隙あらば百合!でもやっぱり主人公カップルが最高だと思う!!|【第12局:目醒め】「咲-Saki-」に学ぶ
※引き続き、アニメ「咲-Saki-」を分析します。本記事で取り上げるのは第12話。第11話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!
分析対象
あらすじ
分析メモ
■1:美穂子と久
本話冒頭、美穂子は中学時代を回想する。そこで、美穂子と久の出会いが描かれるのだが……これがじつに魅力的なのだ!
以下、特に魅力的なポイントを列挙してみよう。
・Point 1:久は制服を着崩しており(第1ボタンが開いている、ネクタイもぐずぐず、前髪も乱れている)、<熟練のギャンブラー感>が漂っている。女子中学生とは思えぬ雰囲気でカッコいい!
・Point 2:久は「あなたの右目」と言った後、黙って美穂子の脇を通過。そして間もなく立ち止まり、チラッと振り返って「きれいね」。このキザったらしい言動よ!ギャンブラー感漂う久だからこそ様になっている。
・Point 3:美穂子は、この時点では右目(オッドアイ)にコンプレックスを抱いていたようだ。この時「きれいね」と久が褒めてくれたことでコンプレックスは解消、いまでは堂々と開眼できるようになったと思われる。これ、<こりゃ美穂子が、久に対して名状しがたい感情(恋?憧れ?)を抱くのも納得だ>と感じるエピソ―ドである。
・Point 4:久に特別な感情を抱き続けてきた美穂子。一方、久は美穂子を覚えていない。戸惑った顔をしている。「この人、何で私を見てるんだろ?」なんて考えているに違いない。嗚呼、ひどい女である!天然ジゴロというべきか。しかし……このジゴロ感が、また久っぽくていいのだ。
■2:透華の善性
<1>
続いて、【衣が泣きながら控室にやってくるシーン】に注目したい。
衣は和のぬいぐるみを持っている。そして、それが和のぬいぐるみだと透華はすぐに気づく。
……さて、興味深いのはこの後の透華の行動である。
<2>
透華にとっては、<ぬいぐるみ = 間もなく対決する強敵(和)の秘密道具>だ。
邪険に扱い、「しめしめ。これで奴は力を発揮できなくなるぞ」とほくそ笑んだっていいはずだ。少なくとも、そんな悪魔のささやきが聞こえてきて「どっ、どうしよう……」と逡巡したって不思議はない。いや、それが正常な人間の反応と言えると思う。
ところが……透華は違う!彼女は間髪入れずに執事を呼びつけ修繕を命じるのだ。一瞬たりとも迷ったりはしない。
<3>
これ、透華という人間の善性が伝わってくる名シーンだと思う。
透華は高飛車なお嬢様で、しかもいちいちガキっぽい。まったく困った少女である。が、しかし。その本質は絶対的な善!
龍門渕の面々はそれを理解しているのだろう。だから、ぶつくさ言いながらも透華につき従うのだ。
■3:衣はどのようなキャラなのか?
第9話の終盤以降、衣がどのようなキャラなのか少しずつ明かされてきた。
ここまでの描写を総合すると、どうやら【衣 = <恐るべき人外キャラ>と<かわいらしい幼女キャラ>という2つの側面を持つ少女】と理解できそうだ。
▶ ①恐るべき人外キャラ
・セリフがいちいち大げさで奇妙(本話では「莫逆の友となるか、贄か供御となるか」と発言)
・透華の家の別館に幽閉されていた
・透華の父曰く「あれは理解の遥か外にいる」
▶ ②かわいらしい幼女キャラ
・やたら小柄
・子どもの如く喜怒哀楽が激しい
・「和に褒めてもらいたい、友だちになりたい」と考える
■4:一の過去、そして未来
<1>
本話では、前話に引き続き、一にスポットライトが当てられている。
前話では、彼女の<過去>が語られた。そして本話には、その続きが描かれている。しかし、本話で語られるのは<過去>だけではない。<未来(鎖を外さないという選択)>も描かれている。
<2>
さて、まずは前話と本話で明かされた<一の過去>を整理しておこう。大雑把にまとめると……
・Step 1:一がイカサマを行う。イカサマがばれ、彼女は麻雀から離れた
・Step 2:しばらく後、透華が一を勧誘する「あなたはイカサマなんてしなくても素晴らしい打ち手ですわ」「私、イカサマ抜きのあなたがほしいんですもの」。そう、透華はありのままの一を肯定してくれたのだ!
・Step 3:一は、透華のその言葉に救われる
・Step 4:一は透華(高飛車お嬢様で、多分に子供っぽい)に振り回されるようにして、再び麻雀を始める。龍門渕の仲間とも出会う
・Step 5:そしていま、一は再び大舞台で麻雀を打てるようになった。素晴らしい仲間と共に。もちろんイカサマなぞせずに
<3>
一は透華に感謝しているに違いない。「僕を見つけてくれてありがとう。僕に麻雀や仲間を与えてくれてありがとう」と。
当然、一は透華のことが大好きだ。アホなお嬢様だが、そんなところも愛おしい。彼女と一緒にいたい。
だから、一は手錠をつけ続けるという未来を選択するのだ。
すなわち……透華が微笑んだ「その手錠はもういらないかもしれませんわね」。しかし一は、「この鎖がなくなると、透華が遠くなっちゃうように感じるんだ」。
■5:一と透華の関係
上述の通り、一は鎖をつけ続けるという選択をした。彼女曰く「この鎖がなくなると、透華が遠くなっちゃうように感じるんだ」。
で、ここで注目したいのはその後の透華のリアクションである。そう、透華は一の言葉に赤面し、取り乱すのだ。この時の透華は、<大好きな人から愛を告白されて激しく動揺する少女>にしか見えない(隙あらば百合!)。
これ、要するに<一攻め、透華誘い受け>である。
高飛車お嬢様の透華が一の言葉に取り乱す……グッとくるものがある。いやぁ、素晴らしいですね♥
■6:さすがは主人公!
