鎌倉北じま 2024.10
はじめに
鎌倉にある日本料理店「鎌倉北じま」へ参りました。偶然にもOMAKASEサイトでキャンセルを拾うことができ、念願の訪問です!
勝手に評価!
総合評価:4.6 凄く良い!
料理・味:4.5
サービス:4.8
雰囲気:4.7
コスパ:4.7
実際に食べたもの
おまかせコース(税サ別30,000円)を頂きました。
食前酒として、桂花陳酒を頂きました。
アルコールは微量に抑えています。
口へと含む過程にて、金木犀の甘い香りが優しく漂います。
コンブ茶をフルーツやポップで混ぜて。
果実らしいフルーティーな甘みもありつつ、すっきりとした味わいです。
飲みやすく、料理の邪魔にもならない良い塩梅です。
柔らかく煮た鮑と干しずいき。あんかけのお出汁は鮑の煮汁に、鰹節を加えて取った物です。椀を取ると出汁の香りに加えて、すだちの心地良い香りがぷわぁんと広がる。思わず、頬が緩みます。
とにかく、お出汁が非常に澄んでいて、滋味深い。
柔らかな深みとクリアな旨味。そして、ほんのりと感じるミネラル感によって、鮑との親和性が生まれていました。また、すだちの皮によって爽やかな余韻を楽しめます。
蒸したもち米に、銀杏と銀杏、栗を合わせたお品。
上に掛かっているものは、栗を削った物です。
米の甘さに、さつまいものほっくり柔らかな甘みと焼きによる香り、揚げた銀杏の食感とほんのりと青い香りが加わります。
異なる調理によって各食材の色が出されつつ、全体として柔らかくも豊かな味わいが一体となって楽しめます。
秋の訪れを感じる一品です。
「さかな人」として知られている、長谷川大樹さんから仕入れたお魚です。
もっちりとした弾力と、湧き水のようにさらさらと清らかな脂を感じます。
合わせるのは、糸島産のお塩と、自家製骨醤油。
醤油は水分や臭みを抜いた太刀魚の骨を焼き、醤油と合わせた物。ほんのりと効いた太刀魚の旨味が、さらに深みのある味わいを生みます。(これだけでお米を掻き込みたい)
お次はクロシビカマスというお魚。
扱いが難しいゆえに、市場には滅多に出回らない魚種です。
鱧とは異なり、皮から身へ向かって骨切りを行うことで、骨と身を一体で味わえます。
結論、こちらがとんでもなかった。
たっぷりと脂が乗っていますが、とてもクリアですっと引く軽やかさ。備長炭で炙られた皮目の香ばしさと共に、柔らかな余韻に浸ります。また、骨の心地良い食感がアクセント。
もっと頂ける機会が増えると嬉しいと思いつつ…
クロシビカマスのように、本当は類稀なるポテンシャルを持っているのに関わらず、価値を見出されずにいる食材が多くあることを知りました。
食べ手としては、情報の非対称性に甘んじてはならない。まだ知らぬ食材に臆せず挑戦したり、食の背景にある現状を理解したりと、できることに向き合いたいと感じました。
すっぽんのお出汁に、2種類の天日干しきのこ(ヤマドリダケモドキとオオミヤマドンビマイ)を加えたお出汁。合わせるのは、すっぽんが入った白玉です。
やっぱり、お出汁が旨味深くて美しい。
すっぽんのまっすぐな旨味に、きのこが丸みや柔らかさが加わり、奥深くも雑味のない味わいと仕上がっています。
身もたっぷり入っています。
食べ進めるごとに、身から来るエキスによって、出汁の味わいがより深く豊かになります。
石井ファームさんが育てた葉山牛(「葉山石井牛」というブランド)のヒレカツ。上には牛蒡チップスをあしらい、かぼすの果肉、山椒も合わせています。
カツはもっちりと柔らかく反発する弾力と、静かな旨味。牛蒡の香ばしさや土っぽさが深みを、かぼすの柔らかな酸が軽やかさを加えます。
土台として置かれたかぼすの実、側面から自然に伝わる酸によって最後はさっぱりと締めることができます。
お勧めいたたいた日本酒。
昔の製法を見直し、通常は20%である麹の使用量を30%ほどにまで引き上げて作られています。
麹由来の発酵と甘みがありつつ、すっきりとクリアな味わいで飲みやすい。
お店で育てている柿の木の葉をあしらって。
葉の色合いから、夏から秋への移ろう今の季節を目で愛でることができます。
大根の食感を味わうと共に、柿由来のフレッシュな甘み、なますの柔らかな酸、バチコの奥深い塩気が混ざり合い、口の中で広がる。このバランスが非常に取れていると感じました。
すっきりとしつつ、味わいの濃淡が楽しめます。
ヌメリスギタケモドキ、クリフウンセンタケ、天然舞茸を使ったきのこ餡に、湯葉を2種類のもち米を使った衣で揚げた一品です。
カリカリと米ならではのクランチーな食感の後、とろ~んと湯葉の大豆の甘みや旨味がまろやかに広がる。このコントラストが堪らない!
