管理委託契約削減への取り組み(22)
シリーズ最後のまとめとして・・・前回は、「管理会社を取り巻く現在・過去・未来」について徒然なるままにお話しましたが・・・徒然過ぎて(笑)「過去」だけで終わっちゃいました。
今回は、2018年に衝撃が走った「建サ・ショック」を深堀してお話したいと思います。
「建サ・ショック」を考える
「建サ(たてさ)・ショック」とは、2018年に管理会社の「住友不動産建物サービス株式会社」が管理受託している全国200程度の不採算マンション管理組合に対し「いきなり契約更新を打ち切った」と報道されたことを指します。
それまでは、いきなりの「契約打ち切り宣告」事例は聞いたことはなく・・・多くは「次年度の契約から○○円値上げしてもらわないと、契約更新できません」とワンクッションあってから解除・・・というパターンだったと思います。
確か・・・2010年頃から「三菱地所コミュニティ株式会社」が採算性の悪いマンション管理組合に対し一斉に管理委託費の値上げ通知を行ったことがニュースになっていたと記憶しています。(うちのマンションも、ご多分に漏れず管理会社合併後の「三菱地所コミュニティ株式会社」から年額150万円程度の値上げ通知され・・・うちのマンション内で検討を重ねた結果、管理委託契約先の変更に舵を切りました)
それだけに・・・いきなり(問答無用で・寝耳に水で)「契約更新しません」はインパクトが大きかったですね。
管理会社自身にも、日本の社会の一員として「道義的な責任」またはグループ会社が建てたマンションを守る使命」みたいものがあると思っていたので・・・「いきなり打ち切り宣言」はホントにショッキングでした。
とはいうものの・・・「住友不動産建物サービス株式会社」にしてみれば、不採算マンションとの「契約継続が会社の死活問題につながりかねない」とお考えになったのかもしれない・・・とも思います。
例えば・・・「もし、倒産したら(他の)多くのマンション管理組合にご迷惑を掛けてしまうかも?」とか、「(倒産しないまでも不採算マンションとの契約継続が)他のマンションへのサービス低下につながることが否めない!」・・・みたいなお考えに基づいた判断だったかもしれないからです。
「建サ・ショック」後の管理会社は?
「建サ・ショック」の強いインパクトによって・・・それまでの(マンション管理組合が管理会社を選べる)「買い手市場」から、(管理会社がマンション管理組合を選別できる)「売り手市場」に180度転換しました。
別の言い方をすると、管理会社のトレンドが「事業拡大路線」から「収益重視路線」に転換した・・・という感じだと思います。
そういえば・・・某管理会社で「リプレイス」を専門に担当していた営業マン(彼は、私が舌を巻く位のスペシャリスト)と「建サ・ショック」後に話す機会があった時・・・彼は「リプレイスの案件があっても、以前のような攻めた見積金額に社内の稟議(許可)が下りなくなりました」と嘆いていましたね。
「売り手市場」となって起きこと
これまで・・・管理会社は、人出不足による人件費の高騰があったとしてもマンション管理組合に管理委託費の値上げを提案することが難しかったと思います。値上げを提案した瞬間に(管理組合側が管理会社のリプレイスに舵を切り)他の管理会社とたたき合いになるリスクが高くなるからです。
でも「建サ・ショック」のおかげで、そのリスクがなくなった・・・ということで、管理会社のトレンドは「管理委託費の値上げ」に移行しました。
事実、ここ2~3年にかけて・・・受託するマンション管理組合に対し、一斉に(人件費高騰を理由とした)管理委託契約費の値上げを申し出た管理会社が多かったですね。
・・・これを「便乗値上げ!」と揶揄する声も聞こえてきますが、私は「便乗だけではないかも?」と思っています。
竣工時は余裕のあった値段設定も・・・10年15年経過すると厳しくなることはあると思うからです。
例えば・・・建設業界を見てみると、今から10年間に較べると工事コストが1.3倍くらいになっています。(国のデータです)
マンション管理業の世界は、建設業と同じではないけれど・・・同じような担い手問題を抱えているので、「当たらずとも遠からず」ではないでしょうか?
また同時に「住友不動産建物サービス株式会社」が露払いの役目を果たしてくれたとばかりに・・・不採算マンションに対して、撤退を切り出す管理会社の事例もチラホラと聞くようになりました。
委託契約費値上げだけでなく・・・
管理会社からは管理委託費値上げの申し出だけではなく、委託契約の内容にも変更したい旨の提案がされる事例が出ています。例えば・・・以下のような感じです。(実際に私が見たことのある事例です)
どれも・・・フロント担当者等に極力負担がかからない(=人件費を抑える)ための変更提案ですね。
こうした提案を持ってくる時、フロント担当者は一様に「確かに契約書には○○と書きますが、ご安心ください。これまでと同じ対応をいたします」と説明すると(たぶん)思いますが・・・契約書に書かれてあるルールが全てです。理事会もフロント担当者も、いずれ交代するので・・・諾成契約(=口約束)は、消えて無くなる運命かも?
理事会としては、管理会社から(そうした)申出があった場合、できるかぎり拒否すべきだと思います。
次回は、こうした事態に対し、マンション管理組合が取るべき対応(・・・というか、取らざる得ない対応)についてお話したいと思います。
(つづく)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?