鑑賞者に今後の展開を予想させ、期待を膨らませ、「あー、早く続きを見たい!」とワクワクさせるテクニック!!|【第6局:開幕】「咲-Saki-」に学ぶ
※引き続き、アニメ「咲-Saki-」を分析します。本記事で取り上げるのは第6話。第5話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!
分析対象
あらすじ
分析メモ
■1:鑑賞者の期待を膨らませる演出 ~和の宣言
本話は【次話以降に向けて、鑑賞者の期待を膨らませる回】と言えるだろう。
例えば、和が「目指すは全国制覇です!」と宣言するシーン。もう少し丁寧に言うと、これ、【強豪校ひしめく中で、主人公擁する無名校が「全国制覇」を宣言し、周囲を唖然とさせる】というシーンだ。
スポーツものでお馴染みの王道的展開である。
そして……このシーンを目にした瞬間、多くの鑑賞者は無意識の内に今後のストーリーを予想し、胸を膨らませたに違いない。「なるほど!周囲の連中は『はぁ?無名校が全国制覇?バカみたい(笑)』という顔をしているが、清澄は驚異的な強さを発揮して連中の鼻を明かすことになるのだろう。うーむ、ワクワクするぞ!早く続きを見たい!」と。
■2:鑑賞者の期待を膨らませる演出 ~藤田プロ
同様に、藤田プロにも<期待を膨らませる演出>が施されている。
藤田プロは第4話で登場し、プロ雀士というよりも<SMの王女様か、はたまた悪の女幹部>といったふるまいを見せた。
本話では解説担当として再登場する。ところが、やる気ゼロ。実況担当者の問いかけにも「そうね」「まだ始まったばかりだから」などとぼんやり応えるだけだ。第4話とのギャップが大きい。
かくして私たち鑑賞者は、「いつまでもダウナーなままとは思えぬ。今後、和や咲、あるいは天江衣が超人的な戦いを披露した時にヒートアップするに違いない!今度はどんな風に暴れるのだろう?あー、早く見たい!」と心を躍らせるのだ。
■3:鑑賞者の期待を膨らませる演出 ~和の実力
さらに、和にも<期待を膨らませる演出>が施されている。
前話まででは、和は<元中学チャンピオンの実力者>と描かれてきた。
ところが龍門渕の純曰く、「中学時代の牌譜を見る限り、和はそれほど大した選手ではない」。なるほど、超高校級の打ち手から見ると「大した選手ではない」という評価になるらしい。
が、しかし。私たち鑑賞者は知っている。
・1:和は、「敗退したら麻雀を止めて転校」という約束を父と交わしている。いまの彼女は「咲らと離れ離れになるなんて耐えられない!絶対に全国制覇しなければ!」という強い覚悟を持っている。
・2-1:前話の久や、本話の透華曰く、和(= のどっち)が得意なのはネット麻雀。リアル麻雀では実力を発揮できていない。
・2-2:しかしいま、和はぬいぐるみ(リアル麻雀で実力を発揮するためのキーアイテム!)を持参している。
かくして、私たち鑑賞者の期待は大いに膨らむのだ。「いまの和は、かつての和とは違う!いよいよリアル麻雀でも実力を発揮して、純らを驚愕させるに違いない!うー、早く見たい!!」と。
■4:鑑賞者の期待を膨らませる演出 ~咲
そして、咲にもまた<期待を膨らませる演出>が施されている。
すなわち、本話の咲はいいとこなしである。迷子になる。心細くて泣きべそをかく。龍門渕の部員に声をかけられると怯え、また泣きべそをかく。
うーむ、ダメだこいつ(そんなところもまたかわいいのだが)。
そして面白いことに……咲がダメであればあるほどに、今後来るであろう覚醒の時への期待は膨らんでいくのだ。これは【悪代官が悪人であればあるほどに、水戸黄門による制裁が楽しみになる】、【ジャイアンやスネ夫がのび太をいじめればいじめるほどに、秘密道具を使った復讐が楽しみになる】というのと同じ原理である。
■5:ファンファーレ
序盤、咲が笑顔で言う「強そうな人がたくさん!早く麻雀を打ちたいな!」。
じつに象徴的なセリフである。麻雀を嫌っていた咲、<麻雀で勝つ>ということが理解できなかった咲、勝つことに遠慮していた咲……もうそんな咲はいない。ここにいるのは、1人の麻雀部員である。
つまりこれ、【咲の成長を描く序盤のエピソード群(第1~5話)が終わり、ライバルたちとの戦いを描く県予選編(第6話~)が始まったことを伝えるファンファーレ的なセリフ】と言えるだろう。
■6:いい意味でカオス
【咲が迷子になり、泣きべそをかく。その時、偶然すれ違った龍門渕の面々が咲のオーラに驚愕する】という場面は、本作屈指の名シーンと言えるだろう。
何しろ、<泣きべそをかきながらうろうろさまよう主人公>と、<オーラを感じ取って驚愕する龍門渕の個性的な部員たち>……いい意味でカオスなのだ。
■7:百合作品の強み
前話までに引き続き、相変わらず百合演出が面白い。
本話で、特に「なるほど」と感心したのは、
・1:和が「目指すは全国制覇です!」と宣言。その後、顔を赤くして「それに……清澄は私だけではじゃない」と追加する(和は咲を想い、赤面しているのだ)。
・2:龍門渕の一と純から声をかけられ、怯える咲。和が咲を背中にかばう。
時には恋する乙女、時には姫を守るナイト……和、すごい!1人2役じゃないか!
一般的な<異性愛者同士の恋愛を描いた作品>と比べて、百合作品ではヒロインのカッコいい姿もかわいい姿も描きやすい。これが強いみだよなぁと思った。
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