そして、お出汁はきのこの旨味に、ほんのりと焦げの香りがふわっと広がる。
非常に優しい味わいながら、驚きと楽しさもある一品でした。
ご飯物はお寿司を。
初音鮨ご出身のお弟子さんが目の前で握ってくださります。
小さめの可愛らしいサイズ感。
キハダマグロのほの柔らかい鉄っぽさと純粋な旨味がとろける後に、ほろほろとシャリが解れます。
都内よりもより新鮮な状態で仕入れられるアドバンテージを活かし、お魚の上質さ・純粋さをダイレクトに感じる握りに仕上げています。
もっちりとした弾力と酢橘やシャリの酸との調和が非常に取れていました。
すっきりしつつも、咀嚼の度に味わいが柔らかく広がる感覚。
オアカムロ、こちらも初めてお目にかかりました。ムロアジ属の青魚です。尾びれが赤いから、「オアカ」。
魚のもっちりとした弾力。その後に、心地良い青魚らしい香りが旨味の強い脂と共に口に広がります。
この味わいが米酢ベースの酢飯と綺麗に混じり合って、爽やかでありつつ奥深い味わいが楽しめます。
まだお腹に余裕あればとお心遣いいただき、おかわりも。
甘みや旨味、酸味に、香り。小ぶりながらも風味が詰まっていて、「寿司を食べたな!」と幸せな余韻に浸ります。
軽やかな穴子と、シャキシャキと瑞々しいきゅうり、ふわふわで甘めの卵焼きが柔らかく包み込みます。バランスの良さは勿論のこと、食感のコントラストが楽しい。
良い意味で軽やか過ぎる一品でした。
本日は私と連れの誕生日祝いということで、素敵なプレートをいただきました。(歌も歌ってくださいました!)
苦みが柔らかく爽やかさ満載のグレープフルーツゼリー。下のパパイアの自然な甘みを相乗させたり、蕪のマリネで甘みを引き締めたりと、巧みな使い技です。
柔らかな甘みの中に、銀杏らしい木や土っぽい香りがぷわぁんと心地良く香る。中のわらび餅はほの温かく、とろ~んとした口当たりがあんかけとも滑らかに溶け込みます。お腹も心もほっこりします。
全体を通じて感じたのは、食材に限らず、器や空間など…この食事に関わる全ての方への敬意。
「この日一番美味しい物を届けたい」という食材ありきのご姿勢と深い知見。これがご修行時代に培われた技術の高さや引き出しの多さと乗算し、食材のうちに潜む可能性を存分に引き出しているという印象を受けました。
このお店だからこそ味わえる、味わいや趣深さです。
サービス
挙げたらキリがないほどに、細やかで温かいおもてなしをいただきました。特に、印象的だった点を記述します。
皆様のアプローチ
常連さんもいらっしゃる中、我々は初見での来店。しかし、親方さんもお弟子さんも折を見て、丁度良いタイミングで沢山お声がけしてくださいました。お料理の質問などにも丁寧にお答えいただき、さらに会話が盛り上げるようなお話まで振ってくださりました。また、他のゲストとも一緒になって、笑い溢れる会話を楽しむこともできました。丁寧過ぎるご所作
実を言うと、今回鎌倉北じまさんへ伺う最大の目的が、締めの品々を好きなだけ頂ける点にありました。しかし、6月に発生した火事の影響で、ご提供できるお食事に制限がかかり締めがお寿司へと変更に。そのことを何度も謝ってくださり、更にできる範囲で量をご調整してくださいました。他にも、お水のグラスについた粒をわざわざ拭いてくださったり、「え、そこまでする?」と思う所までのお心配りでした。
お値段
おまかせコース(税サ別30,000円)、瓶ビール×1、コンブ茶×1、日本酒1合で計36,800円/2名でした。
ご提供される食材の質、調理技術の高さ、そして細やか過ぎるおもてなしを考えると、「あれ、間違っていない?」と思うほどのお値段でした。
まとめ
仮営業につき多くの側面で制限はあったと思いますが、それを感じさせない。寧ろ、制限があるからこその創意工夫や楽しさがありました。
何より、皆様の物腰の柔らかさと、気さくでありつつ細やかなおもてなしに一気にファンになりました。
また是非伺いたいです!