【21年秋アニメ研究】「異世界食堂2」の分析【1:鑑賞者の体験の分析】
※本記事では、2021年秋アニメ「異世界食堂2」の第1話を分析します。
本記事全体のまとめ
※本記事全体をレポート形式にまとめました。本記事後半の文章と同内容ですが、レポート形式の方が見やすいと思います。お勧めです!
鑑賞者の体験の分析
本話を鑑賞した複数のアニメファンの感想を整理・類型化した。本話が鑑賞者に対してどのような<体験>を提供したのかを把握するのが目的である。
▶コンセプト(おいしそうに食事をする)
・本作には波乱万丈のストーリーがあるわけではないし、心揺さぶられる感動の展開があるわけでもない。<異世界人が「異世界食堂」にやってきて食事をする → 笑顔になる>、ただそれだけの物語だ。しかし、これが面白い!
・一体なぜ面白いのか?私たちはどこに面白さを感じているのだろうか?
・まず何よりも重要なのは、アニメだろうと現実世界だろうと、<おいしそうに笑顔で食事をしている人を見るのは心地よい>ということだ。その点、本作は完璧である。キャラたちがじつにおいしそうに、じつに幸せそうに食事をするのだ。見ているだけで幸せになってくる!これが最大の魅力だと思う。
▶コンセプト(マウンティングがない)
・本作の基本的なあらすじは、<異世界人が現代日本の料理を食べる → その旨さに仰天する>。
・これ、「えっ。皆、どうしたの?ポカンとした顔しちゃってさ。俺、○○しただけだよ」「やれやれ。その程度で驚いちゃ困るぜ」といった感じのマウンティング全開の物語になってもおかしくない立て付けだ。
・ところが本作は違う。本作には<異世界人に対するマウンティング感>がほとんどない。だから、見ていて不愉快にならない。のんびり鑑賞するのにぴったりである。
・では、なぜ<異世界人に対するマウンティング感>がないのか?注目すべきは、<作中でのマスターの存在感の薄さ>だろう。マスターは本作に登場するほとんど唯一の非・異世界人である。その彼の存在感が薄い……!つまり本作には、ほぼ異世界人しか登場しないのである。マウントを取るキャラがいないのだから、<異世界人に対するマウンティング感>がないのは当然だ。
・以上をまとめると、<異世界人が現代日本の料理を食べる → その旨さに仰天する>というストーリーでありながら、非・異世界人をほとんど登場させない。この結果として<異世界人に対するマウンティング感>が消え、のんびり鑑賞し得る作品になる……というわけである。巧い!
▶コンセプト(純粋なグルメ作品)
・多くのグルメ作品ではストーリーを盛り上げようとして、奇抜なメニューを登場させたり、料理人同士の戦い、グルメ同士の戦いを描いたりする。つまりグルメ作品は、<グルメ作品>を名乗りながらも、<実際の見どころ = ファンタジックな要素、バトル要素>となっていることが少なくない。
・しかし本作は違う。客は異世界人だ。彼らは現代日本の料理に馴染みがない。ゆえに、チーズスフレケーキやコーンポタージュなどの定番メニューを出すだけで十分。それだけで彼らは驚き、激賞し、興奮し、そして破顔する。わざわざ奇抜なメニューを出したり、料理人同士やグルメ同士が戦ったりせずとも、十分物語として成立するのだ。そう、本作は<見どころ = 登場するメニュー、それを食べる人のリアクション>なのである。
・つまり異世界人を客に設定したことで、本作は<純粋にグルメ(登場するメニュー、それを食べる人のリアクション)を楽しむ作品 = 純粋なグルメ作品>になり得ていると思うのだ。
▶キャラ(好感が持てる理由)
・チーズスフレケーキやコーンポタージュなど、<登場する料理が特殊なものではない>というのも本作の重要なポイントだろう。
・というのも、<私たち鑑賞者からすれば何の変哲もない料理を「おいしい♥」「最高♥」と激賞し、幸せそうに食するキャラたち>……素直な感じで、メチャクチャに好感が持てるのだ。「そうそう、コーンポタージュっておいしいんだよねー!」と共感できるのだ。
・一方、もしもこれが<高級食材を使った料理に舌鼓を打つ作品>だったりしたらこうはいかないだろう。気取った感じ、高飛車な感じがして、いまいち好感を持てなかったに違いないと思うのだ。
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