神崎狛/Koma Kanzaki

心理と真理の交錯するところ。 神経と心霊が見せる夢。

神崎狛/Koma Kanzaki

心理と真理の交錯するところ。 神経と心霊が見せる夢。

マガジン

  • NeuroNest

    • 10本

    脳と心の専門家が語る、ちょっと深くて濃い話。 疑似科学やインフルエンサーに惑わされず、「脳と心への理解を本当に深めたい人のためのマガジン」を目指してやっていきます。

  • Museum of Museums

    博物館・美術館のレポをまとめています。 企画展からローカル博物館・美術館まで。 美術館巡りの好きな方や知的好奇心に溢れた方に、「きっかけ」をお裾分けできれば嬉しいです。

  • 占い師の暇つぶし

    偶然と統計の結節点。託宣と錯覚の交差点。オカルトと科学の臨界点。

  • ハイド博士とジキル氏の奇妙な往復書簡

    • 27本

    それぞれの人格がそれぞれに書いた手記。 気楽な日記帳として、ゆるく続けていきます。

記事一覧

「知性を数値化したい」という人間の欲望

SNSなど見ていると、IQ (知能指数/Intelligence quotient)という概念があまりに無批判かつ盲目的に使われているように感じます。 実際のところ、現在確立されている知能テ…

食人部族とアルツハイマー病

「人間を食べる部族が発症する、特殊な脳の病気がある」 ……という話を聞いたことがあるでしょうか。 それなりに有名な話なので、どこかで聞いたことがある人は多いかも…

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「吉原」を「歴史の闇に葬るべき卑しいもの」と決めつける人たちにこそ見てほしい。そこには「人間」がいる。【大吉原展レポ】

このごろ「落語」をよく聞いております。 昔は通学中などによく聞いていたのですが、『あかね噺』を読んでいたら最近また聞きたくなったもので。 ところで古典落語には「…

0〜
割引あり
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新社会人ためのシンプルで有効なAI活用の提案

最近、「学生や新社会人から、びっくりするようなメールが来ることがある」という声をしばしば聞きます。 (まぁ、実際には「最近」の出来事ではなく「昔からそういうもの…

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世にも珍しい「医原性アルツハイマー病」の報告

「アルツハイマー病」という名を聞いたことがない人はいないでしょう。 しかし、「医療行為によって発生したアルツハイマー病」の事例があることはご存知でしょうか? し…

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教科書はどこまで正しいか?―「Gerstmann症候群」を題材に

先日、荒神氏と話していた時のこと、 「知識領域によっては『教科書に載る話』と『研究や臨床における肌感覚』に非常に解離がある」という話が出ました。 こういう状況だ…

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人類は「アファンタジア」を正しく検出できるのか?

前回の記事では、「心像 imagery」という概念を提示し、それが無い状態、すなわち「アファンタジア aphantasia」を紹介しました。 アファンタジアを一言で要約するなら、…

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私たちは何も考えずに「脳で物を考えている」と思い込んでいないか

現代に生きる私たちの多くは、「脳」こそが「精神を司る臓器」であることを知っています。 しかし、これは歴史的に見ればそれはほど「アタリマエ」のことではありません。…

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「アファンタジアAphantasia」とは何なのか

突然ですが、「キリン」を思い浮かべてみてください。 それがあなたの目の前にいると思って。 おそらくこの記事を読んでいる方のほとんどは、程度の差はあれど「キリンら…

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20世紀の心理学・神経科学において最も有名になった症例の話

 「海馬と記憶」の関係は、現代を生きる私たちにとっては「常識」と言えるほどの位置づけになりました。  「おじいさん、朝ごはんはもう食べたでしょ」  これは典型的…

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【NeuroNest】企画紹介

こちらはマガジン【NeuroNest】の企画紹介ページです。 このマガジンでは、「脳と心」について、専門家の視点を共有できるようなコンテンツを提示していきたいと考えてい…

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新年と心機一転のご挨拶

お久しぶりです。 (と、二回連続で言うのは心苦しいのですが) ちょっと名前を変えました。 相変わらずの神崎です。 新年のご挨拶としては一ヶ月遅れですが、今年もよろ…

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占い師の「コールドリーディング」とは何か

占い師はどうして他人のことが分かるのでしょう。 「生い立ち」「仕事」「人間関係」、そして「本人しか知らない悩み事」など……。 どうして言い当てられるのか? その…

あなたが科学を見るとき、科学はあなたを見てはいない

ややお久しぶりです。 前回の〈彼〉の書簡から、少し日が空いてしまいましたね。 だってそうでしょう、まるでドラマの最終回のように盛り上がった後で、私は一体どんな言…

「失敗したくない」が原因で陥る人生の失敗もある

一人の人間の前に、あまりに多くのコンテンツ、あまりに多くの選択肢が提示される現代社会。 それは「無限の快楽が溢れる楽園」であると同時に、「情報の洪水に揉まれる地…

