アニメ「咲-Saki-」第15話を7つの視点から分析する👀
※引き続き、アニメ「咲-Saki-」を分析します。本記事で取り上げるのは第15話。第14話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!
分析対象
あらすじ
【ポイント①】描くべきは<麻雀をする女子高生>。<麻雀の試合それ自体>ではない
<1>
本話に描かれているのは、【①副将戦の結末、②副将戦と大将戦の合間の休憩時間、③大将戦の序盤】である。
まずは、【①副将戦の結末】を見てみよう。
副将戦は第13話の前半に始まった。つまり、丸々2話かけて描かれたわけだ。
ところが、である。
よくよく考えてみると、その大半は①和の覚醒描写、②桃子の能力説明、③桃子の人物紹介。試合自体はほとんどまったく描かれていないのだ。
例えば本話序盤には、【桃子がステルスモードで透華をコテンパンにやっつける → ところが和には効かない → だが桃子は凹まず、和とガチ麻雀で戦うことを決意する】という熱い場面がある。
これが一般的なスポーツものやバトルものなら、この後、和と桃子の激闘だったり、そこに透華が乱入してきたりといったシーンが描かれそうなものだが……本話では全部カット!一挙に試合終了シーンに飛ぶ。
<2>
率直に言って、「3人の激しい攻防を見てみたかった。残念だ」と思う。しかし、たぶんいまの構成がベストなのだろう。
だって本作は「アカギ」や「哲也」、「むこうぶち」、「ムダヅモ無き改革」のような【麻雀の試合を描く作品】ではなくて、【麻雀をする女子高生を描く作品】なのだから。
この違いは重要だ。
本作で描くべきは、あくまでも<女子高生たちの青春模様(成長、悩み、友情、チームワーク、恋愛 etc.) + 特殊能力>。麻雀の試合それ自体を長々描いてしまっては、それは「咲-Saki-」とは言いがたい。
【ポイント②】和ら3人は三すくみ
上述の通り、副将戦はたっぷり2話かけて展開された。
和が覚醒したり(第13話)、透華が負けじと応戦したり(第14話前半)、かと思いきや桃子がステルスモードを発動して透華を蹴散らしたり(第14話)、さらに和にはステルスモードが効かなかったり(第15話前半)といろいろあったわけだが……3人の戦いっぷりを整理してみると、要するに三すくみ(グー、チョキ、パーの関係)になっていたことがわかる。
・和:桃子のステルスモードを破る。しかし透華の大技を食らう。
・透華:和の合理的な麻雀を豪運で打ち破る。しかし桃子のステルスモードには手も足も出ない。
・桃子:透華をコテンパンにやっつける。しかし和にはステルスモードが効かない。
今回の試合では、確かに和と桃子が勝ち、透華1人が沈んだ。しかし、じつは3人の力は拮抗していたのではないかと思う。
【ポイント③】誰がために戦うか?
<1>
私が好きなのは、【桃子がステルスモードで透華をコテンパンにやっつける → ところが和には効かない → だが桃子は凹まず、和とガチ麻雀で戦うことを決意する】というシーンだ。
普通、自身の奥義が通じないとなれば慌てふためき、絶望するものだろう。ところが桃子は違う。彼女の心は折れない!
なぜなら、桃子には仲間がいるから。そして最愛のゆみがいるから。仲間のため、愛する人のために、ベストを尽くして最後まで戦い抜くことを決意する。
じつに感動的な名シーンである。
<2>
一方、和も仲間や最愛の咲を想って戦う。
これまた感動である。
<3>
では透華はどうかというと……彼女は自分のことしか考えていない!
終始、「桃子にコテンパンにやられて悔しい!」「和に勝てなくて悔しい!」「次こそは目に物見せてやる!」といった調子である。
桃子、和ときて、この透華だ。透華がオチ担当であることがよくわかる。爆笑ものである。
<4>
上述の通り、私は3人の実力は伯仲していたのではないかと思う。しかし今回の試合では、透華1人が沈んだ。
なぜか?
おそらくは、このセルフィッシュな性格ゆえだろう。だって、<誰かのために戦う時、人は実力以上の力を発揮する>というのはスポーツものやバトルもののお約束ではないか。
【ポイント④】試合、そしていちゃいちゃ
<1>
副将戦後、ゆみと桃子のいちゃいちゃシーンがある。
和と咲のハイタッチも、いちゃいちゃシーンの一種と言えるかもしれない。
<2>
この【激しい試合 → 試合終了 → 奮戦した選手とそのパートナーのいちゃいちゃシーン → 次の試合へ】という構成は、「咲-Saki-」のお約束である。
例えば中堅戦では、試合後に一と透華がいちゃいちゃを披露している(第12話)。
【ポイント⑤】<成長>と<死亡フラグ>を同時に描くテクニック
<1>
大将戦が始まるや否や、咲は惜しげもなく必殺技を繰り出した。しかも連発である。
振り返ってみると……第1話や第2話の咲は<麻雀で勝つということ>を理解できていなかった。また、第3話の咲は自分1人が大勝することを躊躇い、接待麻雀をしてしまう。
それと比べて本話の先制攻撃!
いやぁ、まったくよくぞここまで成長したものである。スカッとする。
<2>
しかしその一方で……スポーツものやバトルものでは、冒頭優勢だったキャラがそのまま勝ち逃げすることはほとんどない。
そう、先制リードは死亡フラグなのだ。「咲はやがて苦戦し、まさか敗北するのか!?」と不安になる立ち上がりと言えるだろう。
咲の<成長>を描きつつ、それが<死亡フラグ>でもあるというこの展開!鑑賞者にハッピーと不安を同時に与えるこの展開!面白い。
【ポイント⑥】人間は魔物をいかにして討つか?
<1>
続いて、終盤に描かれるゆみの反撃に注目したい。
咲とゆみを比べれば、まぁ咲の方が格上だろう。
何しろ、咲は<牌に愛された子>。嶺上開花を連発してしまうのである。
特殊能力者である。魔物である。
では、ゆみはどうか?決勝に出てくるほどだ、凡百の雀士ではないだろう。
しかし、咲のような魔物とは思えぬ(少なくとも、いまのところそういった描写はない)。
つまり、咲とゆみの戦いは<魔物 v.s 人間>と整理できる。
<2>
では、人間が魔物に勝つにはどうすればいいのか?
真っ正面から戦っても勝ち目はない。知恵や知識をフル活用して、変則的な手で攻めるしかあるまい。それが最後の「エサを与えておく」発言だ。
つまり、ゆみは魔物相手にクレバーな戦いを挑もうとしているのだ。
じつにカッコいい!そりゃ桃子も惚れるだろう。
<3>
こうした<魔物を相手にクレバーに戦うキャラ>というのはじつに魅力的で、パッと思いつくところでは「HUNTER×HUNTER」のネテロがいる。
ネテロは、すべての生命の頂点に立つ王・メルエムと対峙し、そして負ける。だが、そこで終わらない。ネテロは<人間の底知れぬ悪意(知恵や知識ではない。悪意だ!)>でメルエムを打ち倒すのだ。
【ポイント⑦】衣の不気味さ
本話の衣は不気味である。
大将戦開始後、彼女はまったく目立たない。咲の先制攻撃にも、ゆみの反撃にも無反応。まるでステルスモードの桃子だ。
そしてラストシーン。衣はうっすらと笑みを浮かべる……まるで、咲やゆみの戦いを嘲笑するかのように。人間たちの低レベルな奮戦を見て、神が天界で失笑しているようではないか!
なんとまぁ、じつに不気味である。
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