新社会人ためのシンプルで有効なAI活用の提案
最近、「学生や新社会人から、びっくりするようなメールが来ることがある」という声をしばしば聞きます。
(まぁ、実際には「最近」の出来事ではなく「昔からそういうもの」だったのかもしれませんが……)
私もつい最近まで(そして今でも)どちらかといえば「年輩の方にびっくりされるようなメール」を送る側だったので、どうしてこういう事態が起きるのかはそれなりに理解できる部分があります。
現在の学生は、メッセージアプリや音声での通話をすることはあっても、「メール」というツールをちゃんと使ったことがあまりないのです。
にもかかわらず、仕事を始めるとほとんどのやりとりが電子メールベースで行われているという現状があります。
業務メールなんてほとんどがフォーマットとバリエーションで捌けるもので、慣れてしまえば大した手間ではなくなりますが、その「慣れるまで」が大変な作業です。
何より、最初の最初で大きく心象を損ねるような失敗をすると、挽回不可能な傷となる可能性もあります。
そこで私が提案したいのが、メール作成にAIの力を借りることです。
私自身、メール一本を書くのに半日も唸っていた時期があります。
これからの人にはそんな苦労をしてほしくない。
「ビジネスメールごときに無駄な労力と時間を割く人」が一人でも減ることを願って、この記事を書きます。
ビジネスメールの返信は「素早く」が原則
ビジネスメールの重要な心得。それは「素早く」ということです。
実務においては、美しい文章で一週間後に届く返信より、シンプルで要点を押さえた即日の返信の方が遥かに価値があります。
ビジネスメールは、要件を確認したら
その場で解決できるもの
解決に半日以上要するもの
解決に要する時間の見当がつかないもの
のいずれかに振り分けましょう。
「その場で解決できるもの」はその場で解決して順次返信していきます。
これは良いでしょう。
問題は残りの2つです
「解決に半日以上要するもの」「解決に要する時間の見当がつかないもの」は、メールを受領した時点で即「確認しました」の一報を入れましょう。
時々あるのが、「学生に要件をメールしたけど返信がない。頑張っているのか、それともメールを見ていないのかすら分からない」という話です。
連絡が多くて困るという上司や指導者などまずいないのですから、その場で完結できないビジネスメールに対しては「確認しました」の返信を入れましょう。ノーリアクションが一番相手を困らせます。
「今日終わると思うから、完成したファイルと一緒に返信をしよう」とか思って後回しにしていると、予想外に手間取った時にどんどん返信を書くのが気まずくなっていきます。
欲を言えば「これから手を付けます。大体◯日くらいで仕上げるつもりですが、△日以上かかりそうなら再度連絡します」という旨の一文があるとベターです。
が、期日宣言が無くてもノーリアクションよりは遥かにマシです。
レスポンスが素早い人は何かと頼られやすいという副次効果もあります。
「予期せぬ美味しい案件が降ってきたけど、誰か今すぐ対応できる新人いるかな」というような場合に、最初に話がいくのはほぼ間違いなく「レスポンスが素早い人」であるはずです。
「レスポンスの素早い人」になって、チャンスをモノにしましょう。
形式ばったことはAIに任せよう
とはいえ、送りたい内容が「了解。今日忙しいので明日やります」だけだとして、上司や取引先からのメールに「了解。今日忙しいので明日やります」の一行で返信できる職場はあまり無いでしょう。
ここでAIの使いどころです。
AIにメールを代行させるために必要なのは
受信したメールの要点を把握すること
自分の意図を明確化すること
の2点です。
次で実践例を見ていきましょう。
なお、今回私はClaudeの無料版を使いますが、同様のタスクはChatGPT3.5でも可能です。
「メール作成」は大抵の文章生成AIの得意タスクなので、普段お使いのもので事足りるはずです。
実践例+プロンプト
こんなメールが来たとします。
AIを使って、このメールへの返信を用意しましょう。
第1の方法は、自力で要件を要約することです。
この方式で、「即日解決パターン」を想定して書いてもらいましょう。
プロンプト1(自力要約&即日解決)
このプロンプトから、以下のような出力が得られました。
ちょっと丁寧すぎるかもしれませんが、なかなか良い感じです。
次に、メール文面をそのままコピペして返信を書いてもらう方式です。
ただ、その場合に注意すべきことは、「そのメールの情報は誰かに見られても大丈夫か」ということです。
具体的に言えば、会社名や送信相手の氏名、製品名など、固有名詞は細心の注意を払って削っておく方が安全です。
