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オッサンに夢を見てはいけない!!|『テン』(3)

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テーマ発表!!


 第1回第2回に引き続き、映画「テン」をベースに新しい物語を妄想します。

※「テン」のストーリーなどについては、第1回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 「テン」は、中年男が偶然見かけた美女に惚れ込み追いかけ回すものの、やがて「自分は幻想を抱いていただけ。本当に必要なものは別にある」と気づくに至る成長譚ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……前回に引き続き、一体どんな物語にするといいかディスカッションしてまいりましょう!

三葉 承知しました。

嘉村 前回ご紹介したのは、「『テン』 ~『中年男と女児』編」、「『テン』 ~『中年男と女教師』編」の2案でした。


案③


嘉村 それでは「案③」にまいりましょう!

三葉 はい。まずは、「テン」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは第1回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 そして前回「『テン』をリスペクトした物語」を作る時には、以下の4要素をアレコレいじくってみるのがいいだろうと申し上げました。


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嘉村 なるほど。

三葉 さて!以上を踏まえて「案③」は……ズバリ!「『テン』 ~『20代の女性とオッサン』編」


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嘉村 ほぉ。

三葉 まずは、「テン」との比較表をご覧ください。


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嘉村 つまり、「テン」が「中年男性が、美女の中に『処女性』を幻視する物語」であるのに対して……。

三葉 ええ。「案③」は「20代の女性が、中年男性の中に『父性』を幻視する物語」ですね。

嘉村 なるほど。

三葉 ストーリーはこんな具合。……主人公は、20代の独身女性です。彼女は人生に絶望していた!仕事も家事も手につかぬ。いっそ死んでやろうかと思う。それほどまでに世を儚んでいた。なぜなら……そう。彼女は失恋したばかりなのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 学生時代から交際し、当然結婚すると思っていた相手からの突然の別れの言葉。彼女は呆然とし、怒ることも拒否することもできなかった。友人は彼女を慰め、励まし、あるいは「あの野郎!ぶっ殺してやる!一発殴らないと気が済まない!」と憤ってくれた。嬉しかった。……しかし、彼女の心が晴れることはなかった。また別の友人は、合コンを開催してくれた。

嘉村 「恋を忘れるには新しい恋をするべし」っていうアレですね。

三葉 ええ。気持ちはありがたかった。しかし……それでも彼女の心が晴れることはなかった。

嘉村 ふーむ。これは重症だ。

三葉 そんなある日……彼女は、オフィスで1人の男性とすれ違う。

嘉村 ほぉ。

三葉 その瞬間、彼女の体にビビビッと電流が走る!

嘉村 ……何だかアレですね。どうでもいいですが、「ビビビッ」とか「電流が走る」とか昭和風の響きですね。

三葉 彼女のお母さんが松田聖子さんのファンだったんですよ。

嘉村 なるほど。

三葉 その男性は、彼女よりひと回りほど年長に見えた。

嘉村 30代半ばってところですね。

三葉 格別にイケメンだとか、モデル並みの体型だとか、そういうタイプではない。むしろ、少しくたびれた感じの中年男。……しかし!彼女はそこに「父性」を見た!

嘉村 「父性」……。

三葉 ほら、「ひと回りくらい年上の男性を好きになる女性」って、一定数いるじゃないですか。

嘉村 確かに。社会人と付き合っているJKとか、30代のオッサンと不倫している女子大生とかいますね。

三葉 ええ。同世代の男性からすれば、「ハァ?あんなのただのオッサンじゃん。あれが好きって……頭か目か、どちらかがおかしいじゃね?」としか感じられないものの、当の女性に言わせると「包容力があって素敵」とか「若造には出せない渋さがある」とか「落ち着きがあって、リラックスできる」とか「少しくたびれた感じが超クール」とか……。

嘉村 ふむ。

三葉 まぁ、そういった「包容力」や「落ち着き」を総称して「父性」と呼ぶことにしますが……「案③」の主人公は、かくしてその男性に心を奪われた!彼女は、酸欠の金魚のようにただ口をパクパクさせることしかできなかった。

嘉村 ふーむ。しかし、会社のオフィスで出会ったわけですよね。その時は声をかけられなかったとしても、すぐに再会できそうですが……。

三葉 ええ。主人公もそう思った。あのオジサマは一体誰?……無理に用事を作っては社内を歩き回る。しかし、見つからない。社員食堂や男子トイレの前に張り込んでみても、やはりダメ。一体どういうこと!?

嘉村 ほぉ……もしかすると、取引先など社外の人ですかね?

