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高校生だもの。

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開いてくださりありがとうございます。 日々思いついたとき、スマホのメモに残している現役高校生の私の呟きです。 # 創作大賞2022
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記事一覧

高校生だもの。#10

高校生だもの。#10

「 晴夜、舞台。」

夜は全部違った景色に見える。

都会じゃないのに大人チックになる駅前は、歩くと大人になった気がする。

居酒屋の前を照らす紅い提灯も、定食屋の温かい灯りも、煌々と光る街頭ですら、どこか昼間と違った雰囲気を醸し出す。

ゆっくりと歩いてみる。お気に入りの曲を聴きながら。曲と歩幅を合わせれば、私は今だけ女優になれる。

今日はジャズを聴きながら、当てもなく夜の街を歩く若者の役。

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高校生だもの。#9

高校生だもの。#9

「 終夜、高速道路。」

遠出をした帰り道が好きだ。

高速道路を走る車の音が好きだ。

車内に響く車の音は、特別な場所で過ごした一日の終わりと余韻を感じさせる。

ラジオの微妙なノイズ音が、外からする車の音にかき消され、同時に風が窓にぶつかる音と重なる。

イヤホンで音を遮断するのは嫌で、睡眠で視界を遮断するのも嫌だった。

隣の車線を追い越していく車を見る。

遥か遠くに見える夜景を見る。

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高校生だもの#8

高校生だもの#8

「 白昼、映画。」

久々に見た恋愛映画。

エモーショナルな雰囲気と言葉の言い回しに酔い、漂う橙と紫のムードに溺れる。
酔って酔って酔ってしまって、ワインでも飲んでいるのではないかと錯覚する。
酔っているから共感できず、終いにはお腹すいたなとか眠たいなとか、そういうくだらないことを考え始める。

始めからわかっていた光のない結末と、対比するような明るいエンドロール。
エンドロールを見ながら、あの

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高校生だもの。#7

高校生だもの。#7

「 深夜、ベッド。」

布団に入ると、修学旅行を思い出す。
深夜にも関わらず車が通り続ける東京の夜を友達と眺めた6年生。
弾力性のあるベッドに仰向けになって小さな明かりの下で恋愛話をした3年生。
ホテル特有のさらりと落ち着いた匂いと、友達と過ごす夜、そして早朝。窓から見える眩しい新しい景色。
全てが新鮮で、そして初めてだらけ。
あの日のベッドの弾力を、私はまだ覚えている。
あの日の友達との会話を、

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高校生だもの。#6

高校生だもの。#6

「 深夜、あの夜。」

あの夜を思い出す日がある。
ウォークマンに挿された細い有線イヤホンから流れた、日付が変わる5分前のラジオの天気予報。
お気に入りの番組が終わった5分後に始まって、5分で終わる。
そして聞こえる、日付が変わる時報。
特別感を思い出す。
もう今は聴いていない。
#創作大賞2022

高校生だもの。#5

高校生だもの。#5

「 深夜、通話。」

深夜に始まった通話は深夜に終わる。
ノイズ混じりに聴こえてくる声と、深夜だから話せる話。
相手に自分の声がどう聴こえているのかふと気に掛かる。
「おやすみ」
その一言で切られた通話の後は、なんとも言えぬ余韻と現実に襲われる。あぁ夜だったと実感する。
手で持っている長方形の無機物は、時間を忘れさせてくれる魔法道具かもしれない。
#創作大賞2022

高校生だもの。#4

高校生だもの。#4

「 快晴、体育祭。」

高校生活最後の体育祭が終わった。
それは始まったらあっという間に終わる。
私は友達の笑顔をファインダー越しに見て、カラフルなクラスTシャツが似合う姿をシャッターを切って残す。
ピストルの音と共にリレーは始まって、はしゃいだ一走目の走者たちは裸足で走り始める。
前の走者から受け取ったバトンを全力で走り繋ぐ。私の名前を呼ぶ声援が、はっきりと空気を引き裂いて聞こえる。自分が思って

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高校生だもの。#3

高校生だもの。#3

「 亭午、本を読みおわった。」

朝読み始めた本を読み終わり、何となく脳内で感想を思い描く。
何処に吐き出すわけでもない感想文を頭の中で纏めて、誰かに言いたくて堪らない結末を飲み込む。
SNSで検索をかけて、顔も名前もアイコンさえも知らない人の感想を読む。
少し読んで閉じる。
スマホの画面に触れる代わりに、読み終わった物語の表紙を撫でた。
ザラザラの厚紙は余韻を受け入れ、昂った感情を平行に戻してい

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高校生だもの。#2

高校生だもの。#2

「 深夜、出発。」

深夜、何処か遠くに出掛ける時の空気が好きだ。
ひんやりとした夜の空気、高くなった月、車の通らない静かな道路。
乗り込む車の音だけが、夜の帳を切り裂くように響く。
途中で人の少ないサービスエリアに寄って、用も無いのに車から降りる。冷ややかな外気を吸う。
遠くに聞こえる高速道路を走る車の音。風の声。
目的地はまだなのに、もう着いたような、一生着かないような感覚に陥る。
非日常に逃

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高校生だもの。#1

高校生だもの。#1

「 深夜、感傷的。」

泣きそうになった。
行きたいのに行けない場所。
飛び込みたいのに飛び込めないあの景色。
感傷的で、エモーショナルで、懐かしいあの景色。
あの夜景。
深夜2時に浸る懐かしい思い出。

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読んでくださった方ありがとうございます。
創作大賞に何を書こうか迷った結果、高校生の私が普段思いつきでメモに書いている文章を載せることにしました。

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