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「時限爆弾のタイマーの残り時間がグングン減っていく!!」的なテクニックを使おう!|『汚名』に学ぶテクニック

名作映画を研究して、創作に活かそう!

本記事では、「汚名」に【「迫りくる危機」を鑑賞者・読者に伝え、ハラハラドキドキしてもらう方法を学びます。

※「汚名」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

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鑑賞者・読者に「ハラハラドキドキ」してもらえないと、そこでおしまい


物語を作る時には、「はて。このストーリー/エピソード/シーンで、鑑賞者・読者はハラハラドキドキしてくれるだろうか?」と自問自答することが重要です。

鑑賞者・読者は、「この先どうなるのだろう!?まさか……!」「主人公は生き残れるのか!?」といった【ハラハラドキドキ】があるからこそ、ストーリーについてきてくれる。

ゆえに、ラブストーリーだろうと、ミステリだろうと、ホラーだろうと、ファンタジーだろうと、どんな物語にもハラハラドキドキが必要なのです。


逆に言えば、ハラハラドキドキのない物語は糞になりやすい。何しろ、「ハラハラドキドキがない」というのは、要するに「先の展開が読めてしまう」ということですからね。

鑑賞者・読者は早々に飽きてしまうでしょう。


鑑賞者・読者に「ハラハラドキドキ」してもらう方法


では、どうすれば鑑賞者・読者にハラハラドキドキしてもらえるのでしょうか?


ここでは、カール・イグレシアス(Karl Iglesias/アメリカの脚本家、脚本研究家)にアドバイスをもらいましょう。

彼は言う「鑑賞者・読者にハラハラドキドキしてもらうには、『3つのステップ』が必要不可欠!」

※以下、「『感情』から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方」(フィルムアート社)を参考にしています。


【ステップ①】鑑賞者・読者が「無事でいてほしい」と願うキャラを作る

私たちは「好きなキャラ(共感できるキャラ、同情できるキャラ、憧れのキャラ etc.)」が窮地に立たされた時に、ハラハラドキドキするものです。それが「まったく興味を持てぬキャラ」や「憎たらしいキャラ」なら、ハラハラドキドキすることはありません。


【ステップ②】「いままさに危機が迫っている」ことを、鑑賞者・読者に知らせる

ある日突然、爆弾が爆発したとする。多くの人が仰天するでしょう。しかし、ハラハラドキドキすることはありません。また「爆弾が仕掛けられました!爆発するのは……1か月後です」と言われても、拍子抜けするだけでしょう。つまり私たちは、爆弾の爆発が刻一刻と迫っている時にハラハラドキドキするのです。ゆえに、「いままさに危機が迫っている」ことを鑑賞者・読者にしっかり理解してもらうことが重要です。


【ステップ③】「キャラが危機を乗り越えられる可能性 = 約50%」に調整する

私たちは、キャラが勝つか負けるかわからぬ時にハラハラドキドキするものです。勝ちが確定している場合、あるいは負けが確定している場合には、ハラハラドキドキすることはないでしょう。


……つまり、【①キャラへの好意】と【②「危機が迫っている」という知識】と【③「勝つか負けるかわからない」という不安】の3つが鑑賞者の中に揃った時に、ハラハラドキドキが生まれるというわけですね。

なるほどー!


「いままさに危機が迫っていること」をいかに鑑賞者・読者に知らせるか?


ここからは、いま申し上げた3つのステップの内、【②「危機が迫っている」という知識】に注目します。

すなわち……「いままさに危機が迫っている」ことを、いかに鑑賞者・読者に知らせるか?


1番簡単なのは、「セリフやナレーション(小説なら地の文)を使う方法」でしょう。「オイ、ヤバイぞ!急げ、急ぐんだ!危機が迫っているぞ!」といったキャラのセリフ。あるいは、「主人公には危機が迫っています。このままでは破滅です。超ヤバイです」なんてナレーション。

確かに危機が迫っていることは伝わってきますよね。

しかし……まぁ、相当に野暮ったい。じつにわざとらしく、興を削がれる。せっかくの緊迫感がぶち壊しです。これでは、鑑賞者・読者にハラハラドキドキしてもらうことは難しいでしょう。

もっとスマートに伝えるべし!……はて、どんな方法があり得るでしょうか?


おそらく世界で最もよく知られているのが、「時計を使って、迫りくる危機を伝える方法」でしょう。

例えば、

1:犯人が時限爆弾を仕掛ける。

2:主人公が必死に爆弾を探す。

3:爆発時刻が迫る中、ついに主人公が爆弾を発見。

4:急いで解体しようとする。ところが、赤いコードと青いコードのどちらを切ればいいのかわからない。もう時間がない!主人公は、意を決して赤いコードを切断。

5:かくして九死に一生を得た。

……というヤツ。「時限爆弾のタイマーの残り時間がグングン減っていく」のを見れば、誰だって「ヤバイ!危機が迫っているぞ!」と理解できるでしょう。


また、「スピードメーターを使って、迫りくる危機を伝える方法」もよく知られています。

▶ 犯人が、「時速80km以下になったら爆発する」という爆弾を新幹線に仕掛ける → 鑑賞者は「新幹線のスピードメーター」にハラハラドキドキ(映画「新幹線大爆破」)


▶ 犯人が、「時速50マイル(時速約80km)以下になったら爆発する」という爆弾をバスに仕掛ける → 鑑賞者は「バスのスピードメーター」にハラハラドキドキ(映画「スピード」)


「汚名」の場合


さて、ようやく本題です。

ここからは、映画「汚名」に登場する「迫りくる危機を伝える方法」をご紹介しましょう。

これがじつにユニークな方法なのです!


「汚名」のストーリーをざっくり整理すると……

1:ヒロイン(アメリカ政府の女スパイ)が、敵の秘密を探るべく、ターゲット(ナチスの残党の1人)に接近する。

2:ヒロインは、「ターゲット宅のワインボトルに何か秘密があるらしい」と突き止める。

3:ヒロインは、隙を見てワイン貯蔵庫の鍵を盗み取る。

4:ある日、ターゲット宅でパーティが開催される。ヒロインと主人公(アメリカ政府の情報機関に所属する捜査官)は、隙を見てワイン貯蔵庫に潜入しようとして……ここがポイント!


パーティには多くの客が集まっています。そして、事前に用意されていたワインはグングン減っていく。パーティ会場のワインがなくなれば……誰かがワイン貯蔵庫に向かうことになるでしょう。

そうなれば、鍵がなくなっていることがバレる。また、敵はヒロインや主人公に疑惑の目を向けるかもしれない。

したがって……パーティ会場のワインが飲み尽くされる前に、ワイン貯蔵庫に潜入し、敵の秘密を明かすべし!


つまり「汚名」に使われているのは、「パーティ会場のワインボトルの残量で、迫りくる危機を伝える」という方法。鑑賞者は「パーティ会場のワインボトルがみるみる減っていくシーン」や、「参加者がぐびぐびワインを飲むシーン」を見て、ハラハラドキドキすることになります。

じつにユニークですよね!


みなさんも、鑑賞者・読者にハラハラドキドキしてもらうべく、ユニークな「迫りくる危機を伝える方法」を考えてみてくださいねー!


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▶ 「汚名」の「三幕構成」分析は、こちらの記事でどうぞ😁 → 【三幕構成の実例】汚名

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(担当:三葉)

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