三葉 彼女もそう考える。かくして、あの日、あのフロアにいた全員の行動をチェックし、来社していた人をあぶり出す。また、デザイナーの友人に頼んで似顔絵を作り、聞き込みをする。彼女はあらゆる手を尽くし、オジサマの正体に迫っていく。

嘉村 すごい執念……。

三葉 やがて彼女は、オジサマがグループ会社の社員だと突き止める。さらに人事部に在籍する友人、エンジニアの友人の協力を得て、オジサマの名前や住所を入手する。

嘉村 犯罪ですよ……。

三葉 嗚呼、ついにわかった!ついにオジサマの正体を探し当てた!ついにやったのです!!……で、それでどうする?相手は既婚者で、子どももいる。調べによると、家族仲はいいようだ。……で、私に何ができる?あの仲睦まじい家族をぶち壊し、オジサマを悲しませ、そして私のモノにするの?……まさか!

嘉村 ふむ。

三葉 結局のところ、彼女にできるのはオジサマを遠くから見つめることだけでした。昨日も今日も明日も、じっと見つめるだけ。

嘉村 それはそれでどうかと思いますが……。

三葉 ところがそんなある日、事態は急変する。

嘉村 ほぉ。

三葉 社内で配置換えがあり、彼女はオジサマから営業を受ける立場になったのです。

嘉村 おー……。

三葉 彼女はぶったまげる。先任者が引継ぎをしてくれるが、ちっとも頭に入ってこない。あのオジサマと仕事……これから定期的にオジサマが来る……私に会いに来る……。

嘉村 確かに「私に会いに来る」ではありますが、ちょっとニュアンスが違う気が……。

三葉 そして間もなく、オジサマが訪ねてくる。主人公は緊張のあまりひっくり返りそうになる。しかし、グッと丹田に力を入れ、震える声で「よっ、よければおっ、おっ、おおおっ、お夕食でも……」。オジサマは「ぜひ!」。彼女は天にも昇る心地である。

嘉村 いや、オジサマにとっては仕事ですからね。営業のチャンスですから。

三葉 かくして2人は食事をとるのだが……やがて彼女は違和感を覚える。ふーん……オジサマって、ウェイトレスさんに結構きつい言い方するんだぁ。ふーん……オジサマって、食事中にテーブルに肘をついちゃうんだぁ。ふーん……オジサマって、肩にフケ乗ってるんだぁ。

嘉村 おっ、流れが変わりましたね。

三葉 ふーん……オジサマって若い女の子が大好きなんだねぇ。ミニスカートのウェイトレスさんが通りかかるたびに、チラチラ視線が動くのはどうかと思うなぁ。それに、私って結構胸が大きいから男性の視線には慣れてるつもりだけど……サーロインステーキを食べながら、そんなジロジロ嘗め回すように見られるのはさすがにきついものがあるよねぇ。

嘉村 ……。

三葉 彼女は冷静になる。一体私は、この男にどんな幻想を抱いていたのだろう?ただのエロオヤジじゃん!嗚呼、私のバカ!またつまらない男に弄ばれようっていうの?ホントにバカ!

嘉村 ふむ。

三葉 彼女はさっさと食事を切り上げ、翌日からは積極的に合コンに臨むようになる「今度こそ素敵な男を捕まえるんだーい!」……以上、主人公の成長譚でした。

嘉村 なるほど。


案④


嘉村 続いて、「案④」にまいりましょう。

三葉 はい。「案④」は、「『テン』 ~『30代の女性と男児』編」です。


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嘉村 男児!

三葉 「テン」と比較すると以下のようになります。


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嘉村 「男児の中に処女性を見出す」というのは……。

三葉 ええ。やや矛盾した表現に感じられるかもしれませんが……「案④」は、「人生に疲れ果てた中年女性が、男児に『処女性 = 既に自分が失ってしまった若さ』を幻視する物語」。要するに、ショタコンですね。


嘉村 ははぁ……。

三葉 彼女はひょんなことから男児を見かけ、その赤い頬や、半ズボンから覗く膝小僧に恋をする。何とかわいらしい!!

嘉村 ……なるほど。

三葉 かくして追いかけ回すものの、最終的には「ううっ……ただのクソガキじゃん!私、こんなことしてる場合じゃなかった!なんか……男とかどうでもよくなっちゃった。マンションでも買おうかしら。明日、不動産屋さんに相談してみよ!」と新しい人生を歩み始める物語です。

嘉村 ふむふむ。

三葉 以上、「『テン』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 「テン」の研究はこれで終了です。ありがとうございました。

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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