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【21年秋アニメ研究】「サクガン」の分析【1:鑑賞者の体験の分析】

※本記事では、2021年秋アニメ「サクガン」の第1話を分析します。


本記事全体のまとめ


※本記事全体をレポート形式にまとめました。本記事後半の文章と同内容ですが、レポート形式の方が見やすいと思います。お勧めです!


Trend Report _サクガン(第1話) (1)

Trend Report _サクガン(第1話) (2)

Trend Report _サクガン(第1話) (3)

Trend Report _サクガン(第1話) (4)

Trend Report _サクガン(第1話) (5)


鑑賞者の体験の分析


本話を鑑賞した複数のアニメファンの感想を整理・類型化した。本話が鑑賞者に対してどのような<体験>を提供したのかを把握するのが目的である。


▶コンセプト(基本的な構図1)

・本作の基本的な構図は【舞台は閉鎖空間。人びとは縮こまるようにして暮らしている。そんな中、主人公は外の世界に強い憧れを抱いている】。目当たらしさこそないものの、しかし王道的な設定でワクワクする。


▶コンセプト(基本的な構図2)

・【親バカで一見するとダメオヤジだが、いざという時には頼りになる父】と【天才ながらまだまだ世間知らずの娘】の<父娘バディもの>といえそうだ。


▶展開(アウフヘーベン的な解決)

・本作の主人公は、【「外の世界に旅立ちたい」という強烈な好奇心を持つ娘】と【「せめてもう少し自分の傍にいてほしい」という親心を持つ父】。

・物語冒頭から、①この2人の対立や、②しょっちゅう喧嘩しているが、しかし本当はお互いを想い合っていること、③とはいえ「外の世界に旅立ちたい」「せめてもう少し自分の傍にいてほしい」という気持ちは譲れないと考えていることが繰り返し描かれる。

・かくして「最終的にどう決着をつけるのだろうか?父が譲歩し、娘の旅立ちを見送ることになるのだろうか?」と気になっていたら……父が親子で旅立つことを決意するという斜め上の展開だった。言わばアウフヘーベン的な決着である。意外性があって面白い。


▶キャラの変化

・「外の世界に旅立ちたい」というメメンプーに対して、ガガンバーは断固反対していた。しかし彼はエンディングで心変わりする。すなわち「もう娘を引き留めることはできない。しかしやはり心配だ。こうなったら俺も行く!親子で旅に出よう!」と決意するのだ。

・この心変わりに至る流れがじつに巧い!というのもこれ、一歩間違えると「えっ。これまでずっと反対していたのに急に旅立ちを認めるの?」「何があった!?」と鑑賞者を混乱させかねない展開だと思うのだ。

・その点、本話は巧い。注目すべきは以下の2つの描写だろう。第1に【ウォルシュはガガンバーの昔馴染みである → そのウォルシュがガガンバーに言った「子どもが巣立つのは寂しいし、心配なものだ。しかしいざその時が来たら、子どもを信じてやるしかない。それが父親の務めってものだろ」 → その翌日、突如怪物が出現。ウォルシュは果敢に立ち向かい、殺されてしまう → つまり「子どもを信じてやるしかない。それが父親の務めってものだろ」というのが昔馴染みの最期の言葉になったのだ。ガガンバーはこの言葉を噛みしめる】。

・そして第2に【突如現れた怪物。街は破壊され、幼馴染のリンダは殺されてしまった → しかしメメンプーは訴える「こんな状況でも、外の世界に行ってみたいという気持ちが収まらないんだ!」 → メメンプーの想いの強さにガガンバーはハッとする】。

・この2つの描写があるからこそ、ガガンバーの心変わりには違和感がないのだ。むしろ、心変わりして当然だと感じられる。そして「それでこそ男だ!それでこそ父というものだ!頑張れよ!」と応援したくなる。じつに巧い!!


▶テイスト(ころころ変化)

・本話はテイストがころころ変化する。大雑把に列挙してみると……【オープニングシーンはハードボイルドタッチ → その後の親子喧嘩はドタバタギャグ風 → 親離れしようとする娘を前に寂しくて仕方がないガガンバー……ちょっとしんみり → 外の世界への憧れを語るメメンプーはかわいい → 突如カイジュウの襲撃。仰天 → メメンプーらはドタバタギャグ風に逃げ回る → と思いきや、それまで主要キャラ風に描かれていたリンダとウォルシュがあっさり殺されてしまう。そしてショックを受けるメメンプーとガガンバー。一気にシリアスモードに突入だ  → 最後に「親子で旅立つぞ」と宣言するガガンバー。じつにカッコいい! (ここでおしまい)】。

・メリハリが利いており、まったく飽きる暇がない。


▶構成(焦点を絞る)

・本話は、①あちこちに謎がばらまかれているが(人びとはなぜ地下都市で暮らしているのか?カイジュウなる怪物の正体は? etc.)、しかしその大半は説明されることなく放置されたまま。つまり鑑賞者にとってはわからないことだらけである。その上、②かなりテンポが速い。さらに、③上述の通りテイストもころころと変化する。……こう書き出してみると、いかにも鑑賞者が混乱し、途中で迷子になってしまいそうな物語に見える。

・しかし、実際に混乱したり迷子になったりした鑑賞者は少なかったのではないか。なぜか?勝因は<父娘の対立とその解消>に焦点を絞ったことだろう。

・【外の世界に憧れる娘/子どもが巣立っていくのを寂しがる父/両者の対立とその解消】という誰もが理解できる話題をど真ん中に据えたからこそ、そしてそれ以外のトピックは軽く描く程度にとどめたからこそ、混乱が生まれなかったのだと思う。



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(担当:三葉)

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