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パーパスが浸透しない!をミッション、ビジョン、バリューの関係性から考える


はじめに

近年、企業の存在意義を表す「パーパス」という概念が注目を集めています。多くの企業がパーパスの策定に取り組み、対外的に発信するようになりました。しかし、その一方で、パーパスの社内浸透に苦心する企業も少なくありません。パーパス経営の課題と有用性について、ざわざわしました。

定義の曖昧さ

企業のステートメントを並べてみてもパーパス、ミッション、ビジョン、バリュー(PMVV)の区別は往々にして曖昧です。

例えば、

「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」(パタゴニア:ミッション)

「私たちは幸せを量産する」(トヨタ:フィロソフィー)

「豊かな共生世界の実現」(花王:パーパス)

多くの企業が社会的責任を重視しているため、内容が類似してしまうのは仕方のないことですが、PMVVが混在して提示されており、その区別は必ずしも明確ではありません。

この背景には、PMVVの定義自体が専門家や組織によって解釈や使い方が異なることがあると思われます。

ちなみに一般的には以下のような解釈が多いようです。

● パーパス:企業の存在意義(現在形・社会的意義に焦点)
● ミッション:企業の使命(現在形・組織の役割に焦点)
● ビジョン:企業が目指す未来像(未来形・組織の目標に焦点)
● バリュー:企業の価値観(行動指針)

パーパス浸透の課題

曖昧さ、必然性、押し付け感に要注意

博報堂ブランド・イノベーションデザインの調査によると、約7割の従業員が自社のパーパスに対して何らかのモヤモヤ感を抱いているそうです。せっかく組織をひとつにするためにパーパスをつくったのに定着しない、その要因はいくつか考えられます。

まずは、先ほどの「定義が曖昧」という問題。既存の経営理念や社是などとの差別化が不明確になり、パーパスがそれらとどう異なるのか、従業員には理解しづらいと思います。

次に「文化的背景」の問題。日本企業においては「三方良し」の精神に代表されるように、企業を社会の公器とみなす考え方が根付いているため、従来の経営理念にすでにパーパスの要素が含まれていることが多く、新たにパーパスを導入する必要性が感じられにくい側面もあると思えます。また、パーパスという概念は欧米発祥のものであり、なじみにくい面もあります。腹落ちできないから、従業員はパーパスを実際の仕事に結びつけることができず、結果として「絵に描いた餅」となってしまうことがありそうです。

そして「トップダウン」問題。パーパスが経営陣によって一方的に決定され、従業員の意見が反映されていない場合には、押し付けられたものだと感じられることもあるでしょう。社内アンケートをとって意見を聞いたとしても、そもそもボトムアップで策定しないことには納得感が薄れてしまいます。

パーパスの浸透を促進するためには、従業員の意見を反映し、パーパスをより具体的に日常業務に落とし込む取り組みが重要です。例えば、日々の業務の中でパーパスがどのように役立っているかを具体的な例を挙げて説明する場を設けたり、社内報で紹介したりと、インターナル・コミュニケーション施策が必要になってきます。

パーパス経営の意義

競争力と社会的価値の源泉

しかしこれらの課題があるからといって、パーパスが不要だというわけではありません。むしろ、現代のビジネス環境において、パーパスの重要性はますます高まっています。パーパスは、グローバル企業や国際的なパートナーシップにおいて、組織の核心を簡潔に伝える共通言語として機能するはずです。明確なパーパスを持つことで、企業の求心力が高まり、従業員に仕事の意義を示してモチベーションを高める効果もあるでしょう。また、消費者も企業の社会的責任や価値観に注目しており、明確なパーパスはブランド価値の向上や顧客ロイヤリティの強化にも寄与するはずです。

パーパス浸透のために

日々の行動と対話の織り成す進化

最後に、私たちの考える一般的に捉えた、コーポレートコミュニケーションとPMVVの関係図を共有します。


コーポレートコミュニケーションとミッション、ビジョン、バリュー
コーポレートコミュニケーションとミッション、ビジョン、バリュー

組織も人も、何を言ったかではなく、何をしたかがその人となりを現すものです。Doingの結果、Beingが顕在化する、その集団がどんなDoingを推奨するのかは、誰にでもわかるように明文化し、繰り返し日々の行動に重ね合い、確認しあい、修正を繰り返すといった対話を通して、より良い集団に、よりよい社会になっていくのではないでしょうか。その対話がコーポレート・コミュニケーションなのでしょう。

「人間の考える信仰心よりも良心の方が神の道に近い」

批評家の若松英輔氏の言葉です。全ての組織が、より良い集団、よりよい社会となったその先に、PMVVなど不要になるのではないかと夢想します。形式的なパーパスの策定よりも、日々の事業活動を通じて社会に貢献する「良心」のほうが個人の幸福に寄り添っているからです。

パーパス経営の本質は、言葉の定義や形式にこだわることではなく、企業と社会、そして従業員一人一人が共に成長し、より良い未来を創造することにあります。私たちは、このような本質的な議論が、いつの日か「当たり前」となり、もはや議論の必要すらなくなる日が来ることを願っています。

まとめ

パーパスは単なる言葉ではなく、企業の存在理由であり、社会との約束です。それは、従業員の情熱を喚起し、イノベーションを促進し、持続可能な成長を導く力を持っています。しかし、その力を最大限に引き出すためには、パーパスを単なるスローガンや看板ではなく、企業文化の中核に据え、日々の意思決定や行動の指針として活用していく必要があります。決して容易な道のりではありませんが、その実現に向けて真摯に取り組むことで、企業は社会からの信頼を獲得し、持続的な成長を遂げることができるのです。形式主義を超え、本質的なパーパス経営を実践することこそが、これからの時代における企業の競争力の源泉となるのでしょう。

まとめ:コグレリョウヘイ


この記事について

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