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ふたつの眠りに、ふたりの愛に。/短編


先日、妹は永遠の眠りについた。


僕を含め家族もみな
気が付いてはいた。

もうきっと長くはないのだろうと。



すでに何かを悟った妹は、
襲いかかるその黒き影を必死に隠し
病室では天使のような笑顔で振る舞っていた。



しかし、
それは突然訪れた。



いつかある日
そうなってしまっても
僕が受け入れられるようにと、


大切な人が虹の橋を渡るとは、
どのようなことなのだろうか、と
時々考えていた。



深海に沈んだ船舶のように深い闇に放り込まれ
もう這い上がっては来られないかのような
苦しみなのか、


妹との幼き頃の想い出を噛み締め
夜な夜な泣き尽くす日を
送ることになるのか、と。



けれど僕は、
もう、
それがどのようなことなのかを
知ってしまった。



人は、
哀しみを通り越してしまうと、
涙さえ出てこないということ。


喪失の感情は、
あまりにも実感を伴わないということ。




その日は、
僕を囲む空気が、感覚が、全てが、
いつもとは違っていた。


それは、
一枚のヴェールにつつまれたかのような
ぼんやりとした空気感だった。



梅雨が続く中で、
妹が旅立ったその日は、

空が、眩しいくらいに晴れていた。



通り越した哀しみの余韻が肌に触れ、
少しひりひりと感じていた僕は、
そんな空を見て、


「晴れた日ほど哀しい日はない。」と、

思ったのだった。



その時、
この世界にひとり
取り残されてしまったような
そんな気持ちになった。


◇◇◇


ふわふわとした
宙に足が浮いたような気持ちで
そのまま夜を迎えた。



いつもに比べ
ひんやりとしている気がするのは
気のせいだろうか。


ベッドに横たわり
ぼっとしていた。


そうしたら、
少しずつ
氷が溶けていくかのように
その氷水が流れていくかのように


妹との記憶が鮮明に蘇り
頭の中を駆け巡るのだった。




入院中、病院食ではなくて
美味しいごはんを
僕と一緒に食べに行きたいと
言ってくれたこと。


どのように寝たら
そうなるのかわからないけれど、
いつもなぜか寝癖がひどく
わーわーと言いながら
朝の支度をしていたこと。


学校の持久走で学年1位になると
学校から帰って来ては、
練習のために川沿いに走りに行っていたこと。


夏は、毎日アイスを食べながら
必ず扇風機の前で涼んでいたこと。


幼い頃、
一緒に公園で遊んでいたら
犬に追いかけられて、怖いと
だっこをお願いされたこと。



天井を見上げて想い出に浸っていた僕。


その温かい想い出さえも
今は思い出したくなくて
目を閉じた。


そうしたら、
突然涙が流れ始めた。



僕は、
その時にはじめて、
妹の不在を実感したのだった。


ほろりほろりと
ほおに涙がつたってゆく。


枕に涙の川ができてしまうのでは
と思うくらいに、
それはそれは涙をした。



疲れ果てた僕は、
いつの間にか眠りについていた。


「だっこなんて、
 できっこないじゃないか。
 生きててくれなきゃ、、、。」


僕は夢の中でそう呟いた。


the end.


◇◇◇

この度は、初めて小説を書いてみました。
なので、今とてもどきどきしながら
文をしたためています。

1103文字で書き上げました。

この度は、
このようなグランプリを主催していただき
新たな挑戦の場を作っていただいた
ピリカさん、ありがとうございます♪


そして、
小説を書く後押しをしてくださった
かっちーさん、小牧幸助さん
ありがとうございます!(順不同)




今回、とても新鮮な気持ちで
取り組むことができ、
またその中で、新たな気づきを得たと共に
小説を書く難しさを実感いたしました。

非常に学びの多い機会となりました!!



最後まで
読んでいただき
ありがとうございます🍑


今夜も良き夜をお過ごし下さいませᙏ̤̫͚


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