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アニメ「咲-Saki-」第17話を5つの視点から分析する👀

※引き続き、アニメ「咲-Saki-」を分析します。本記事で取り上げるのは第17話。第16話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!


分析対象


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あらすじ


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【ポイント①】絶望と希望を繰り返す構成


<1>

まずは、本話のストーリーをざっくり整理してみよう。


・Step 0(前話:衣が無双をかます。咲ら3人はコテンパンにやられる。

・Step 1:休憩時間。咲ら3人はそれぞれのパートナーと過ごし、英気を養う。特に咲。彼女は愛する和に激励され、目に殺気が宿る。

・Step 2:後半開始。相変わらず衣の無双だ。

・Step 3:しかし……咲の目は死んでいない!さらに、赤いオーラが立ち昇る!

・Step 4:だが、その後も衣の無双が続く。

・Step 5:衣が点数調整して、咲らの心を折ろうとする。状況は最悪だ(①衣の尋常ならざる強さ、②衣の底意地の悪さ、③あまりにも大きすぎる点差、④咲は得意技を封じられた、⑤対戦相手たる華菜をかばってやる必要もある)。

・Step 6:そんな中、咲が予想外の手を打った!さすがの衣もギョッとする。


<2>

さらに、もっとギュギュっとコンパクトにまとめてみよう。


・Step 0(前話:衣が無双して絶望

・Step 1:咲らが百合成分を補給。「ここから逆転か?」と希望が生まれる。

・Step 2:でも、やっぱり衣が無双して絶望

・Step 3:咲の覚醒っぽい演出で、わずかな希望が生まれる。

・Step 4:しかし、またもや衣が無双して絶望

・Step 5:さらに衣の点数調整が明らかになり、すべての希望が失われる

・Step 6:と思いきや、咲が覚醒!希望!!


<3>

ここまで抽象化すれば、もう明確だ。

そう!本話は【絶望 → わずかな希望 → 絶望】の連続、「次こそいけるか!?……あー、やっぱりダメか」の繰り返しなのだ。

鑑賞者をハラハラドキドキさせる絶妙な構成と言えるだろう。


【ポイント②】ゆみと華菜はなぜ同じ役であがったのか?


<1>

まず思い出していただきたいのは、第15話の【大将戦が始まる → 咲がスタートダッシュ。嶺上開花の連チャンだ! → ノリノリの咲は、3度目の嶺上開花を放とうとする → しかしその直前、ゆみがあがった】というシーンである。

この時、ゆみは槍槓(チャンカン)であがる


<2>

続いては本話の終盤、【咲が華菜をあがらせてやったシーン】にご注目いただきたい。この時、華菜はどんな役であがったのか?

そう、ここでも槍槓だ


<3>

華菜は、なぜ槍槓であがったのか?なぜ第15話と同じ役なのか?ただの偶然……のはずがない!


制作者の視点から事情を整理してみよう。

・【第15話】ゆみが槍槓であがるシーン:これは、単に咲がやられるシーンではない。<嶺上開花 = 成立直前に槍槓で妨害されやすい>と鑑賞者に示唆するシーンだったのだ。

・【本話】華菜が槍槓であがるシーン:これは、単に咲があがらせてやるシーンではない。咲が<嶺上開花 = 成立直前に槍槓で妨害されやすい>という性質を逆手にとって見事に立ち回るシーン、咲の強さを示すシーンだったのだ。


つまり、第15話は本話の伏線なのである。

何しろ、第15話の示唆(嶺上開花 = 成立直前に槍槓で妨害されやすい)があるからこそ、本話の咲の立ち回りがいかに巧みなものか理解できるのだから。

よく練られた構成ですよねー!


【ポイント③】百合成分を補給せよ!


