マガジンのカバー画像

18
運営しているクリエイター

#散文詩もしくは自由詩

 砂漠、運命が降りそそぐ場所

砂漠、運命が降りそそぐ場所

砂漠とは、運命が降りそそぐ場所

砂漠には方向がない

もし砂漠で誰かと出会ったら、何を話せばいいのか

砂漠には、運命が降りそそいでいる

何かを選択することは無に委ねること

無に動かされること

運命は無から降りそそぐ

砂漠とは、無から運命が降りそそぐ場所

砂漠には、生の潤いがある

粒子

粒子

高解像度は、一つの画でしかない

一つの画になる前の、粒子に出会いたい

風景になる前の

顔になる前の

一つ一つの粒子に

星空のための星ではなく

一つ一つの星のために

何かの出来事のための出来事ではなく

一つ一つの出来事のために

もしまた画をつくるのなら

一つの画ではなく、複数の画をつくろう

星と星の間には闇がある

粒は質的に異なり

闇の量によって隔たる

星と闇と星と

もっとみる
他者のスマホ

他者のスマホ

朝5時半ぐらいだろうか
じっとパソコンの画面に向き合う
傍にあるスマホの画面が光る
何かの通知だ
当たり前だけど、この通知は僕に宛てたものだ

その通知を見ながら、
ふと友達のスマホが通知で光ったときのことを思い出した
当たり前だけど、その通知は僕に宛てたものではない
その光は僕にとって
いや、その友達以外の人にとっては闇である
友達の手に収まっているスマホ
それは友達ではなく他者
他者という存在

もっとみる
反復が終わり、始まる度に-Salamanda『Sing Together』

反復が終わり、始まる度に-Salamanda『Sing Together』

夜明け

東の空に赤い線が伸びていく

反復するベースのメロディー

空の星の灯りを一つずつ消していく

空は徐々に明るくなる

反復が終わり、始まる度に

夕方

西の空で赤い光が蒸発していく

反復するベースのメロディー

空の星の灯りを一つずつ灯していく

空は徐々に暗くなる

反復が終わり、始まる度に

バドミントン

バドミントン

雲が一つもない、

秋晴れの日。

広い公園で、

2人で遊んでいる。

芝生に、

薄いレジャーシートを敷く。

赤ワインとチーズ。

バドミントンの、

ラケットと羽。

シャボン玉。

赤ワインが滴った、

プラスチックカップ。

響かないチアーズ。

ラケットを握る。

羽を空へ高く投げ、打つ。


羽は、

羽は、

明後日の方向へ飛んでいった。


でも、

それでも、

その人はちゃ

もっとみる
モモのティディベア

モモのティディベア

モモのティディベアのお腹の中には、

虹色のバター。

山羊座流星群の使いから、

一欠片もらった。

忘れられたトロフィーを溶かして作った、

フィエイクゴールドのフライパン。

それでまん丸3段のホットケーキをつくって、

虹色バターを溶かして食べた。

きっとモモは驚くだろう。

ティディベアを洗濯したら、

洗濯物が全部虹色に染まっているから。

ベランダに干せば、風まで虹色に染まってしま

もっとみる
灰と朝

灰と朝

曇天の空の下、

赤いショベルカーが群れをなしていた。

灰色の瓦礫の上で。

全て同じ方向を向いている。

灰十字軍の行進のワンシーン。

僕はその横を流れるように通り過ぎる。

朝の電車の中。

ドアが開く。

吐き出される人たち。

灰色の足音がどこまでも続いていく。

熱くもなく寒くもないことは、

砂に埋まってしまった。

空を見たら、

小雨が降っていた。

もしも虹が現れるなら、

もっとみる
No Future 4 U

No Future 4 U

初めて未来という言葉を知ったときから、

刹那主義者になることを決めた彼。

No Future 4 U

オレンジジュースのようなもやにダイブする。

その中で、ヤモリと出会う。

そいつは子供の頃、

部屋に迷い込んできたヤモリだった。

「そういえば 君の名前を聞いてなかったね」

「未来がなくても 名前が気になるかい?」

「それもそうだね。でも気になるな。なぜだろうね」

ヤモリはもやに

もっとみる
海で濡れる

海で濡れる

棚に並べられた瓶。

その瓶には、海が詰められている。

くすんだラベルに、

「ハバナ」

と書かれた瓶をテーブルに置く。

陽の明かりが海の中を通り抜け、壁に、落ちる。

壁には水色の蜜蜂が投映された。

瞬きをする。

すると蜜蜂の羽が動いた。

瞬きを繰り返す。

なるべく早く。

すると蜜蜂は壁を旋回した。

しばらく旋回したあと、

蜜蜂は

壁のシミにとまった。

白ワインの、透明な

もっとみる
バンドネオン

バンドネオン

日焼けした白いスーツの男。

パーティー会場の片隅で、彼はカクテルグラスを傾ける。

カクテルグラスには三日月が揺れている。

背後には暗黒のジャングルの暗黒が広がる。

テーブルの上に散らばったナッツのカスが警告している。

彼の前に立つなら紫色の霧になれと。

そしたら彼は、シルクの呼び鈴を鳴らして、

タンゴの楽団を呼び寄せるだろう。

暗黒のジャングルの暗黒から。

カスネットがカンッと響

もっとみる