神崎狛/Koma Kanzaki

心理と真理の交錯するところ。 神経と心霊が見せる夢。

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マガジン

  • NeuroNest

    • 15本

    脳と心の専門家が語る、ちょっと深くて濃い話。 疑似科学やインフルエンサーに惑わされず、「脳と心への理解を本当に深めたい人のためのマガジン」を目指してやっていきます。

  • 占い師の暇つぶし

    偶然と統計の結節点。託宣と錯覚の交差点。オカルトと科学の臨界点。

  • Museum of Museums

    博物館・美術館のレポをまとめています。 企画展からローカル博物館・美術館まで。 美術館巡りの好きな方や知的好奇心に溢れた方に、「きっかけ」をお裾分けできれば嬉しいです。

  • ハイド博士とジキル氏の奇妙な往復書簡

    • 27本

    それぞれの人格がそれぞれに書いた手記。 気楽な日記帳として、ゆるく続けていきます。

最近の記事

デキる人は何でもデキる?――知能研究が示す身も蓋もない現実

「優秀な人って何でも優秀だよね」 そんなことがしばしば言われます。 この裏返しとして、 「何をやってもデキない人っているよね」 という話もよく聞かれます。 こういうことを言うと、反論として 「いや、〇〇ではすごく優秀なのに、△△に関しては当たり前のことすら出来ない人だっているぞ」 という言いたくなる人もいるでしょう。 実はこの問題には、科学的な答えが出ています。 「ある分野で高い能力を示す人は、別の分野でも人並みよりも高い能力を示す傾向がある」 この事実は、科学的研

    • NeuroNest 2024年2月~7月記事まとめ

      「NeuroNest」も始動から半年が経ちました。 思いつくままに書き散らしてきましたが、ここらでちょっと半年分の記事を振り返ってみようと思います。 最初に人気記事ランキング、その後にカテゴリ別記事一覧を並べました。 読み逃してる記事で興味をそそられるものがあったら是非覗いてみて下さい。今のところ全記事無料です。 2024/2~7月 人気記事ランキング何の基準で数値化しようかなーっと迷いましたが、無難に「スキ数」でカウントすることにしました。 2024/2/1~7/

      • 見えない目に「この世ならざるもの」が映るわけ

        見えない目に、現実には存在しない「何か」が映ることがある。 そういう話を聞いたことがあるでしょうか。 こうした類型はフィクションのストーリーやキャラクターの中に多く見られますが、実は現実でもこうした報告は数多く存在します。 目の見えない人は、しばしば見えないはずの目で何かを「見る」ようです。 今回はそんなちょっと不思議な話を、医学の視点から紹介します。 ある生物学者とその祖父の話18世紀のスイスにシャルル・ボネ (Charles Bonnet)という人がいました。

        • ADHD治療薬は命も守っているかもしれない、という論文

          なかなか興味深い論文を見かけたので、今日はこれを紹介したいと思います。 簡単に言うと、ADHDに対する薬物療法は死亡リスクも下げるというお話。 ADHDって何?ADHD(注意欠陥/多動性障害)は、発達障害(DSM-5では神経発達症)の中でも特に頻度の高い症候群です。 近年のデータによれば、若年層で5.9%、成人では2.8%がADHDに該当するそうです(Faraone, 2021)。(※1) 上記の数字は世界全体での値なので、アメリカなどではもっと有症率が高いとも言われ

        デキる人は何でもデキる?――知能研究が示す身も蓋もない現実

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        記事

          これを食べれば認知症は防げる!

          などという甘言に惑わされると良いカモですよ。 ↑ 今日はこれだけでも覚えて帰って下さい。 「摂取すると認知症を予防できる食品」は、まだ見つかっていません。 しかし、「ほぼ確実に認知症のリスクを高める食事・生活習慣」は存在します。 現状で私たちが科学的になすべきことは、「ただ一つの正しい行いを選ぶこと」ではなく、「世の中に溢れているリスクのうち、避けられるものを避けていく」ことなのですね。 「これを食べれば大丈夫」という声に乗っかることは楽かもしれません。 でも、そ

          これを食べれば認知症は防げる!

          「知性を数値化したい」という人間の欲望

          SNSなど見ていると、IQ (知能指数/Intelligence quotient)という概念があまりに無批判かつ盲目的に使われているように感じます。 実際のところ、現在確立されている知能テストも、歴史的・文化的・政治的な影響を経てご都合的に今の形になっているものでしかありません。 しかも、その設計思想を辿ってみると、実はそんなに高度な能力を測ることを目的としたものでもないようです。 この記事では、「知能観」が歴史の中でどう成立してきたか、どのように現代的な知能テストが

          「知性を数値化したい」という人間の欲望

          食人部族とアルツハイマー病

          「人間を食べる部族が発症する、特殊な脳の病気がある」 ……という話を聞いたことがあるでしょうか。 それなりに有名な話なので、どこかで聞いたことがある人は多いかもしれません。 しかし、日本国内でもこの病気の発症があることはご存知でしょうか? さらに、その病気が「アルツハイマー病」の解明にも関わっている……となると、これはなかなか意外な話でしょう。 今回は「プリオン」というキーワードのもとに、「クールー病」から「アルツハイマー病」にまで至るお話をしたいと思います。 意

          食人部族とアルツハイマー病

          「吉原」を「歴史の闇に葬るべき卑しいもの」と決めつける人たちにこそ見てほしい。そこには「人間」がいる。【大吉原展レポ】

          このごろ「落語」をよく聞いております。 昔は通学中などによく聞いていたのですが、『あかね噺』を読んでいたら最近また聞きたくなったもので。 ところで古典落語には「遊女」や「遊郭」の話も数多くあります。 「考えてみると、自分はこういうものを『なんとなく』のイメージで想像してるけど、『江戸時代の人から見てどうだったのか』を教えてくれる書籍や教育に出会ったことがないな」と思っていたところ、今回の「大吉原展」の存在を知りました。 ちなみにこの企画展を巡っては開催前から炎上もあっ

