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物語の冒頭で、「舞台となる場所」をダラダラ説明するのは禁止!!|『ショーシャンクの空に』に学ぶテクニック

名作映画を研究して、創作に活かそう!

本記事では、「ショーシャンクの空に」に【「物語の舞台となる場所」の描き方】を学びます。

※「ショーシャンクの空に」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

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「物語の舞台となる場所」をいかに描くか


物語の冒頭で、「舞台となる場所」をいかに描くか……頭の捻りどころです。

まず何よりも、それがどのような場所なのか、鑑賞者・読者にしっかり理解してもらうことが重要です。

例えば「学園もの」なら、舞台となるのはどのような学校でしょうか?金持ちばかりが集まる学校か?それとも、一見穏やかだが、裏ではいじめがはびこっている学校?あるいは、不良生徒が跋扈する荒れ果てた学校かもしれない。


しかしその一方で、説明は簡潔を旨とします。

鑑賞者・読者が見たいのは、「ストーリー」や「主人公らの活躍」です。「物語の舞台」について、ダラダラ説明されては困ってしまいます。細かい説明は、物語が進むに連れて追々やればいい。


要するに、そう!物語冒頭に求められるのは、「それがどのような場所なのか、簡潔ながらもバッチリと伝わってくるシーン」なのです。


ショーシャンク刑務所の描写①


さて……「ショーシャンクの空に」!物語冒頭、同作の舞台「ショーシャンク刑務所」がどのように描かれているか見てみましょう。


まず、映画開始から9分5秒経ったところで、囚人護送車がショーシャンク刑務所に近づいてきます。

そして、刑務所全体を俯瞰する空撮が入る。まず何よりも目立つのは、敷地を囲む高い塀です。次いで堅牢な建物と、庭(学校の校庭のような広い空間)。庭には多くの囚人がいる。


ショーシャンク刑務所の描写②


間もなく、護送車が刑務所に到着します。

10人のほどの新入り囚人が護送車を降りる。主人公アンディの姿もその中にあります。彼らは刑務官に先導され、建物に向かいます。両手両足と腰を鎖でつながれた彼らは弱々しく、呆然とした表情を浮かべている。


彼らを出迎えるのは、銃や警棒を持った刑務官、そして先輩囚人です。

先輩囚人は手を叩き、口笛を吹き、新入りを囃し立てる「よぉ、新入り!」「歓迎するぜ!」。

さらに一部の囚人は、「新入りの中で、今夜最初に泣き出すヤツを当てる賭け」を始める。「オレはあのデブに賭ける。タバコ5本だ!」なんて具合です。


ショーシャンク刑務所の描写③


アンディら新入りは、間もなく建物に入ります。そして所長が彼らの前に立ち、短い挨拶をする。

挨拶後、所長が尋ねました「何か質問はあるか?」。囚人の1人が口を開く「食事はいつですか?」。

すると……主任刑務官がつかつかとその囚人に近寄り、怒鳴りつけた「オレたちが食えと言ったら、お前らは食え!オレたちがクソをしろと言ったら、お前らはクソをしろ!」。そして、突如警棒で殴りつけた。囚人は息を詰まらせ、しゃがみこむ。

所長は、何事もなかったかのように平然としています。……お前が「質問はあるか?」と尋ねたから質問したんだろ!なんて理不尽なんだ!


ショーシャンク刑務所の描写④


所長の挨拶後、新入りは服を脱がされ、水をぶっかけられます。そして白い粉を投げつけられる。収監にあたっての「消毒」です。

「消毒」後、彼らは素っ裸のまま、各自の独居房に向かいます。


この後、新入りの1人が不安のあまり泣き出し、主任刑務官にボコボコにされ、そのまま死んでしまうというショッキングな場面が続くのですが……本記事では、「独居房に向かうシーン」までを分析対象としましょう。

以上、およそ5分間の出来事です。


そこは、「逃げ場のない隔絶された場所。しかも、誰1人として頼りにできない場所」


それでは整理を始めましょう。ショーシャンク刑務所は、どのような場所として描かれているのでしょうか?

まず【描写①】【描写②】では、「高い塀」や「銃を持った刑務官」などから、そこが「逃げ場のない隔絶された場所」であることが伝わってきます。

同時に、「先輩囚人の態度(囃し立てる、賭けをする)」から、「先輩囚人は頼りにならない」ことがわかる。彼らは、新入りを庇護してくれる存在ではありません。


続いて【描写③】【描写④】。ここでは、「所長と主任刑務官の態度(暴力的、理不尽)」から、「所長・刑務官は頼りにならない」ことがわかる。彼らは、囚人を保護・庇護してくれる存在ではないのです。


以上をまとめると……ショーシャンク刑務所は、「逃げ場のない隔絶された場所。しかも、誰1人として頼りにできない場所」として描かれているのです。


そして……逆に言えば、「5分かけてそれしか描かれていない」とも言えるでしょう。

それ以外のアレコレ、例えば「じつは、多くの先輩囚人は嫌なヤツではない。彼らも悩みを抱えた普通の人間である」、「刑務官も案外普通に人間的」、「刑務所の中には図書室がある」といったことは、全部後になってから説明される……ここがポイントです!


上述の通り、説明は簡潔を旨とします。物語冒頭からダラダラ説明されては、鑑賞者・読者は飽きてしまうでしょう。第一、アレコレ言われてもいちいち覚えてはいられません。

ゆえに、物語冒頭では「最低限これだけは知っておいてほしいこと」の描写に専念する。これが重要なのです。


みなさんも、初っ端からダラダラ描写しすぎないようにご注意をー!


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(担当:三葉)

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