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恋人がいないのは恥ずかしいことですか?|『40歳の童貞男』(2)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「40歳の童貞男」をベースに新しい物語を妄想します。

※「40歳の童貞男」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「40歳の童貞男」は、「一見負け組にしか見えない『40歳の童貞男』が、彼の中に眠っていた『パワー』を解放し、逆転勝利する物語」ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「40歳の童貞男」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「『40歳の童貞男』 ~『高校生』編」です。


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嘉村 高校生!

三葉 「40歳の童貞男」と比較すると以下のようになります。


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三葉 ストーリーをご紹介しましょう。……主人公は男子高校生です。

嘉村 ふむ。

三葉 ある日の放課後、男子生徒が集まってダラダラと雑談をしていた時のこと。1人が「そういえば○○のヤツ、昨日彼女に振られたらしいぜ」と言ったのを機に、恋愛談義となる。「そりゃ、辛いな」「冬といえば人肌が恋しくなる季節だもんな」「クリスマスやらバレンタインやら、イベントも目白押しだし」「合コンでもセッティングしてやるかぁ」「オレの彼女に当たってみるよ」。友人らは盛り上がる。主人公も「そうそう!それがいいよ!」なんて調子を合わせているが……じつは主人公だけは、恋人を持った経験がありませんでした。

嘉村 ほぉ。

三葉 しかし、主人公はそれを隠していた。恋愛経験豊富な友人らに囲まれて、「恋人がいない。っていうか付き合った経験がない」なんて言えるでしょうか。いや、言えぬ!断じて言えぬ!

嘉村 あー、なるほど。つまり、主人公は「恋人がいない = 恥」という価値観を持っているわけですね。

三葉 ええ、その通りです。「40歳の童貞男」では、登場人物の大半が「童貞 = 恥」という価値観を共有していましたが……「案①」の舞台は日本の高校です。日本の高校で「童貞 = 恥」という価値観が共有されているというのは、ちょっと無理があると思うんですよね。

嘉村 確かに。

三葉 代わりに、「恋人がいない = 恥」という価値観が共有されていることにしました。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて話を戻して……「童貞 = 恥」と考える主人公は、虚勢を張ります。「中学の頃から付き合っている子がいるんだ。別の高校に通っているけれど、上手くいっているよ。まぁ、多少距離がある方が長続きするってわけだね」なんて恋愛玄人ぶってみせる。マンガや映画の知識を動員してそれっぽいことを並べる。しかし……やはり無理がある。トンチンカンなことを口走ってしまう。彼は恋愛素人なのです。本物の恋愛玄人たる友人らの目は欺けない。メッキが剥がれる。「……お前、本当は彼女いないだろ?」。

嘉村 あー……。

三葉 主人公は顔を真っ赤にします。頭の中は真っ白です。しかし、バレてしまっては仕方がない。彼は認める。友人らは驚き、冷やかす。とは言え、彼らはいいヤツです。主人公の嘘を咎めることはない。むしろ、主人公に同情してくれる。そして、「よっしゃ!乗りかかった舟だ。合コンを開いてやるよ」「いや、待て待て。前から気になっていたんだが……お前、女子に苦手意識を持っていないか?」「そうそう!女子の前だと緊張して喋れなくなるんだろ?」。図星だった。

嘉村 さすがは恋愛玄人。見抜いていますね。

三葉 かくして、友人らの熱血指導が始まります。当初、主人公は及び腰でした。何しろ恥ずかしい。それに、「生涯独身者も少なくない昨今だ。無理して彼女を作らなくても……」という気持ちもある。しかし友人らに激励される内に、一丁やってみるかと考えるようになる。

嘉村 まぁ、思春期ですからね。そりゃできれば彼女もほしいでしょう。

三葉 友人らは、「女子の前で緊張せずに話すコツ」「万一緊張した場合の対処法」「それでもダメな場合の緊急措置」などを説く。

嘉村 ほぉ。

三葉 あるいは、「女ってのは、話を聞いてほしい生き物さ。黙ってただうなずいていればいい。そして最後に『わかるよ』と一言。これでOKさ。首を鍛えておけよ。むち打ち症になるからな」なんて、女性には聞かせられないようなことも言う。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さらに、「何事も実践してみなきゃ!」ということで合コンを開催してくれる。主人公は友人らに感謝し、友情に報いようとしますが……ダメだ。上手くいかない。彼は落ち込む。

嘉村 なるほど。

三葉 そんなある日のことです。主人公は、とある女子生徒(以下、Aさん)と親しくなる。……経緯はこんな具合です。その日、主人公は学級当番だった。友人らには先に帰宅してもらい、雑用を片付ける。仕事が終わった頃には雨が降り出していた。彼は置き傘を取り出す。そして下駄箱にやってくると……Aさんが佇んでいた。どうやら傘がなくて困っているようだ。主人公の胸が高鳴る。Aさんと言えば、文武両道にして才色兼備。「ほとんどチートキャラじゃん」と噂される学校のマドンナである。多くの男子生徒が彼女に憧れていた。主人公も例外ではない。「こっ、こっ、これはお近づきになるチャンスでは!?」と思う。