さまよえる不死と終わらないコンテンツ

RPGのキャラと違って、現実の人間には「レベル上限」がありません。 それでも時には、「見かけ上のスキル上限」のような天井を感じることがあります。 〈彼〉の前回の記…

「知性を数値化したい」という人間の欲望

SNSなど見ていると、IQ (知能指数/Intelligence quotient)という概念があまりに無批判かつ盲目的に使われているように感じます。 実際のところ、現在確立されている知能テストも、歴史的・文化的・政治的な影響を経てご都合的に今の形になっているものでしかありません。 しかも、その設計思想を辿ってみると、実はそんなに高度な能力を測ることを目的としたものでもないようです。 この記事では、「知能観」が歴史の中でどう成立してきたか、どのように現代的な知能テストが

食人部族とアルツハイマー病

「人間を食べる部族が発症する、特殊な脳の病気がある」 ……という話を聞いたことがあるでしょうか。 それなりに有名な話なので、どこかで聞いたことがある人は多いかもしれません。 しかし、日本国内でもこの病気の発症があることはご存知でしょうか? さらに、その病気が「アルツハイマー病」の解明にも関わっている……となると、これはなかなか意外な話でしょう。 今回は「プリオン」というキーワードのもとに、「クールー病」から「アルツハイマー病」にまで至るお話をしたいと思います。 意

「吉原」を「歴史の闇に葬るべき卑しいもの」と決めつける人たちにこそ見てほしい。そこには「人間」がいる。【大吉原展レポ】

このごろ「落語」をよく聞いております。 昔は通学中などによく聞いていたのですが、『あかね噺』を読んでいたら最近また聞きたくなったもので。 ところで古典落語には「遊女」や「遊郭」の話も数多くあります。 「考えてみると、自分はこういうものを『なんとなく』のイメージで想像してるけど、『江戸時代の人から見てどうだったのか』を教えてくれる書籍や教育に出会ったことがないな」と思っていたところ、今回の「大吉原展」の存在を知りました。 ちなみにこの企画展を巡っては開催前から炎上もあっ

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新社会人ためのシンプルで有効なAI活用の提案

最近、「学生や新社会人から、びっくりするようなメールが来ることがある」という声をしばしば聞きます。 (まぁ、実際には「最近」の出来事ではなく「昔からそういうもの」だったのかもしれませんが……) 私もつい最近まで(そして今でも)どちらかといえば「年輩の方にびっくりされるようなメール」を送る側だったので、どうしてこういう事態が起きるのかはそれなりに理解できる部分があります。 現在の学生は、メッセージアプリや音声での通話をすることはあっても、「メール」というツールをちゃんと使

世にも珍しい「医原性アルツハイマー病」の報告

「アルツハイマー病」という名を聞いたことがない人はいないでしょう。 しかし、「医療行為によって発生したアルツハイマー病」の事例があることはご存知でしょうか? しかもそれは、ヒトからヒトへと”伝染”したのではないか……と見られています。 今回紹介するのは、一見すると「単なる奇妙な症例報告」です。 しかし、実はそこにアルツハイマー病の本質とでも言うべき事実が隠れています。 この症例が示すアルツハイマー病の本質は、近年解禁された「アルツハイマー病治療薬」とも実は無関係では

教科書はどこまで正しいか?―「Gerstmann症候群」を題材に

先日、荒神氏と話していた時のこと、 「知識領域によっては『教科書に載る話』と『研究や臨床における肌感覚』に非常に解離がある」という話が出ました。 こういう状況だと、「どの教科書にも載っていて、真面目な学生が必ず覚えてくる知識」が、「専門家はほとんど誰も真に受けていない話」だったり、「臨床家にとっては重箱の隅をつつくようなマイナー知識」だったりする……という事態が起きるわけですね。 「テストで点が取れること」自体にもそれなりに価値はあるのでそれはそれで良いのですが、「それが

人類は「アファンタジア」を正しく検出できるのか?

前回の記事では、「心像 imagery」という概念を提示し、それが無い状態、すなわち「アファンタジア aphantasia」を紹介しました。 アファンタジアを一言で要約するなら、次のようになります。 「視覚心像を作れない状態」 そして、これが先天的に起こっている場合に「先天性アファンタジア」と呼ぶのでしたね。 これに対して、何かの病気や出来事によってアファンタジアに陥った場合には「後天性アファンタジア」と呼べます。 今回は、さらにここからもう一歩進んでいきます。

私たちは何も考えずに「脳で物を考えている」と思い込んでいないか

現代に生きる私たちの多くは、「脳」こそが「精神を司る臓器」であることを知っています。 しかし、これは歴史的に見ればそれはほど「アタリマエ」のことではありません。 そもそも私たちは「精神を司る臓器は脳である」という説を本当に理解しているのでしょうか? 「だって医者も科学者もみんなそう言っているから」という理由で「脳で物を考えている」などという教義を信じているとしたら、「精神の本体は心臓である」と信じていた人たちと本質的に何ら変わりませんよね。 「脳が精神を司る臓器」であ

