【21年秋アニメ研究】「プラチナエンド」の分析【1:鑑賞者の体験の分析】
※本記事では、2021年秋アニメ「プラチナエンド」の第1話を分析します。
本記事全体のまとめ
※本記事全体をレポート形式にまとめました。本記事後半の文章と同内容ですが、レポート形式の方が見やすいと思います。お勧めです!
鑑賞者の体験の分析
本話を鑑賞した複数のアニメファンの感想を整理・類型化した。本話が鑑賞者に対してどのような<体験>を提供したのかを把握するのが目的である。
▶構成(一度上げて再び落とす)
・本話冒頭、明日は絶望している。そんな彼がナッセと出会い、天使の翼と矢を授かったことで前向きになる。そして明日は「家族の分まで生きて、幸せになろう!」と決意するに至る。……これが本話のストーリーである。
・と見せかけて!エンディングで、ナッセが不穏なことを言い出した。曰く「地上にはいま、明日を含めて13人の神候補がいる。最終的にその内の1人が神になる」。多くの鑑賞者は「あっ!これ、デスゲームの始まりじゃん!明日くんはそう簡単に幸せにはなれそうにないなぁ……」と感じたに違いない。
・つまり本話は、【明日は絶望している → 色々あって立ち直る → 再び絶望感が漂い始める】という物語なのだ。
・<主人公はハッピー → 色々あって絶望する>ではない。<主人公は絶望している → 色々あってハッピーになる → 再び絶望へ>という【一度上げて再び落とす物語】なのだ。だからこそ、より一段と絶望感が漂う。「せっかく立ち直ったのに!かわいそうすぎる!」と明日から目を離せなくなる。巧い構成である。
▶コンセプト(皮肉)
・明日はナッセと出会ったことで立ち直り、「家族の分まで生きて、幸せになろう!」と決意する。しかし彼は、ナッセと出会ったせいでデスゲームに巻き込まれていく。つまり<幸せ>から遠ざかっていくのだ。
・嗚呼、なんて皮肉な展開なのか!最高にワクワクするではないか!
▶展開(インパクトの強いシーンの連続)
・本話は、初っ端からインパクトの強いシーンの連続である。すなわち、主人公の自殺、虐待、両親の事故死(じつは保険金殺人)、叔母の自殺などなど。
・インパクトの強いシーンが続くので、見ていて飽きない。
・しかしその一方で、これらのシーンにはカタルシスがないように感じた。スカッとしないのだ。ただただ凄惨で悲惨。ゆえに、見ていて気分が暗くなる。
▶キャラ(ナッセ)
・ナッセは天使である。しかし、見た目はロリっぽい美少女だ。加えて声は小倉唯さん。いかにも無垢な感じで、大変にかわいらしいのである。
・とはいえ、やはり天使である。私たち人間とは相容れないところがあるようだ。例えば「叔父さんをぶっ殺して財産を取り返そうよ」など、私たち鑑賞者や明日には倫理的に受け入れがたいことを平然と提案してくるのである。
・つまり、<かわいい顔して倫理観や良心がぶっ壊れた少女、大変物騒なことを口走る少女>だ。
・ところで……本作の原作は同名のマンガである。作者は大場つぐみさんと小畑健さん。そう、「DEATH NOTE」のコンビだ。そして「DEATH NOTE」といえばリューク!リュークはいかにも悪魔らしいグロテスクな外見をしていたが、その一方で妙に人間臭いところ、かわいらしいところを持つキャラだった。<ナッセはリュークの裏返しである>と言えなくもないように感じた。
▶キャラ(明日)
・明日に魅力を感じなかった。というか、そもそもどのようなキャラなのかいまいちわからない。かわいそうだとは思うが、それだけという感じ。頭がいい印象もないし、理想に燃えるタイプでもないし、かといって残虐なわけでもないし……。
・一番気になったのは、<明日が終始受け身である>という点だ。そう、彼は状況や、周囲のキャラに流されるばかりなのだ。
・まぁ、冒頭シーンでは生きる気力を失っていたわけだし、物語中盤からは天使の力に驚いたり、叔母の自殺にショックを受けたりしていたわけだから、そりゃ受け身になるのも無理ないが……しかし、受け身のキャラは印象不鮮明になりやすい。彼が自発的に意思決定し、行動するシーンが1つだけでも必要だったのではないかと思った。例えば「叔父を殺す」でも「『叔父は殺さない』とナッセに宣言する」でも「叔母の遺体を埋葬する」でも何でもいいのだ。それだけでだいぶ印象は違ったように思う。
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