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我らに巣食う<水戸黄門幻想>!!|アニメ「魔女の旅々」に学ぶ

アニメ「魔女の旅々」について考えよう


三葉 今日から何回かに渡って、アニメ「魔女の旅々」を分析していこうと思うんだけどさ。

清水 ふむ。

三葉 まずは何より……イレイナさん、かわいいよね♥


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<登場人物紹介>

・清水:マスター・オブ・アニメ。年100作以上のアニメを見続けて20余年。

・三葉:清水とは中学からの友人。元々マンガや小説が好きで、アニメは不得手だった。しかし、清水の影響で数年前からアニメにハマっている。


イレイナが他人を救わないエピソード


三葉 さて、イレイナさんの魅力についてはまた今度話すとして……今日は、第3話と第4話に注目してみたい。

清水 えーと、第3話、第4話というと……。

三葉 第3話は、Aパートが「花のように可憐な彼女」。これは、人を養分にする花の話。そしてBパートは「瓶詰めの幸せ」。こっちは、奴隷少女の話だ。

清水 ふむふむ。

三葉 第4話は「民なき国の王女」。記憶喪失の魔女・ミラロゼさんのエピソードだね。

清水 ふむ。

三葉 で、この3つのエピソードには、【イレイナが旅で出会った人を救わない】という共通点がある。もう少し詳しく言うと、【①イレイナがとある国を訪れる → ②犠牲者・被害者と出会い、人間の醜さや哀れな部分を垣間見る → ③しかしイレイナは傍観者として立ち去る】だね。


多くの人は、<主人公が犠牲者・被害者を救わないエピソード>を好まない


三葉 でさ、「魔女の旅々」を鑑賞した人の感想を見たり聞いたりすると、第3話と第4話は評価が低いんだよ

清水 ほぉ。

三葉 果たしてなぜ評価が低いのか?

清水 ふむ。

三葉 いろいろ考えてみたんだけど……一言で言えば、多くの人は<主人公が犠牲者・被害者を救わないエピソード>を好まないということなんだと思う。

清水 ふむふむ。

三葉 つまり、【①旅人が登場 → ②困っている人と遭遇】となったら、俺たちは水戸黄門的な展開を無意識の内に期待してしまうんだ。


清水 あー、なるほど。だから第3話、第4話の【①旅人が登場 → ②困っている人と遭遇 → ③傍観者として立ち去る】という展開に不満を感じたわけか。


俺たちは皆、「水戸黄門」が好き


三葉 でもさ、よくよく考えてみると【すべての旅人 = 水戸黄門】ではないんだよね。……いや、よくよく考えるまでもないか(笑)

清水 そうね(笑)

三葉 旅人には困っている人を助ける義務はないし、むしろ安っぽい同情心から手を差し伸べると状況を悪化させることだってあるかもしれない。ゆえに、<旅人が傍観者としてふるまい、立ち去る>のは合理的な態度とすら言える。

清水 ふむ。

三葉 それなのに、俺たちは無意識の内に【旅人 = 水戸黄門】を期待してしまう……。

清水 そうねぇ。「困っている人を放置して立ち去るだなんて、イレイナはまるでサイコパスだ」といった感想も見かけたけれど、背後にあるのは【旅人 = 水戸黄門】という期待なんだろうね。期待が裏切られたから、「何だこいつは」と不満を感じる。

三葉 そうそう!本当はさ、<軽々に手を差し伸べる = 自分には他人を救う力があると思っている = 全能感・ヒーロー願望を抱いている>ってキャラの方がよほどサイコパスだと思うけどね。

清水 確かに。


<水戸黄門幻想>とは何か?


三葉 でさ、俺はこの【①旅人が登場したら、無意識の内に水戸黄門的展開を期待してしまう → ②期待通りの展開にならないとがっかりして、不満を感じる】という現象を、<水戸黄門幻想>と名付けたい!

清水 ほぉ。

三葉 どうかな?

清水 いいんじゃない?

三葉 きみ、どうでもいいと思ってるだろ?(笑)


<まだ救い得るか、もう手遅れか>の違い


三葉 さて、ここからは第3話に注目してみよう。じつは第3話は、第4話と比べてもより一層ヘイトを集めているんだ。第3話と第4話を比較することで、第3話に不満が集まる理由を考えてみたい。

清水 ふむふむ。

三葉 はて、第3話と第4話の違いは何か?上述の通り、【①イレイナがとある国を訪れる → ②犠牲者・被害者と出会い、人間の醜さや哀れな部分を垣間見る → ③しかしイレイナは傍観者として立ち去る】という大枠は変わらない。

清水 ふむ。

三葉 注目すべきは、第4話のラストでミラロゼさんが発狂するという点だと思う。つまり、誰がどう見ても手遅れ。ミラロゼさんを救うことはできない。だから、<イレイナがミラロゼさんを放置して去るのもやむを得ないよね>という納得感がある。

清水 なるほど。一方第3話は……。

三葉 うん。例えばBパート。一見すると、奴隷少女は救い得たように見える。それなのに、イレイナは手を差し伸べることなく立ち去ってしまう。だからこそ、特に多くのヘイトを集めたんだと推測される。「なんで救ってあげなかったの!?」「せめて助言くらいしてあげてもよかったのでは?」って具合にね。

清水 ふーむ。

三葉 Aパートも同様だと思うんだ。一見すると、イレイナさんにはまだできることがあったように見える。しかし彼女は何もせずに去ってしまう。ゆえに、少なからぬ鑑賞者は「えっ!行っちゃうの!?」と不満を感じたわけだ。


花を手向けることの効果


清水 きっと多くの人は、無意識の内に<奴隷少女はまだ救い得る。イレイナさんが手を差し伸べるに違いない!>と考えていたんだろうね。しかし、そうはならなかった。だから不満を感じた……。

三葉 うん。

清水 でも、それも無理もないよねぇ。だって、【奴隷制度のある国で目の前の少女を1人救ったところで、何も変わらないだろう。……が、しかし!私は見捨てない!】ってのがよくある展開だもん(笑)

三葉 そうねぇ。まぁ、イレイナさんが奴隷少女を保護してしまっては、「魔女の旅々」という作品のユニークさが失われてしまうと思うけどね。

清水 ふーむ。

三葉 しかし、もしかするとさ。もしかすると、多少の工夫は可能だったかもしれないと思うんだ。

清水 ほぉ。

三葉 例えばAパートの方だけど、何もせずに立ち去るのではなくて、犠牲者を弔うような言動をとっていたらどうか?ほんの些細なことでいいんだ。花を手向けるとかね。それだけでヘイトは回避し得たのではないかと思う。

清水 なるほど。花を手向ける描写があれば、少なくとも<放置した>とか<見捨てた>とかそんな印象はないな。

三葉 とあるヤクザ映画……確か、「極道の妻たち」シリーズだったと思うけれど、そこにこんなシーンがあるんだよ。


三葉 ①ヤクザが人を殺す。②遺体を土手に埋める。③埋め終わったところで、兄貴分が子分に命じる「花を手向けておけ」。

清水 ほぉ。

三葉 兄貴分曰く、「花を手向けておけば、裁判で『被告人は心を痛めていたに違いない。だから花を手向けたのだろう。ゆえに情状酌量の余地あり!』となり、減刑される可能性がある」。

清水 なるほど(笑)

三葉 まぁ、これと同じだと思うんだ(笑)花を手向けるだけで、印象はグッと変わったかもなぁと思う。



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(担当:三葉)

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