          ¥0〜
          割引あり

          「吉原」を「歴史の闇に葬るべき卑しいもの」と決めつける人たちにこそ見てほしい。そこには「人間」がいる。【大吉原展レポ】

          新社会人ためのシンプルで有効なAI活用の提案

          最近、「学生や新社会人から、びっくりするようなメールが来ることがある」という声をしばしば聞きます。 (まぁ、実際には「最近」の出来事ではなく「昔からそういうもの」だったのかもしれませんが……) 私もつい最近まで(そして今でも)どちらかといえば「年輩の方にびっくりされるようなメール」を送る側だったので、どうしてこういう事態が起きるのかはそれなりに理解できる部分があります。 現在の学生は、メッセージアプリや音声での通話をすることはあっても、「メール」というツールをちゃんと使

          新社会人ためのシンプルで有効なAI活用の提案

          世にも珍しい「医原性アルツハイマー病」の報告

          「アルツハイマー病」という名を聞いたことがない人はいないでしょう。 しかし、「医療行為によって発生したアルツハイマー病」の事例があることはご存知でしょうか? しかもそれは、ヒトからヒトへと”伝染”したのではないか……と見られています。 今回紹介するのは、一見すると「単なる奇妙な症例報告」です。 しかし、実はそこにアルツハイマー病の本質とでも言うべき事実が隠れています。 この症例が示すアルツハイマー病の本質は、近年解禁された「アルツハイマー病治療薬」とも実は無関係では

          世にも珍しい「医原性アルツハイマー病」の報告

          教科書はどこまで正しいか?―「Gerstmann症候群」を題材に

          先日、荒神氏と話していた時のこと、 「知識領域によっては『教科書に載る話』と『研究や臨床における肌感覚』に非常に解離がある」という話が出ました。 こういう状況だと、「どの教科書にも載っていて、真面目な学生が必ず覚えてくる知識」が、「専門家はほとんど誰も真に受けていない話」だったり、「臨床家にとっては重箱の隅をつつくようなマイナー知識」だったりする……という事態が起きるわけですね。 「テストで点が取れること」自体にもそれなりに価値はあるのでそれはそれで良いのですが、「それが

          教科書はどこまで正しいか?―「Gerstmann症候群」を題材に

          人類は「アファンタジア」を正しく検出できるのか?

          前回の記事では、「心像 imagery」という概念を提示し、それが無い状態、すなわち「アファンタジア aphantasia」を紹介しました。 アファンタジアを一言で要約するなら、次のようになります。 「視覚心像を作れない状態」 そして、これが先天的に起こっている場合に「先天性アファンタジア」と呼ぶのでしたね。 これに対して、何かの病気や出来事によってアファンタジアに陥った場合には「後天性アファンタジア」と呼べます。 今回は、さらにここからもう一歩進んでいきます。

          人類は「アファンタジア」を正しく検出できるのか?

          私たちは何も考えずに「脳で物を考えている」と思い込んでいないか

          現代に生きる私たちの多くは、「脳」こそが「精神を司る臓器」であることを知っています。 しかし、これは歴史的に見ればそれはほど「アタリマエ」のことではありません。 そもそも私たちは「精神を司る臓器は脳である」という説を本当に理解しているのでしょうか? 「だって医者も科学者もみんなそう言っているから」という理由で「脳で物を考えている」などという教義を信じているとしたら、「精神の本体は心臓である」と信じていた人たちと本質的に何ら変わりませんよね。 「脳が精神を司る臓器」であ

          私たちは何も考えずに「脳で物を考えている」と思い込んでいないか

          「アファンタジアAphantasia」とは何なのか

          突然ですが、「キリン」を思い浮かべてみてください。 それがあなたの目の前にいると思って。 おそらくこの記事を読んでいる方のほとんどは、程度の差はあれど「キリンらしき動物の姿」を目の前にイメージすることが出来たかと思います。 キリンの長い首、長い脚、黄色と茶色の柄も、大体の人が思い浮かべられたでしょう。 しかし、こうした能力にはそれなりに大きな個人差が存在するようです。 これと関連して、「アファンタジア Aphantasia」という概念が近年注目を集めています。 ただ

          「アファンタジアAphantasia」とは何なのか

          20世紀の心理学・神経科学において最も有名になった症例の話

           「海馬と記憶」の関係は、現代を生きる私たちにとっては「常識」と言えるほどの位置づけになりました。  「おじいさん、朝ごはんはもう食べたでしょ」  これは典型的なアルツハイマー病の症状である「健忘(記憶障害)」を端的に表すやりとりです。  典型的なアルツハイマー型認知症では海馬の機能に障害が起こるため、新しく出来事を覚えることが出来なくなるわけです。  しかし、このような「記憶」に関する基本的な知識も、20世紀までは当然のことではありませんでした。  「記憶」について

          20世紀の心理学・神経科学において最も有名になった症例の話

          【NeuroNest】企画紹介

          こちらはマガジン【NeuroNest】の企画紹介ページです。 このマガジンでは、「脳と心」について、専門家の視点を共有できるようなコンテンツを提示していきたいと考えています。 現在コンテンツ準備中のため、本ページは企画予告のような、その一歩手前のブレインストーミングのような、雑然とした物置きとなっております。 記事が増えたら、このページがマガジンの表紙とインデックスを兼ねる予定です。 そのため、以下の企画候補も含め、この記事は随時更新される可能性があります。 ライター

          【NeuroNest】企画紹介