<1>

続いては【休憩時間、咲らがそれぞれのパートナーと過ごし、英気を養うシーン】に注目してみよう。


これ、要するに<百合成分補給シーン>である。

咲は和と、華菜は美穂子と、そしてゆみは桃子と言葉を交わし、時に肉体的に接触することで、英気を養っているのだ。


<2>

特に印象深いのは、咲と和である。主役カップルの面目躍如、2人のやりとりはたっぷり描かれている。


ここでは、和の言動をざっくりとまとめてみよう。

・【1】「あなたの強さはこんなものではないはずだ!」と激励する:彼女は咲にボコボコにやられた経験がある(第1話 etc.)。その上、誰よりも咲を愛し、咲を目で追ってきた。だから咲のことはよく知っているのだ。

・【2】手を握る:会話の最中に和は咲の手を掴み、ぐっと引き寄せる。かくして咲の手が和の胸に触れる。咲は赤面する。……これ、<和が自分の胸を触らせたように見える>という有名なシーンだ。

・【3】小指をからめる第3話(咲と和が互いを認め合い、「一緒に全国に行こう」と共通の目標を立てたシーン)、第8話(決勝戦前夜、2人が改めて県予選突破を誓ったシーン)に続いて、3度目の指切りである。2人はここぞという時に指切りするのだ。

・【4】手を繋いで対局室に向かう


こうした和の言葉、和との接触を通じて、咲は過去のあれこれを思い出し、そして覚醒に至る!


<3>

なお、咲が過去を思い出すシーンだが、そこに登場するのは和だけ。久らは一切映らない!


多くの鑑賞者は「えー!他の面々のことは思い出さないの!?だって、久のアドバイスはかなり役立ったじゃん!優希やまことの交流だって大切な思い出だよね?藤田プロとの対局も糧になったはずだよね?」と仰天したと思うが……まぁ、これぞ「咲-Saki-」と感じる演出であることは間違いない

「さすがは『咲-Saki-』!百合百合である!(笑)」と噴き出さずにはいられない。


【ポイント④】衣の孤独


<1>

【休憩時間、咲らがそれぞれのパートナーと過ごして英気を養うシーン】についてもう1つ。

上述の通り、咲のもとには和が、華菜のもとには美穂子が、そしてゆみのもとには桃子がやってくる。


では、衣は?衣のもとには誰がやってきた?

正解は、藤田プロ!

つまり……透華らはやってこないのだ。


<2>

これ、<透華らが衣を大切に想っていない>ということではあるまい。衣は圧勝している。ゆえに激励なぞ不要なのだろう。


が、しかし。

<強すぎるがゆえに孤独>という衣の立ち位置がくっきり浮かび上がる象徴的なシーンだと思う。


【ポイント⑤】嗚呼、おトイレ!!


<1>

前話序盤(大将戦前半の東三局)、衣が強烈なオーラを放った時に、咲は泣きべそをかいた。そしてこう言った「おトイレ行っとけばよかったよぉ」。


「いやいやいや!あんた高校生でしょ?『おトイレ』って!」とツッコまずにはいられぬシーンだ。

なんとまぁ、あざといのか!じつにかわいらしいではないか!


<2>

そして、この<おトイレ>ネタは本話でも継続されている。

まずは序盤、咲は「おっ、おトイレ行ってきます!」と言って対局室を後にした


対戦相手にわざわざ「おトイレ」を宣言しなくてもいいと思うのだが……うーむ!おっちょこちょいである!かわいいな♥


<3>

その後、咲は迷子になる。

嗚呼、高1の女子が!おトイレを探して!迷子になる!そんなシーンを!大切な大将戦の合間に描く!!


多くの鑑賞者は「制作者は徹底的に<おトイレ>ネタを描くつもりだな?その意気や良し!」と感服したに違いない。

少なくとも私は感服した。本作に匹敵し得る<おトイレアニメ>といえば、「妹ちょ。」(特に第1~2話)くらいなものではなかろうか。


<4>

迷子の咲。そこに和がやってくる。そして和は咲を激励した(この辺りの事情は上述した通りだ)。

で、やる気を取り戻した咲。和はそんな咲の手を掴んで「さぁ、対局室に急ぎましょう!」。


しかし……咲は慌てる「私、まだおトイレ行ってないよ!」。

出ました、<おトイレ>!


和が呆れる「試合前に行かなかったんですか?」。

咲は顔を赤らめてもじもじしながら、「だっ、だって……ずっと原村さんの試合を見ていたから」。

咲の言葉に、和も顔を赤らめた。

和は「とっ、とにかく急いでいきましょう!」。かくして2人は顔を真っ赤にしたまま、手を繋いで走り出した。


走ったら漏れてしまうのではないかと心配になるのだが……まぁそれはともかくとして。このシーン、<おトイレ>と百合の複合技である!すごい!ニヤニヤせずにはいられない。



続きはこちら


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(担当:三葉)

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