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説教が始まるかと思いきや百合展開!!|【第3局:対立】「咲-Saki-」に学ぶ

※引き続き、アニメ「咲-Saki-」を分析します。本記事で取り上げるのは第3話。第2話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!


分析対象


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あらすじ


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分析メモ


■1:突然明かされる世界観

本話以降、冒頭にナレーションが入るようになる。

すなわち「21世紀!世界の麻雀競技人口は数億人を超え、プロの麻雀プレイヤーは人びとの注目を集めていた。高校でも大規模な全国大会が毎年開催され、そこではプロに直結する成績を残すべく、高校生麻雀部員たちが覇を競っていた。これは、その頂点を目指す少女たちの軌跡!」。

<世界の麻雀競技人口は数億人を超えている>といったことは、これまで語られていなかった。ゆえに、多くの鑑賞者は思わず吹き出したことだろう「えっ、そんな世界観だったの!?(笑)」と。


■2:秀才と天才

冒頭、和は1人で麻雀の練習をしている。その表情は厳しい。一方、咲は木の下で呑気に居眠りしている。

……この差!これが秀才と天才の差なのだろうか。


■3:強豪キャラが続々登場

組み合わせ抽選会のシーンには、今後活躍することになる様々なキャラがちょっとずつ顔を出している。

こうした【たくさんのキャラが、本格的に登場する前にちょこっとだけ顔を出すシーン】は、スポーツものやバトルものでお馴染みのものだ。

次々に登場する個性豊かなキャラ(というか、濃すぎるキャラ)に胸が躍る。特に、片目瞑りっぱなしの福路美穂子はインパクト大。


■4:咲にとっての麻雀、和にとっての麻雀

本話のタイトルは「対立」。咲と和の価値観が対立するエピソードだ。

すなわち、咲は皆で麻雀を楽しみたい。彼女はこれまで、苦痛以外の何ものでもない家庭麻雀しか知らなかった。ところが麻雀部の面々と出会い、麻雀の楽しさを知った。だからこそ、<楽しみたい>という気持ちが強いのだろう。そしてそれゆえに「皆に楽しんでほしい。もちろん優希にも楽しんでほしい」と考え、手加減してしまったのだ。

一方、和は真剣勝負を望んでいる。咲は強い。和は勝てない。当然悔しくて仕方がない。しかし同時に、彼女はいま充実した毎日を送っている。どうにかして咲を倒したいと夢中になっている。つまり和にとっては、【麻雀 = 楽しくも厳しいもの】であり、【厳しいからこそ楽しいもの】なのだ。ゆえに、咲の手加減が許せなかった。


とまぁこうした2人の価値観のズレが、

・Step 1:咲が優希を勝たせようとして手加減する

・Step 2:それに気づいた和が激昂する

・Step 3:咲が弁解する

・Step 4:和が思わず叫ぶ「あなたが手加減していると私は楽しくありません!私も楽しませてください!」

……という一連のシーンできっちり描かれている。


■5:咲は和らの影響を受けて、成長しつつある

咲と麻雀の関係を整理してみよう。

第1話:咲は麻雀が強い。しかし嫌っている。

第2話:咲が麻雀を好きになる。

・本話:いまや咲は麻雀が大好きだ。しかし勝利への執念を欠いている。

一方、和は麻雀が強く、麻雀を人一倍愛している(さらに勝利への飽くなき執念を持っている)。


つまり、【咲は少しずつ和に近づいていっている】と言えるだろう。

あるいは、【咲は劣悪な家庭環境のせいで大切なモノを失った(「好き」「楽しい」という気持ち、健全な向上心など) → だが、和らと過ごす中でそれを取り戻しつつある】と整理することもできそうだ。

要するに本作は【麻雀は強いが、人間としては不完全だった咲が成長していく物語】なのだ。


■6:説教が始まるかと思いきや百合展開!

和が激昂して叫んだ「いまの打ち方を続けるなら退部してください!」。多くの鑑賞者は「おっ。こりゃシリアス展開だな。咲を説教するんだな」と感じたはずだ。

ところが次のセリフは、「あなたが手加減していると私は楽しくありません!私も楽しませてください!」。で、和は頬を赤らめる。

「私も楽しませてください!」ってすごいセリフだ……!

つまりはこれ、【「真剣勝負の最中に手を抜くだなんて人間として最低です!」といった倫理観に基づく説教が始まるかと思いきや、実際に始まったのは百合シーンだった】という展開。

予想外。仰天する。超面白い!


■7:和は咲をどう思っているのか?

第1話以来、咲が和に特別な感情を抱いていることは明らかだった。では、和の方はどうか?和は咲をどう思っているのか?

じつはこれまで、和の気持ちは明言されていなかった。

ところが本話後半では……「あなたが手加減していると私は楽しくありません!私も楽しませてください!」。これである。そう、和は咲にぞっこんだったのだ。


■8:ダブルバインド的状況

「あなたが手加減していると私は楽しくありません!」という発言以降、和はずっと頬を赤らめ、何度も何度も恥ずかしそうに俯く。同様に、咲も頬を赤らめている。

……のだが、これ、良好とはいえぬシリアスな家庭環境について告白し、そして「強豪を打ち倒して全国を目指そう!」とスポ根ものの如く誓い合うシーンである。

それなのに、ビジュアル的には百合カップルのラブラブ告白シーンにしか見えない!

このズレ!このダブルバインド的なズレがじつに面白い。


■9:麻雀で語れ!

「麻雀なら……麻雀を通してならお姉ちゃんと話せる気がする」という咲のセリフ。

これ、完全に<拳で語る>のノリである。熱い!


■10:ゴールの明確化

本話は、【主人公らの<ゴール(目標)>が明確になるエピソード】である。

すなわち、インターハイの県予選を突破して全国に行くこと!


■11:咲と和の関係の変化

「あなたが手加減していると私は楽しくありません!私も楽しませてください!」と、愛の告白(?)をかました和。その後、咲が微笑んだ「原村さん、一緒に全国に行こう!」。で、和は頬を赤くする。そして2人は小指を絡ませ、指切りした。

……はい、完全なる百合展開ですね。

第1話冒頭では、咲は和を見て「うわー、きれいな子」と感嘆していた。その後アレコレあって、いまや2人は同じ夢に向かって歩き出したのだ!

いやぁ、思えば2人の距離は随分縮まったものである。



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(担当:三葉)

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