私自身は(あまり使っていませんが)メール文面を貼り付ける方式を使う場合には、人名や組織名は全て架空のものに置き換えています。そして、出力された文を使う時に再び固有名詞を差し替えます。
プロンプト2(メールコピペ&後日解決)
このプロンプトでは、以下のような出力になりました。
手慣れたビジネスマンならこのくらいの返信文は自分で書けると思いますが、新人がゼロから書くよりは遥かにマシな文面を短時間で生成することができるというのは大きなメリットです。
さらに微妙な調整はAIにプロンプトを与えてもよし、自力で修正してもよし。
AIを過信せず、最終確認は人間
一方で、AIの出力を盲信するのは危険です。
生成AIはオーダーを誤解して的はずれな返信を書くことがありますし、オーダーしていないことを勝手に書き足す場合さえあります。
最終的には人間が内容を確認し、必要に応じて修正を加える必要があります。
もう少し主体的な使いこなし方として、文章生成AIの出力をあくまで「言い回しの参考」として使うという手もあります。(私はこれがオススメ)
具体的には、文面を何パターンか用意してもらった上で「ここの言い回しは私が書いた案より良いな」と思った表現だけ借りてくるというものです。
過剰な敬語や修辞は逆に嘘臭さが出てしまいますから、「自分がどう頭をひねってもこの言い回しは出てこないな」と思うものは使わない方が良いでしょう。
それから、今更ながら大前提ではありますが、「ビジネスメールは内容が最も大事」です。
特に重要なメールは、同僚や上司に目を通してもらうのが賢明です。
AIはあくまでアシスタントであり、メールはあなたの責任で送るのです。
AIを賢く活用すれば仕事が捗る
AIは今のところ私の事務仕事を奪ってくれていません。
しかし、このようにAIを補助的に活用すれば、少なくともメール業務に関しては確実に効率化できるはずです。
私が新人として何時間もメールの文面に頭を悩ませていた頃に、今のようなAI技術があったら、もっと「中身のある仕事」に時間を割けていたのにな……と思います。今更後悔しても仕方がないので、今ではAIを駆使して文章作成業務をガンガン効率化していますが。
何度も言いますが、ビジネスメールにおいて重要なことは「素早いレスポンス」、そして何より「中身」です。
「中身と関係のない体裁の部分」に頭を悩ませているために「素早いレスポンス」が損なわれてしまっては勿体ない。だからこそ、体裁の部分はうまくAIに頼りましょう。ということです。
その他に気を付けた方が良いこと
オマケです。新人がたまにやらかすやつ予防リスト。
最初に相手の名前、最後に自分の名前を入れよう
上の文例にもありますが、メールの冒頭を
[相手の所属]
[相手の名前]
で始めて、
最後を
[自分の所属]
[自分の名前]
で締めるというのが一般的な作法です。
これを入れないと、送られた相手は「お前、誰に話しかけてるつもりなの? ていうかお前誰?」状態になります。
直属の上司をCCに入れよう
「CC」とは同時送信のこと。
「Aさんへのメールだけど、Bさんにも同様の内容を送信しておきますよ」という機能です。
大抵の組織では新人には何の責任も権限も無いので、「その新人がやらかした時に責任を取るべき直属上司」がいるはずです。
何らかの決断や対外的な連絡は、原則としてその上司をCCに入れて行いましょう。
「どういう要件ならCCが必要か」はケースバイケースですが、重要なメールほどやっておいた方が良いです。
「上司が関知していることを証拠として残す」ことは、新人の自衛のためでもあります。
署名が変な名前になっていないか確認しよう
これは恥ずかしいだけでそんなに実害がないのですが、たまに「†滅亡の堕天使†」みたいな送信者名でビジネスメールを送ってしまう失敗が観測されます。
おそらく、プライベートで使用していたアドレスで、何らかのハンドルネームを名前として設定したままメールを送信してしまったのでしょう。
Googleをお使いの方は「アカウント」→「個人情報」のところで名前の設定を確認しておくことをお勧めします。
最後に
最後に種明かしをすると、本記事はAIのアシストを借りて作成しました。
大まかな手順は本記事で紹介したメール作成ノウハウと同じです。
私が主要なコンテンツとコンセプトを提示し
文章生成AIが章立てと文章の草案を書き
私が修正点を何回かディレクションし
出来上がった文章を私が細かく添削する
ことで本記事が完成しました。
私自身は、「最終的に作成者が一言一句に至るまで責任を負いながら発信するのであれば、その過程で文章生成AIを利用することは、辞書やシソーラスを使う行為と何ら変わらない」と考えています。
この記事が「若者が少しでも楽をできる未来」のために役立てば幸いです。
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