状況や、現場が独自に収集する情報などを、ほぼリアルタイムで経営者が共有できる体制が必要になります。
 そのためには、リスク管理の観点から見た場合、リスクセンサー機能が極めて高くなければ、必要な情報をリアルタイムに収集できません。経営に関する情報も同じです。全従業員がそれぞれの役割に応じたアンテナを張り、積極的に情報収集と報告が行われなければならないのです。
 さらに、その情報を基に適切な判断を極めて迅速に行う必要がありますから、情報の分析や必要な対策を直ちに決定できなければなりません。リスク管理の観点から見た場合、リスクコントロール機能が常にフル稼働している状態です。単なる思い付きや博打ではなく、ビジネスを行うのですから、そのための適切な判断プロセスが必要なのです。
 次に、何度も改められる指示に、組織が対応できなければなりません。複数の指示が降ってきますから、指揮命令系統がちゃんと機能しなければ、現場が混乱するだけです。さらに、現場が様々な変更に柔軟に対応できなければいけません。硬直的で役所のような組織では、到底対応できません。
 このように、会社組織が柔軟でなければならないのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 株主と経営者の関係として見た場合、経営者の資質としても、リアルタイム情報と目まぐるしく変化する会社の状況や命令への対応で常に現場が活気づいている状態を維持し、それを束ねていけるだけのリーダーシップが、経営者に求められます。
 仮に、松下幸之助氏が言うような、一日に百回も変化するほどの柔軟性を求めない場合であっても、変化の大きい現在、柔軟な変化ができる組織を作り上げるだけのリーダーシップが、経営者を評価するための大きなポイントになります。さらに、現在の経営者に対しても、組織の柔軟性を確立するように、株主総会や、株主の代理人であるはずの社外取締役などを通して、働きかけることが重要です。

3.おわりに
 8時間働くとして、100回命令を出すとなると、1回の所要時間は4.8分(4分48秒)です。デイトレーダーであれば、場合によってはこれ以上の頻度での決断をしているかもしれませんが、会社経営もデイトレーダー並みの頻度で意思決定しなければならない、少なくともそれくらいの覚悟と、それに耐えられる会社組織を作らないといけない、ということになります。
 どう思いますか?

※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。


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