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「武術の町」の魅力|映画「イップ・マン 序章」に学ぶ

冒頭の字幕「仏山は南派武術の発祥地。修道場の武館が立ち並ぶ武術の里である」

映画「イップ・マン 序章」


本記事では、映画「イップ・マン 序章」を取り上げます。


◆「武術の町」とは何か?

映画「イップ・マン 序章」の舞台は、中国の「仏山」という町だ。

これがなかなかどうして面白い町なので詳しくご紹介したい。


・仏山は、中国武術のメッカ。「武館街」と呼ばれるエリアには、所狭しと武館(道場)が立ち並んでいる

・各武館に武館主(師範)がおり、異なる武術・流派を教えている。つまり、武館同士はライバル関係にある(これについては後ほど詳しく触れる)。

・【仏山は多数の武館が立ち並ぶ中国武術のメッカである → ということで、中国各地から武術を志す者が集まってくる → 「弟子を集めやすい、つまりは武館の経営が成り立つ」という理由で、各地から武術の達人が集まってくる。そして続々と武館をオープン → 仏山はより一層盛り上がる】という好循環が発生しているようだ。


◆Point1:武館同士の関係

・武館同士は、「同じ地域に武館を構える仲間」「武の道を究めんとする仲間」である。

・だがそれと同時に、彼らは「弟子を奪い合う商売敵」でもある。ゆえに新たな武館がオープンするのを見て、「ちっ。また増えるのか」と顔をしかめる武館主も少なくないようだ。武館主同士は表面的には礼儀正しく付き合っているようだが、心の中では「ふん。ザコが!」「ケッ!俺の方が強いさ」「やれやれ。あのダサい構えは何だよ」なんてことを考えているのではなかろうか。

・なお、「武館Aの弟子だった者がそこを止め、武館Bの弟子になる」ということは可能なようだ。作中では、林というキャラが「また鞍替えしたのか」と呆れられるシーンがある。


◆Point2:武館主同士の関係

・武術の達人が多数集まっていると聞けば、「ほぉ!で、誰が最強なの?」と訊きたくなるのが人情というものだ。しかし、当の武館主たちからすれば、それは曖昧にしておきたいトピックだろう。だって、たいていの人は最強の師匠のもとで学びたいと考える。つまり、「最強」の称号を得た1人以外は全員が失業してしまう危険がある。

・というわけで、多数の武術家が集まる町ではあるが、天下一武道会のようなイベントが開催されることはないようだ。

・しかし、仏山には1つの噂がある。「葉問(イップ・マン)こそが最強の武術家かもしれない」という噂だ。ちなみに……この「葉問こそが最強かもしれないと噂されている状況」は、多くの武館主たちにとって都合がいいのではないかと思う。なぜならば、葉問は武術の達人ではあるものの、武館を開いていないのだ。つまり、武館主たちの商売敵ではない。そんな彼を<最強かもね>という位置に据えておけば、そう、とりあえず食いっぱぐれる心配はない。ゆえに武館主たちはこの噂を打ち消したりはせず、敢えて放置しているのではないかと思う。


◆Point3:葉問

・葉問は資産家であり、妻子と共に裕福に暮らしている。前述の通り、彼は武館を開いておらず、弟子はいない

・物語序盤、【廖(仏山に新たに武館を開いた武術の達人)が葉問に挑戦する】というエピソードが描かれる。廖は、「最強と名高い葉問に勝てば俺の武名が上がる。弟子を集めやすくなるはずだ!」と考えているのである。しかし……葉問はメチャクチャに強い。廖はあっさり敗北してしまう。そう、葉問は噂の通り最強だったのだ!

「仏山の武館主たちを片っ端からぶちのめして、俺こそが最強だと証明してやろう。その後で武館を開けば、弟子がわんさか集まるに違いない」と野心的な企みを抱いた者もいる。というキャラだ。金は確かに強い。計画通り、武館主を次々とぶちのめしていった。仏山の人びとは慌てる。このままでは、中国武術のメッカの名折れだ!というわけで人びとは葉問に助けを求めた「仏山の名誉を守るためにあいつと戦ってくれ!」。かくして葉問が戦い……余裕で勝利。葉問は町の英雄になった。


◆Point4:武館街の中心にある広場

・広場といっても、そう広い場所ではない。ところがそこにたくさんの武館主と弟子たちが集まり、パンチやキックの鍛錬に励むのである。大変な人口密度だ!

・何もそんなに密集して修行しなくてもいいと思うのだが……たぶんこれ、町の中心部で修行することが武館のステータスなのだと思う。もしくは、もう少し広いところで修行しようと町外れに移動したりしようものなら、「やつらは逃げやがった!ザコ拳法め!」と陰口を叩かれるリスクがあるのかもしれない。とまぁそんな訳で、彼らは今日も人ごみの中で修行に励むのである。


◆参考

映画「イップ・マン 序章」について知りたい方は、以下の記事をどうぞ🍎

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