嘉村 ふむ。

三葉 恋愛素人で、女子に免疫のない主人公です。これまでだったら、見て見ぬふりをしたでしょう。声をかけるなんてとんでもない!しかし……主人公は友人らの訓練を受けた!なかなか実を結ばぬものの、女子に対する苦手意識は随分と薄らいでいた。「よーし……」。彼は腹を決め、傘を差し出す。Aさんはにっこりほほ笑む。そして、2人は仲よく相合傘で帰宅したのでした。

嘉村 なるほど。

三葉 その後、主人公とAさんは友情を深めていきます。放課後や休日に、図書館で一緒に勉強したりする。

嘉村 ふむふむ。

三葉 しばらくして「じつはかくかくしかじかで」と打ち明けると、友人らは仰天する「何……だと!あの学校のマドンナと!?」。彼らは「さっさと告白しろよ!」「告白しないと後悔するぞ」とけしかける。しかし、主人公は首を横に振ります。彼は、いまのままで十分幸せだったのです。女友達ができただけで満足していました。友人らは、「うーむ。もったいない」とうなる。

嘉村 ふむ。

三葉 さて、こうして主人公の高校生活はハッピーなものになりましたが……一方、これとは対照的に、友人らにはトラブルが降りかかります。ある者は恋人に振られ、別の者は恋人に浮気されていたことを知って衝撃を受ける。そして、彼らは言う「お前が正しかった……恋人なんていらない。必要なのは女友達だ。嗚呼、オレも女友達がほしい!」。……そう、いまや主人公と友人らの地位は逆転したのです。「主人公 = 恋愛素人」は「友人ら = 恋愛玄人」よりもハッピーになった!逆転勝利と言えるでしょう。……が、物語はまだ終わりません。

嘉村 ほぉ。

三葉 ここで、Aさんの心情を確認しておきましょう。……上述の通り、彼女は完璧女子です。無論モテる。モテモテです。男子にアプローチされまくってきた。かくして、軽薄で前のめりな男子にはうんざり。その反動で、朴訥でピュアな男子に好意を抱くようになった。例えば……主人公のような男子です。

嘉村 ふむふむ。

三葉 Aさんは、主人公に好意を抱いていました。ぶっちゃけた話、付き合いたかった。ところが主人公はちっともアプローチしてくれない。なぜ告白してくれないのだろう?もう随分距離は縮まっているはずなのに、なぜそういう雰囲気にならないのだろう?もしかして私……女に見られていない!?彼女は悩んでいた。

嘉村 あー……すれ違っていますねぇ……。

三葉 そうですね。まさにすれ違いです。そしてそのすれ違いの結果、主人公とAさんは大喧嘩をしてしまう。このままでは2人の関係は終わってしまうでしょう。でも……それは嫌だ!主人公は、ようやく自分の気持ちに気づきます。彼は、Aさんに恋をしていました。しかし、振られるのが怖かった。だから恋心から目をそらし、「女友達サイコー!」なんて自分に嘘をついていたのです。自分の気持ちを自覚した主人公は、Aさんに愛を告白する。かくして2人は幸福なカップルになったのでした。……で、おしまいです。


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 はい。「案②」は、「『40歳の童貞男』 ~『百合JK』編」です。


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嘉村 今度は、百合JK!


三葉 ええ。まずは、「40歳の童貞男」との比較表をご覧ください。


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三葉 主人公は異なりますが、基本的なストーリーは「案①」同様です。すなわち……主人公は百合JKで、彼女を含む多くの登場人物は「恋人がいない = 恥」という価値観を共有している。

嘉村 ふむふむ。

三葉 主人公は、ツンデレキャラということにしましょう。したがって、好きな人(以下、Bさん)の前で素直になれない。愛を告白するなんてとんでもない。友人らはそんな彼女を見かねて、「好きな人の前で素直になる方法」「意中の人に『キスしたい』と思わせる表情の作り方」なんてアドバイスを送る。

嘉村 ほぉ。

三葉 主人公の「ツン」はなかなか解消されませんが……しかし、多少は効果があったのでしょう。彼女は、Bさんと距離を縮めることに成功する。友人らは「そのまま付き合っちゃえ!告白だ!」と盛り上がるものの、主人公は「このままでいいの!もう十分幸せだもん♡」。

嘉村 ふむ。

三葉 一方そんな主人公とは対照的に、友人らは苦境に陥ります。「恋人に振られる」とか、そういうことですね。かくして、「主人公 = 恋愛素人」と「友人ら = 恋愛玄人」の地位は逆転しました。いまや、「主人公 = 恋愛素人」こそが勝ち組となったのです。

嘉村 しかし……まだ物語は終わらないんですよね?

三葉 ええ、その通りです。じつはBさんは、主人公に恋愛感情を抱いていました。主人公のツンデレっぷりが愛おしかった。しかし同時に、いつまで経っても進展しない関係に苛立っていた。そうとは知らぬ主人公は、今日も能天気にふるまう。やがて2人のズレが目立ち始め……ついに大喧嘩に発展してしまいます。このままでは2人の関係は終わってしまう。主人公は「それは嫌だ」と思う。彼女は、そこで初めて自分の気持ちに素直になる「私……あなたが好き!あなたと一緒にいたい!」。かくして2人は結ばれたのでした。……で、物語は幕を閉じます。

嘉村 なるほど。

三葉 以上、「『40歳の童貞男』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


続きはこちら!!

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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