アニメ「咲-Saki-」第14話を7つの視点から分析する👀
※引き続き、アニメ「咲-Saki-」を分析します。本記事で取り上げるのは第14話。第13話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!
分析対象
あらすじ
【Point①】透華の覚醒はまさに王道的な展開である
<1>
本話冒頭、透華が覚醒する。
ここでは彼女の覚醒シーンをざっくり整理してみよう。すなわち……
・Step 1:「目立ちたい」という欲望が一定値を超える
・Step 2:堅実で合理的な麻雀を止め、豪快な麻雀を打ち始める
・Step 3:衣を彷彿とさせる豪運によって一挙に流れを変える
<2>
こうした【堅実が売りのキャラが、ここぞという時に新しいスタイルで戦い始める】というストーリーは、スポーツものなどで往々にして見かける王道的展開と言えるだろう。
例えば「テニプリ」の乾貞治はデータテニスを得意とする知性派だが、彼は柳蓮二(幼馴染にして最強のライバル)との戦いでこう宣言した。「俺はたったいまからデータを捨てる!」と。
【Point②】透華が最も重視していることは何か?
<1>
和と透華は共に、堅実で合理的な麻雀を得意とするデジタル派である。ところが、2人の<覚醒>は大きく異なっている。
・和の覚醒:堅実で合理的な麻雀を極め、その極限に至る
・透華の覚醒:堅実で合理的な麻雀を捨て、豪運で勝利を引き寄せる
<2>
ところで……<堅実で合理的な麻雀を捨てる>というと、自分のスタイルを崩してしまったように見える。そして「スタイルを崩すだなんて無節操だ!恥知らずめ!」と感じる人もいるかもしれない。
しかし、それは誤解だ。
<3>
本話で明らかになったのは、【<透華のスタイル = 堅実で合理的な麻雀>ではなかった】ということである。
そう、じつは透華は<堅実で合理的な麻雀を打つこと>を大して重視していなかったのだ(!)。
彼女にとっては、もっと遥かに重要なことがある。ずばり、目立つことだ。
透華ならきっとこう言うだろう。「目立つためなら、堅実で合理的な麻雀なんていくらでも捨てましてよ!」と。
つまり、透華は自分のスタイルを崩したのではない。むしろ、徹底してスタイルを貫いているのだ。
目立つためなら何だってする!じつに潔くて格好いいではないか。
<4>
以上を踏まえて整理すると……和と透華の戦いは【堅実で合理的な麻雀を極めた少女 v.s 堅実で合理的な麻雀を捨てた少女】ではない。
正しくは、【堅実で合理的な麻雀を極めた少女 v.s 究極の目立ちたがり屋少女】なのだ。
【Point③】桃子の登場シーンは強烈
<1>
本話の中心人物は桃子。
じつは彼女は、ずっと前から作中に登場していた。初登場はなんと第3話だ。しかしこれまでは【画面の端っこに足だけ映っている】、【じっくり見るとゆみの背後に桃子が立っているのが確認できる】といったステルスモードでの登場ばかりだった。
顔が映るのは本話が初めてである。
<2>
桃子の登場シーンを整理してみよう。
・Step 0(前話):和が覚醒 → 圧倒的な強さを発揮する
・Step 1:透華も覚醒 → その豪運で皆を驚かせる。「まさか和よりも上なのか!?」という超人的な力だ
・Step 2:そんな透華を手玉に取ってみせたのが、そう、桃子!(透華の捨て牌でロンし、透華を愕然とさせる)
ご覧の通り、桃子の登場シーンは強烈だ。何しろ、<覚醒した和よりも強いかもしれない透華>を手玉に取って見せるのだから。
【Point④】<目立ちたい v.s 目立たない>という対比
上述の通り、透華は目立ちたがり屋である。そして、「目立ちたい」という欲望がきっかけで覚醒する。
一方、桃子は存在感の薄さを武器とするキャラだ。自分自身や、自身の捨て牌の存在感を消すことで、相手のミスを誘発する。
つまり、透華と桃子の戦いは【目立ちたい v.s 目立たない】。
そこに和を加えると、【堅実で合理的な麻雀を極めた少女 v.s 究極の目立ちたがり屋少女 v.s 究極の目立たない少女】ということになる。
【Point⑤】<目立ちたいキャラ>が活躍するエピソードと見せかけて、実際に活躍するのは<目立たないキャラ>
<1>
前話~本話の構成を大雑把に整理してみよう。
すなわち……
・Step 1:前話の終盤で透華が覚醒する
・Step 2:「次は透華(目立ちたいキャラ)が大活躍するエピソードですよ!」と示唆して終わる
・Step 3:ところが、本話で実際に活躍するのは桃子。そう、<目立たないキャラ>が活躍するエピソードだったのだ。鑑賞者はびっくり仰天
じつに巧みな構成である。
<2>
なお、この構成の問題を強いてあげるとすれば、それは「透華があまりにもかわいそうだ」という点だろう。
何しろ【和にコテンパンにやられる → ようやく覚醒 → (ここから本話) → 大きな手であがり、有頂天になる → その直後、桃子の餌食になる →唖然!驚愕!狼狽!】という展開なのだ。
しかしこれ、じつは大きな問題にはなっていない。
なぜならば……透華といえば自信満々の高飛車お嬢様。そしてオーバーリアクション。ゆえに、その不憫さがギャグになっている。そこに悲壮感はないのだ。
【Point⑥】王子様とお姫様
本話では、<桃子とゆみの関係>がじっくり描かれている。
ところでこの2人の関係は、一と透華によく似ているように思う。
というのも……
・Step 1:桃子&一は自分に価値を感じられず、人生を諦めていた。
・Step 2:そんな2人の前に颯爽と現れ、「きみが必要だ!きみには価値がある!」と訴えかけたゆみ&透華。
・Step 3:かくして桃子&一は、ゆみ&透華に特別な感情(感謝 + 恋愛感情と思われる)を抱いた。
・Step 4:一方、ゆみ&透華だって満更ではない。
つまり、【ゆみ&透華 = 王子様/桃子&一 = お姫様】なのだ。
【Point⑦】非現実的な設定について真面目に語り合う人びと
桃子にまつわる会話が面白い。
いくつか例をあげてみよう。
▶ 例1
ゆみが何もない空間に向かって 桃、いるか?
桃子 ここっす。
桃子がどこからともなく出現する。
ゆみ そこにいたか。
▶ 例2
ゆみ 遅かったな。
桃子 ふぅ。さすがに決勝は手ごわいっすね。消えるのに時間がかかりました。
▶ 例3
智美 桃はどうだった?
ゆみ そろそろ消えるそうだ。
智美はホッとした感じで やっとかぁ!
この【非現実的な設定(桃子はステルス能力を発揮して麻雀を打つ!)について真面目に語り合う人びと】というシチュエーションが最高である。
「いやいや、人間は消えたりしねぇよ(笑)!」とつっこまざるを得ない。
続きはこちら!
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