<1>
本話の終盤、ついに和の出番がやってきた。和が副将戦に向かう。そんな彼女の前に現れたのは……そう、咲だ!
咲は第10話の前半で仮眠を取り始め、第11話はずっと眠りっぱなしだった。しかしいま、彼女は目覚めた!そして、試合前の和を激励すべく猛ダッシュ。階段の手すりを大ジャンプで飛び越え、和のもとに駆けつけた。
<2>
咲が登場する直前、和はメランコリックになっていた。彼女は咲に見送ってもらえないこと、咲に観戦してもらえないことを寂しがっていた。
それが咲の登場で一変した。和は途端に不敵な笑みを浮かべ、拳を突き上げたのだ!
安直と言えばこれほど安直なシーンはないが、しかしその安直さがいいのである。
多くの鑑賞者が「<久と美穂子>もいいけれど……<透華と一>もいいけれど……でもやっぱり<咲と和>だよね!!」と感じたであろう激アツシーンである。
主人公カップルたるもの、こうでなくては!
■7:ハラハラドキドキの物語
<1>
本話では、一部のキャラはグッとハッピーになった。一方、アンハッピーになったキャラもいる。
具体的には以下の通り。
▶ ハッピーになったキャラ
・久:部長としての役割をきっちり果たし、和に希望を繋いだ
・和:ぬいぐるみが帰ってきた/咲から激励を受けた
・一:見事に戦い抜いた。
・透華:一と百合百合。
▶アンハッピーになったキャラ
・美穂子:久に気づいてもらえなかった/久に特別な感情を抱きつつも、チームのために久と戦う術を星夏に伝授した
・星夏:久に大敗
・衣:和にぬいぐるみを返したが、友だちにはなれなかった
<2>
本話は、鑑賞者目線でいえば【○○が嬉しそうに微笑む → それを見て、私たち鑑賞者もハッピーになる → ところが次のシーンでは××がメランコリックな表情を浮かべる → 私たち鑑賞者の心も重くなる】というアップダウンの繰り返しだ。
そして本話の特徴は、このアップダウンの激しさにあると思う。<ハッピーになったキャラ>と<アンハッピーになったキャラ>が間断なく登場するのだ。
要するに【アップダウンの激しい物語 = ハラハラドキドキが続く = 退屈する暇がない!】。
鑑賞者を飽きさせぬ見事な構成である。
■8:美穂子は聖母である
<1>
美穂子は聖母キャラである。
彼女は常に他人のために動く。風越女子の後輩部員にはもちろん、他の学校の生徒(例えば優希)にも親切にふるまう。私利私欲なぞは持ち合わせていないようだ。
第7話以降、折に触れて美穂子のそんな性質が描かれてきた。
<2>
ところが、だ。
本話の冒頭で、彼女は欲望を露わにする。すなわち「久にもう1度右目を褒めてもらいたい」と願うのだ。
普段は無欲な聖母だからこそ、この願いは重い。彼女がどれだけ強く久を欲しているか、ひしひしと伝わってくる。
<3>
ところが、美穂子の願いは叶わない。何しろ、久は美穂子を覚えていないのだ。嗚呼、聖母が報われぬとは、この世界はなんと残酷なのか。美穂子がかわいそうだ!
だがしかし……<たった1つの願いすら叶わない>というこの報われなさが、いかにも美穂子という感じがしないだろうか。美穂子は、報われなければ報われぬほどに輝きを増すキャラだと思う。
続きはこちら!
関連記事
・この<王道感>溢れるオープニングよ!!|【第1局:出会い】「咲-Saki-」に学ぶ
・主人公が覚醒するには、<強く美しいライバル>と<鋭い観察眼を持つ先輩キャラ>が必要!!|【第2局:勝負】「咲-Saki-」に学ぶ
・説教が始まるかと思いきや百合展開!!|【第3局:対立】「咲-Saki-」に学ぶ
・浮かれるな!現実を見ろ!地に足をつけろ!……そして強化合宿へ|【第4局:翻弄】「咲-Saki-」に学ぶ
・いま、ついに、主人公たちの足並みが揃った!!|【第5局:合宿】「咲-Saki-」に学ぶ
・鑑賞者に今後の展開を予想させ、期待を膨らませ、「あー、早く続きを見たい!」とワクワクさせるテクニック!!|【第6局:開幕】「咲-Saki-」に学ぶ
・風越女子と福路美穂子の<ギャップ>の魅力♥|【第7局:伝統】「咲-Saki-」に学ぶ
・<百合>と<ちょいエロ>を使って、重すぎず軽すぎない絶妙なバランスの物語を作る!!|【第8局:前夜】「咲-Saki-」に学ぶ
・構成の妙!鑑賞者をミスリードしまくれ!!|【第9局:開眼】「咲-Saki-」に学ぶ
・鑑賞者が思わず<下世話な妄想>を膨らませてしまう展開や演出をぶちこむ!!|【第10局:初心者】「咲-Saki-」に学ぶ
・久はジョセフ、ネテロ、カイトに匹敵する曲者キャラである!!|【第11局:悪戯】「咲-Saki-」に学ぶ
---🌞---
関連
---🌞---
最新情報はTwitterで!
---🌞---
最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)
最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!