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28-いよいよ「更正」のスタートラインに

【前回のお話】

(664字・この記事を読む所要時間:約2分 ※1分あたり400字で計算)

 しばらくは、ただただ呆然としていた。


 「合格」の二文字。

 そして、画面いっぱいに大きく映し出された「おめでとうございます!」のお祝いメッセージ。


 すぐには受け入れられず、何度も何度も見直した。

 繰り返しサイトに再アクセスし、受験番号を入力しては、確かに毎回同じ表示が出てくることも確認した。


 ああ。

 間違いなく、私は受かったのだ
 晴れて大学院生になったのだ。

 嬉しさの前に、涙がまず出てきた。


 頑張ったなぁ、私。
 今まで、本当に頑張った。

 自分をぎゅっと抱きしめながら、心ゆくまで泣いた。

 ひとりぼっちでこの空き家の玄関をくぐった日のこと。
 簡単なメール1本も満足に打てずに戸惑った時のこと。

 緊張したバイトの面接、S教授との最初の面会。
 季節の移ろいを感じる余裕もなく、働いては勉強し、慌ただしく過ごした日々。

 頑張ったなぁ、本当に頑張った。
 これでようやく、「更正」のスタートラインに立てた。


 大学院生としてのこの2年間、いっぱい勉強するぞ。
 本もたくさん読もう。

 それと、大学院の勉強だけで満足なんかしないぞ。
 今後の為になるよう、取れるだけの資格も取ってやる。

 「学生」という身分をフル活用し、出来る限りの知識とスキルを身に付けるんだ。


 やる気に満ちあふれ、次々とこれからの計画を立ててはワクワクし始める私。


 そうだ。

 時間割が決まったら、授業が無い時間帯にはとことんアルバイトのシフトを入れて、社会経験を積もう。


 そうだ、そうだ。

 いっそのこと、もう思い切って接客業にチャレンジしてみようーー


 但し、この軽はずみな考えの故その後大変な目に遭うとは、この時知る由もなかった。

(つづく)

📚楽極生悲(らくきょくせいひ)


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