「アファンタジアAphantasia」とは何なのか

突然ですが、「キリン」を思い浮かべてみてください。 それがあなたの目の前にいると思って。 おそらくこの記事を読んでいる方のほとんどは、程度の差はあれど「キリンらしき動物の姿」を目の前にイメージすることが出来たかと思います。 キリンの長い首、長い脚、黄色と茶色の柄も、大体の人が思い浮かべられたでしょう。 しかし、こうした能力にはそれなりに大きな個人差が存在するようです。 これと関連して、「アファンタジア Aphantasia」という概念が近年注目を集めています。 ただ

20世紀の心理学・神経科学において最も有名になった症例の話

 「海馬と記憶」の関係は、現代を生きる私たちにとっては「常識」と言えるほどの位置づけになりました。  「おじいさん、朝ごはんはもう食べたでしょ」  これは典型的なアルツハイマー病の症状である「健忘(記憶障害)」を端的に表すやりとりです。  典型的なアルツハイマー型認知症では海馬の機能に障害が起こるため、新しく出来事を覚えることが出来なくなるわけです。  しかし、このような「記憶」に関する基本的な知識も、20世紀までは当然のことではありませんでした。  「記憶」について

【NeuroNest】企画紹介

こちらはマガジン【NeuroNest】の企画紹介ページです。 このマガジンでは、「脳と心」について、専門家の視点を共有できるようなコンテンツを提示していきたいと考えています。 現在コンテンツ準備中のため、本ページは企画予告のような、その一歩手前のブレインストーミングのような、雑然とした物置きとなっております。 記事が増えたら、このページがマガジンの表紙とインデックスを兼ねる予定です。 そのため、以下の企画候補も含め、この記事は随時更新される可能性があります。 ライター

新年と心機一転のご挨拶

お久しぶりです。 (と、二回連続で言うのは心苦しいのですが) ちょっと名前を変えました。 相変わらずの神崎です。 新年のご挨拶としては一ヶ月遅れですが、今年もよろしくお願いします。 前回の交換日記はこちら。 ……と、紹介したところで彼には悪いのですが、今日は全然関係ない話をします。 [序論]新年の抱負に代えて年の区切りで何かを考える習慣もあまり無いのですが、折角の機会なので抱負じみた私の野望を並べておこうと思います。 それから、このnoteのコンセプトもいくらか刷

占い師の「コールドリーディング」とは何か

占い師はどうして他人のことが分かるのでしょう。 「生い立ち」「仕事」「人間関係」、そして「本人しか知らない悩み事」など……。 どうして言い当てられるのか? その答えの一つが、「コールドリーディング(cold reading)」と呼ばれる技術です。 コールドリーディングとは?コールドリーディングは、事前情報なしにアドリブで相手の情報を言い当てる技術です。 「何が『冷たい(cold)』の?」と気になる方もいるかもしれませんが、「事前に情報を得ていない」ことを「温めていな

あなたが科学を見るとき、科学はあなたを見てはいない

ややお久しぶりです。 前回の〈彼〉の書簡から、少し日が空いてしまいましたね。 だってそうでしょう、まるでドラマの最終回のように盛り上がった後で、私は一体どんな言葉を紡げば良いというのでしょう。 では今回もまた、論点をずらして別の話でお茶を濁しましょう。 「最高の人生」が「選択と失敗に彩られた無二の人生」であるならば、「最高の人生」と「最高の科学」とは究極的には相容れないのではないか? ――という問いについてです。 赤信号を一人で渡って事故に遭うのも個性生きれば生きる

「失敗したくない」が原因で陥る人生の失敗もある

一人の人間の前に、あまりに多くのコンテンツ、あまりに多くの選択肢が提示される現代社会。 それは「無限の快楽が溢れる楽園」であると同時に、「情報の洪水に揉まれる地獄」でもあると言えるでしょう。 無限のコンテンツから有限にしか選べないとしたら、私たちはどうやって「正解」を求めていくべきか。 〈彼〉からの返信は、その問に対する一つの「解答」と言えるでしょう。 〈彼〉の示した答えはこうです。 確かに、これも一つの「解」だと思います。 「正解」は事前には存在せず、その後の行

さまよえる不死と終わらないコンテンツ

RPGのキャラと違って、現実の人間には「レベル上限」がありません。 それでも時には、「見かけ上のスキル上限」のような天井を感じることがあります。 〈彼〉の前回の記事は、そんな「天井」のお話でした。 「タテ」の行き詰まりを「ヨコ」の広がりで打破することで、人生は無尽蔵のコンテンツになります。 つまり、こういうことね。 コンテンツを「タテ」に掘り下げる=その道で習熟度を高める コンテンツを「ヨコ」に広げる=新しい道に進入してみる ところで、私も先日ある本を読んで、似