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依存したら死ぬ!生き残るのは、自立したヤツだけ!!|『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』に学ぶテクニック

名作映画を研究して、創作に活かそう!

本記事では、「女番長ブルース 牝蜂の逆襲」に【「不良」のバリエーション】を学びます。

※「女番長ブルース 牝蜂の逆襲」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

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「不良」にもバリエーションがある!!


本作の主人公は、玲子

彼女は不良です。


<玲子のプロフィール>

▶ 女性、20歳頃

▶ 女性ばかりの不良グループ「アテネ団」のスケバン

▶ 仲間と共に、ケンカ、博打、シンナー、自動車泥棒など、やりたい放題の毎日


また、玲子の周りには2人の男がいます。いずれもたびたび登場するキャラであり、本作の準主人公と言えるでしょう。

1人は次郎、もう1人は英二。どちらも不良です。


<次郎のプロフィール>

▶ 男性、20歳頃

▶ チンピラ集団「北神会」のリーダー

暴力団「秋本組」の準構成員で、正式な組員になることを望んでいる


<英二のプロフィール>

▶ 男性、20歳頃

学生愚連隊のリーダー。いつもバイクを乗り回している。しかし、暴走族という感じではない。チャラチャラした大学生という印象

▶ 彼の父は製薬会社の社長で、英二は甘やかされて育った

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つまり、本作の中心人物は3人とも不良です。世を拗ねており、平然と罪を犯す。

また、3人とも不良グループのリーダー。当然、人望は厚い。頭だって悪くない。行動力もありそう。


とまぁ、一見するとこの3人には共通点が多いのですが……しかし、決定的に異なるところもあります。要するに、一口に「不良」「不良グループのリーダー」といっても、バリエーションがあるわけですね。

本記事では、彼ら3人の相違点に注目します。


【不良のタイプ①】次郎の場合


まずは、次郎

上述の通り、彼は暴力団「秋本組」の準構成員であり、正式な組員になることを望んでいます。

「オレはその内、必ず秋本組の幹部になる」(映画開始から10分34秒経った場面でのセリフ)
(「北神会」のメンバーに対して)「オレたち北神会は、いまや押しも押されもしない極道予備軍だ。あとは秋本組の盃をもらって、正式な組員になれる日を待つだけだ。いいか、オレたちは極道でしか男になれねぇってことを忘れるんじゃねぇぞ!」(映画開始から19分21秒経った場面でのセリフ)


つまり、次郎は「暴力団 = 裏社会の支配階級」に入り込み、その中でのし上がることを望んでいる……彼は「エスタブリッシュメントに依存するタイプの不良」と言えるでしょう。


※エスタブリッシュメント(establishment):「社会的に確立した体制」「支配階級」のこと。


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【不良のタイプ②】英二の場合


続いて、英二

上述の通り、彼の父は製薬会社の社長であり、英二はボンボンです。


▶ 警察に捕まっても、父にもみ消してもらう

▶ 「バイクを買うから100万円くれよ」 と父に小遣いをねだる

▶ 父から「遊んでばかりいないで真面目にやれ」と注意されれば、「勉強したってしなくたって、父さんの作った会社の社長になれる。そして、何億かの財産を継げる。こんな退屈なことはないよ」と舐めたことを言う


つまり英二は、「親に依存するタイプの不良」なのです。


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【不良のタイプ③】玲子の場合


3番目に、玲子

彼女は、「エスタブリッシュメント」にも「親」にも依存していません。むしろ、それらを嫌っている。


「エスタブリッシュメント」については、こんなことを言っています。

「あたしはね、誰にも頭を下げるのが嫌な女さ。組織に組み込まれるぐらいなら、アテネ団は解散するよ」(映画開始から10分41秒経った場面でのセリフ)


また「親」については、こんな発言があります。

「13の時、おふくろのセックスを見たんだ。動物みたいでさ……ショックだったよ。それでシンナーを覚えちゃって。ラリって友だちと公園にいる時、大学生にマワされたんだ」(映画開始から13分44秒経った場面でのセリフ)


さらに、「アテネ団」には団員が守るべきルール(「アテネ憲法」)があるのですが、その第2条は「団員が特定の男を持ったり、従属したり支配を受けることを厳禁する」

つまり彼女は、「男性」への依存も拒否しているのです。

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玲子は言います。

「この世の中は誰も助けてくれないんだ。自分だけが頼りなんだよ」(映画開始から50分02秒経った場面でのセリフ)
(秋本組の組員になりたいと吐露する次郎に対して)「弱虫!そんなに飼い犬になりたいのかい?いいじゃないか、野良犬で!」「(アテネ団には)野良犬であることを自分から選んだ雌犬がいっぱいいるよ」(映画開始から1時間9分6秒経った場面でのセリフ)


玲子(や「アテネ団」の団員)は、「世の中(エスタブリッシュメント、親、男性 etc.)」を信用していません。

彼女らが信じているのは、「自分(や自分と似た境遇にいる団員)」のみなのです。


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最後まで生き残ったのは……?


本作の終盤、物語は大きく動きます。彼ら3人がどのような結末を迎えたのか、ご紹介しましょう。


<【結末①】次郎の場合>

次郎は、ひょんなことから秋本組の怒りを買ってしまいます。「秋本組の正式な組員になる」という彼の夢はもう叶いそうにない。

次郎はショックを受け、嗚咽を漏らしました「オレはどうしたらいいんだ!」「オレは這い出してぇんだ、ゴミだめの中からよぉ!」。

泣くなよ、次郎……情けないぞ!不良なら不良らしく、最後までツッパれよ!


その後、彼は玲子に励まされ、自分を使い捨てにした秋本組への復讐を決意。

そして復讐の最中にドスで斬られ、彼は死亡(!)します


<【結末②】英二の場合>

ある日、英二は秋本組に拉致・監禁されます。

秋本組の狙いは、覚醒剤の原料となる薬品です。英二の父は製薬会社の社長ですからね、「息子を返してほしければ、身代金代わりに薬品を用意しろ!」というわけです。

秋本組に捕まり、ドスやら拳銃やらで脅された英二は悲鳴を上げました「助けてくれ、オヤジー!助けてくれー!助けてー!助けてー!」。

情けない声を出すなよ、英二!不良なら不良らしく、最後までツッパれよ!


その後、英二は無事解放されます。

そして玲子や次郎と共に秋本組への復讐に乗り出し、復讐の最中に事故死(!)を遂げます。


<【結末③】玲子の場合>

玲子は、ひょんなことから秋本組に狙われるようになります。

「やられる前にやってやらぁ!」ということで、彼女は次郎、英二と共に秋本組への攻撃を敢行する。


ここまで申し上げてきた通り、秋本組との戦いの中で次郎、英二は死亡します。しかし、玲子だけは無事生還する(!)。

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つまり、「依存する者(次郎、英二)」はことごとく死に、「自立する者(玲子)」だけが生き残ったわけですね。これ、なかなかどうしてメッセージ性に富んだ結末と言えるのではないでしょうか。


「一見似ているものの、じつは決定的に異なる部分を持つキャラ」を登場させ、彼らの相違が浮き彫りになるような物語を展開する……このテクニック、みなさんもぜひ試してみてくださいねー!!


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(担当:三葉)

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